ヒーロー願望の男
鈍い音と共に目の前の男が倒れた
彼の落としたメガネを拾う者は誰一人としていない
倒れた彼に向けられるのは嘲笑と暴言と俺の拳のみだ
「もうムリじゃね?」
「あと三発」
「死ぬって」
「早く殴れよ」
フラフラと立ち上がる彼の腹を殴る。蹴る。ギャラリーは騒々しい笑い声を上げた。
ムカつく。彼が一体何をした。彼は全く、一分の隙もなく悪くない。
殴られる理由なんてひとつもないのだ。
なあヒーローいるんだろう?
こんな世界が正しいわけがない。
こんな悪がまかり通る世界なんておかしいじゃないか。
なあヒーローきてくれよ
ギャラリー吹っ飛ばして、彼を颯爽と助け出して、俺を全否定して、粉々に叩き潰してくれよ。
なあヒーロー頼むから
俺を助けてくれ
ヒーローに会いたいっす・・・