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土留色の身に薔薇色のキスを

作者: 黒楓

今日は金曜日 「金曜女のドラマシリーズ」です。





 今まで精一杯に“起き上り小法師”をやって来たけれど、とうとう頭を起こせなくなった。


 私の事をボロ切れか何かの様にして自分の欲望を拭ったアイツはグビリ!と飲んだビールの空き缶を床に転がした様だ。

 またこちらへやって来るのだろうか?

 動けない身が恐怖でますます竦む。

 幸いマンションの鉄の扉がドシン!と閉まる音がして

 私の身は漸く弛緩する。

 と、同時に涙腺まで緩んでしまって……()()()()()私をなおさら惨めにする。

 その……自分の事を惨めと思う感情が今まで遮断していた“痛覚の回路”を繋ぎ、体のあちこちがじわじわと痛み始める。

 痛みは非情だ。

 自身の愚かさを目の当たりにさせて私を更に絶望の淵へと落とし込む。


 絶望がねっとりとした汚泥かコールタールの様に私の開いた穴に入り込み、息が継げなくなった私は苦しくて……先程、アイツの前でみっともなく演じてみせた嘘の喘ぎでは無い……本当の喘ぎで見悶える。


 と、ピコン!とスマホの着信音がした。


「きっと既読してはいけないメッセだ!」と頭の中で声がする。

 でも私の指は床を引っ掻いてスマホを手繰り寄せ、その「画面」を目の前に示す。


『彩乃!連絡して!!』


 その文字が涙でぼやけて……私は逡巡を繰り返した後、ひと言返す。


『鍵、開きっ放しだけど動けない』



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 美優の手によりグシャグシャだったベッドは整えられたけど私は裸のまま。


「このままじゃあんまりだから……とりあえず清拭させて」

 と囁き、ベッドに横たわったままの私にかしずく美優は裸足にブラトップ一枚で……白い素肌がその美貌を更に眩しくさせている。


「お湯、お風呂場で汲み直して来るから待ってて」

 そう言ってタオルを提げたまま身を起こした美優はまさしく名前そのままの天使の様で、私は自分の浅はかさを恥じる。

「こんなにも姿が心が美しい人の手を煩わせるなんて!! すぐに止めてもらわなきゃ!!」


 でも母の様に優しい手で施される清拭に先程の決心は容易く崩れ、私はただ身を任せてしまう。


「もうこのままにはして置けない!!彩乃の事は私が絶対守るから!!」

 美優の口から零れた思いがけない言葉に驚いて彼女を見上げると……美優は目にいっぱい涙を溜めていた。

「こんなに酷い事をされて!!」


 涙がらみの声で美優は私の肌に自分の手を合わせ……

 アイツが私の体のあちこちに付けた土留色の痣に美優の薔薇色の唇が押し当てられた。


 そして私は声を震わせて泣いた。




慈しむ心こそが神聖だと思います。



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