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黒猫が死んだ

作者: 小鳥遊

黒猫が死んだ。


ただの黒猫ではない、我が家の愛猫オセロだ。


お腹が白くて、それ以外は真っ黒な猫だからオセロ。黒猫のオスでびっくりするくらい賢くて優しい子だった。


我が家は私以外は動物触れない&ペット禁止の社宅だったので飼うなんて考えたこともなかったが、放浪姉が突然実家に自分の飼っていた猫を置き去りにしたことで我が家の猫になった。


最初は匂いで気づいた、学校が終わって自宅に帰ると玄関を開けた瞬間我が家では嗅いだことのない獣臭がした。


「ん?何かあった?獣臭がするよ」


「ぁ、なおちゃんおかえり。お姉ちゃんだよ、突然飼えなくなったとかで猫置いてったの」


私は3人姉妹の真ん中で、私の妹である3番目は一番上をお姉ちゃん、私のことをなおちゃんと呼んでいた。


「あぁ、またお姉ちゃんか。」


そして、我が家の一番上の姉は一般的に言う真面目とは真逆の人間で、我が家に色々な問題やら試練やらを巻き起こす人間だった。


なので、突然猫が家に来てもまたお姉ちゃん関連かぁ〜ぐらいの感想である。


「で、その猫はどこなの?」

「子供部屋。私怖くてはいれなくってさぁ。なおちゃんどうにかして」

「いや、私も犬派で、猫は担当外なんだけど‥」


そう、私は犬派だった。これまで犬を見て触りたいお散歩してあげたいと思っても、猫には何の興味も無かったのだ。犬は賢いけど猫は自由気ままだから爪で攻撃してきそうで怖い、とすら思っていた。その時はまさか猫があんなに賢いとは知らなかったのだ。


「取り敢えず見てみるよ」


私は獣臭が強くする子供部屋の障子を横に1センチほど引いた。引っ越してきた時から立て付けが悪い障子だったので、1センチ開くだけなのに意外と力がいる。


1センチであれば障子前に猫がいたとしてもこちらには手も出せないだろう。


すき間からのぞき込むが猫は見当たらない。部屋の中はこたつの机の上にある父のパソコン、妹の勉強机。当時家が狭すぎたので子供部屋と言いながら皆の部屋だった。部屋の奥に姉の勉強机が見えるが猫はいない。


「いないよ。どこか隠れてるのかな?」

「もしかしたらトイレに入ってるかも。お姉ちゃんの机の前に白くて透明な箱あるでしょ?そこら辺いない?」

「白くて透明な箱?」


もう一度隙間から見てみる

「あった」

下が白く側面と屋根の部分が半透明な箱。あれが猫のトイレかぁ、でかいな。。


と、隙間から部屋の様子を伺っていると突然

ガタンッ「グゥニャ」

という音と声と共に、黒く丸い物体がその白くて透明なトイレの上に突然現れた。


猫だ!


毛のふさふさした黒猫がトイレの箱の上に立ってこっちを見ている!


私は初めて家の中で猫を見て、そして見つめられて固まってしまった。隙間から覗いているはずなのに、全身をみられている気がして、完全にどちらが先に動くか状態だ。


多分5秒ぐらいはお互い固まっていたと思う、

均衡を破ったのは黒猫で

また先ほどと同じく喉を鳴らした後に鳴いたような「グゥニャッ」という声を発して、右前足を浮かしてトイレの箱の上から降りようとした!


「あ、こっち来る!」


私は慌てて1センチ開いていた扉を閉めた!


「なおちゃんどうだった?いた!?」

「いたいた!何あの黒い物体!猫なの!?」

「や、なおちゃん、猫に決まっとるやん笑」


当時長毛の猫を見たことのなかった私は、スラッとした猫しか思い浮かばず、ふさふさした黒猫の毛がまるでまりものようで、初めてみた長毛のその黒猫に対して゛丸くて黒い物体゛と言う感想しかなかった。


「なおちゃんもう1回見てみてよ」

「えぇ〜、でも、さっきこっちに降りてこようとしてたよ?扉の前にいたらどうすんの」

「また、1センチぐらいなら大丈夫だよ〜。ね、見てみようよ」


猫に触れないけど好奇心だけはあるのか、妹がしきりにまた扉を開けたがった。私もなんだかんだ怖いもの見たさでまた扉を開けたくなり


「よし。じぁ1センチだけね」


と、妹と顔を引っ付けながらまた力を入れて障子を1センチほど、できるだけ音を立てないようにして開いた。

部屋の奥の姉の机の前の白くて透明な猫のトイレを見るが、黒猫はいない。


「いないね。」

「うん、いないね。またトイレの中かなぁ」


妹と隙間から部屋の奥を眺めながら、いなくなったねぇと感想を言っていると、


「グゥニャ」と下から声が聞こえた。


ん?


多分この時妹と私は同じ声を脳内であげていたと思う。


声が聞こえたので条件反射的に自分たちの足元、扉の向こうの下を見た。やはり、先ほどの黒猫が障子の向こう側で隙間の目の前に座って、こちらを見上げていた!


「グゥニャ?」


めっちゃ至近距離におるやん!!!?

そしてまた鳴いたぁああ!!


バタンッ!


2人揃って勢い良く障子を閉めた!


「はぁ、はぁ、いたねぇ。」

「だねぇ、まさか下にいるとは。。」


怖いもの見たさで見て、案の定、至近距離で猫に見つめられてびっくりしすぎて扉を勢いよくしめた私達でした。



今でも思い出すと懐かしい。

幼い顔をした黒猫が、黒目を大きくして、くりっとした目で私達を見上げていたあの顔。


その時の私は知る由もないが、このまりものような丸くて長毛な黒猫は、平均寿命14-15歳ぐらいの猫の中で、20歳になるまで長生きし、将来完全なる我が家の家族となる黒猫だった。








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