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世界を解き明かせベータ  作者: 幸・彦
第1章 ノスタウの街の出会い
16/54

ラストプレイヤー

「えーとラストプレイヤー…っと…あ、出た出た!」


入力を終えたベータの歓声が響く。三人は、食い入るように検索結果を

確認した。


「【本ゲーム内でのラストプレイヤーとは、サービス終了時まで登録を

継続していたプレイヤーを指す。】か。何だか素っ気ないな。」

「要するに最後まで残ってた人って事になるのよね。それを探せと?」

「いや、それ本気なのかな…」


興味深げなラモンドとカンドフとは対照的に、ベータの声にはどうにも

隠し切れない不安の響きがあった。そんな彼女の語調に何かを察し、

カンドフが問いかける。


「どうかしたの?」

「ぶっちゃけ、この手のオンラインゲームって、作品によっては物凄い

プレイヤー数が多かったりするよ。それこそ、人気作なら数十万人とか

数百万とかって単位で。もしそれを探せって言われたら、一生かけても

とても追いつかないんじゃ…?」

「ええー…」

「マジかよ。それ全部探せってか?そもそも生きてんのかそいつらは?

お前と同じような存在だとすれば、もう死んでる可能性も高いぜ。」

「うーん…それは当然だよねえ。」


あらためてベータが告げる。


「だけどこの世界がゲームかどうかまだ断定できないし、プレイヤーも

あたしみたいに存在し続けてるって可能性もあるよ。今の段階で簡単に

諦めるのは早いと思う。とにかく、探してみる価値はあると…」

「何十万人もか?」

「うっ」


前向きな見解を述べていたベータもさすがに、人数に対しては強気には

出られない。限度ってものがある。それはラモンドたちも理解できた。


しばしの重い沈黙ののち。


「悩んでても仕方ない。それが一体何人なのかを今、具体的に調べる

方法ってないの?」

「そっちに載ってたかなぁ。」


気を取り直したベータが、すぐ傍らに置かれていた『ブフレの古書』を

手に取る。どうやらかなりの箇所を飛ばし読みしていたらしい。


長い十数秒ののち。


「あったこれだ!ゲームの最終的な集計が確認できる記載があるよ。」

「で、どんな感じなの?」

「えーとね。これは…ああ、つまり最大同時接続人数か。それどれ…」

…………………………………


「どうしたよ。書いてないのか?」

「いや…あったけど。」

「だったらさっさと言えよ。かなりこっちも焦れてるんだから。」

「最大同時接続人数って、要するに一度に遊んでた人の数が、いちばん

多かった時って事よね?」

「鋭いなぁ。ゲーム世界の人なのにそこまで理解しちゃうんだ…」

「ここまでアレコレと聞いてれば、そのくらいの客観視はできるよ。」


どこかしら誇らしげなカンドフが、そう言って促した。


「最大で何人だったの?」

「………………」

「ベータちゃん?何人?」

「………………33人。」

「は?」


焦れた顔で聞いていたラモンドが、間抜けな声を上げる。


「ちょっと待て33人?…そこらの酒場でも、もうちょっと人いるぞ。

マジで言ってんのかそれ?」

「書いてある事が嘘じゃなければ、確かに最大33人だったみたい。」

「何か、聞いてたイメージとだいぶ違う気がするんだけど。」


さすがにカンドフの声も低くなる。明らかに不審の響きがあった。


「こういうゲームって、数十万とか数百万の人が遊ぶんじゃないの?」

「…いやその、これってあくまでも個人が創るのがコンセプトだから。

どうしても広告とか宣伝とかいった部分が弱くなるんだよ。だから…」

「くどくど説明しなくていい。で、ラストプレイヤーってのは?」

「まだ見てないけど…」


追い詰められたベータがブツブツと独りごちる。


「嫌な予感するなあ…あ、これだ。えーと最終登録人数で間違いない。

終了まで登録してた人は…と…」

「何人?」


「6人」



告げるその声に、抑揚はなかった。


================================


「おい冗談だろ?」


さすがにラモンドが顔色を変える。


「世界中の人間を相手に公開して、最後まで登録してたのが6人だと?

どんだけ人気なかったんだよ、この世界は!」

「いや、あたしに言われても。」


答えるベータも、かなり不本意だと訴えたそうな表情だった。


「こんなのは、別にゲームに限った事じゃない。アマチュアの創作なら

どんなジャンルでも起こり得るよ。どれほど思い入れを持ってようと、

どれほど手間ヒマかけて作ろうと、それで人気が出るとは限らない。」


語る声に、次第に熱がこもる。何か気迫に似たものを感じ、ラモンドも

カンドフも黙り込んだ。


「作者的には不本意だったかもね。だけど今、この世界は続いてるよ。

ゲームが終了しようが何だろうが、あなたたちは生きて存在している。

もう終わった事なんだから、それでいちいち怒るのはやめようよ。」



語るその声は、まるで見えざる誰かの代弁をしているかのようだった。


================================


「…まあ、確かにそうだね。」

「今さらって話だな、確かに。」


カンドフもラモンドも、そう言って苦笑を浮かべる。


「まあ実際、最終登録者というのがラストプレイヤーなんだとすれば、

俺たち的には吉報なんだよな。」

「6人だもんね。頑張ればどうにか捜し出せそうだし。」

「そうそう、そうこなくちゃ!」


ようやくそこで、ベータも笑った。


「ゲームが不人気だったのはもう、過去の笑い話として割り切ろうよ。

何事も前向きに考えてこそ、新たな道が見えるってもんだからさ。」

「よし!じゃそのラストプレイヤーとやらを探すための」


【条件クリア】


キュイン!!


「お!?」

「え!?」

「今このタイミングで!?」


三人の間抜け声が重なった。

ベータの目の前で『ブフレの古書』が光り、次のページが解放される。

と同時に、出しっぱなしにしていたステータスウィンドウにも変化が

生じていた。


「なになに?」

「あ、マップ画面が開いてる。じゃ本の方は!?」

「おお、同じ地図が載ってるページじゃねえか。こりゃ世界地図だ。」

「世界って確かパンゲア合州国?」

「あ、それは知ってたんだ。」

「さすがにベータ版でもそのくらい設定されてたよ。」


そう言いつつ、ベータはウィンドウの方をスクロール操作する。地図の

一部を拡大すると、連動するように本の方の地図も拡大されていた。


「おお、完全に同じ動きだな。」

「いよいよあなたの存在って、この古書と深く繋がってるみたいね。」

「ま、それも今さらって話よね。」


事もなげに流したベータが、地図のすぐ脇のアイコンに目を向ける。


「おっと、特定のナニかを表示する機能までちゃんとあるみたいよ。

昔のナントカマップみたい。」

「特定のナニかって、何だよ?」

「えーと例えば…これ!」


ピコン!


ベータの操作により、何もなかった地図上に複数の赤い点が現れる。

ズームされたエリアは、間違いなくこのノスタウの街だった。


「うん?…これはこの街の…」

「飲食店か?」

「正解!!」


ピコン!


さらに操作すると、それぞれの点の脇に店名の表記が追加された。

さらにそのすぐ下に、連絡番号まで併記されている。


「マジか。何気に便利だなコレ。」

「他にも出せるの?」

「えーと鉄道の駅にバス停。それに病院と警察。役場。駐車場。本屋。

それから…」

「分かった分かったもう十分だ。」


無限に続きそうなベータの列挙を、ラモンドが呆れ声で止めた。


「とりあえず、想像以上に便利って事は分かった。それともうひとつ、

重要な事がな。」

「重要な事?」

「それって?」

「少しは考えろよ。」


そう言ったラモンドの指が、地図の飲食店表記点を軽く突く。


「古書と名乗ってるが、この本には現在進行形の情報が掲載されてる。

駅だのバス停だのにまで至るなら、お前がいた時代と完全にズレてる。

これはもう、この世界に住む人間が創ったもんじゃない。完全に神側、

つまりゲームクリエイターとやらが後世のために設定したアイテムだ。

もっと言えばベータ、お前のためにだろう。違うか?」

「うーん…確かに。」

「だったらあるだろ、絶対に。」

「え?」

「ラストプレイヤーに関する情報の表示機能。それがあるだろ!」

「はいっ!」


怒鳴られたベータが、あわてて他のアイコンをあれこれ精査する。と、

ほどなくその手が停まった。


「どうだ?」

「…あった…」

「ホントにあったんだ。」

「出してみろ。」

「う、うん。…ポチッとな。」


その瞬間。


ギュイン!


ノスタウの街の一角を表示していた地図が、一気にズームアウトした。

やがて停止した画面の右端の方に、小さな青い光点が明滅している。

しばしの沈黙ののち。


「…あれがラストプレイヤーか?」

「とりあえず、一番近い奴みたい。一度に表示できるのは一人だけ。」

「へぇー、州境より手前みたいね。近くはないけど行けそうじゃん。」


興味深げにカンドフが呟く。


「とりあえず、現在でも反応だけはちゃんと拾えるって事よね。なら、

行って確かめるのも手じゃない?」

「………………」

「少なくとも、あたしは乗るよ。」

「ここまで来たら、あたしも。」


答えたベータと、そしてカンドフの目がラモンドに向けられた。


「どうします?特殊清掃員さん。」

「分かったよ。」


ガリガリと頭を掻いたラモンドが、何か吹っ切れたように言い放つ。


「ここまで判明して行かない選択があるか。ラストプレイヤーとやら、

全員見つけてやろうじゃねえか。」

「おおっ!」


その言葉に、二人も気勢を上げる。


まだまだ根拠も手掛かりも乏しい。

それでも、目指すものも目指す地も明確になったのである。だったら、

挑むまでの事だ。きっとその先に、新たなヒントが待っているだろう。



最初の一歩を踏み出す時は、確実に近づいていた。

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