宝石と天
掲載日:2024/04/10
森に迷い込んだが最後、どこに逃げたらいいのか
1人だけなら死の覚悟があるけれど
真衣も連れている為、まだ死ぬ訳にはいかない
「佐藤、追っては大分まいたかな?」
「分からない。ただもう少し先へ進もう。奴らもそう簡単には諦めまい。俺たちは追われる理由がある」
森の空気は段々と冷えてきている
木々のざわめきが時々心を驚かす
感傷に浸れるほどの身分ではない
「いっそのこと、宝石は何処かに隠す?」
「駄目だ。奴らは精度の高い探知機を持っている。少なくとも距離をしっかり取らないと全ては無駄になるぞ。探知機が届かない所まで逃げないと」
そうは言うものの
俺の体力と違い真衣の体力は多くない
出来れば休ませたい所だけど奴らに追いつかれる
言うに言えない板挟みの状態が迫り来る
パラパラと雨が降り出してきた
天の慈しみの涙なら良いけれど
果たして天はどちらの味方なのか
「佐藤……私はもう無理。佐藤1人で逃げな」
真衣の口から予想もしない言葉が漏れた
俺の中での価値観が揺らぐ
真衣は自分の事しか考えられない人間だった
その女がまさか自己犠牲の言葉を発するとは
その時、天が割れた
真衣の姿が薄くなり徐々に天へと昇っていく
自己犠牲……
天へ昇る必要条件は満たされた




