ファイブフォース分析とは?
「そのなんとかフォースなんとかと言うのはどうやるんじゃ?」
「数秒で忘れてんじゃねーよ! 『ファイブフォース分析』だ!」
「おお、なんかカッコよさそうじゃぞ! JKが寄り付きそうなスタイリッシュな名前じゃ!」
「JK呼ぶ為の作戦名じゃねーぞ。代表的なビジネス戦略の分析手法だ」
「なんか、凄いのぉ。その5フォース分析とやらはお主が考えたのかの?」
「んなわけねーだろ! 素晴らしいビジネス学者が考案したんじゃねーの? 俺は知らねえけど」
「ビジネス戦略を分析するなんて、よっぽどの暇人なのかのぉ?」
「んなこと俺に言われても知らねーよ! そんなこと言ったら世界中のビジネス学者全員暇ってことになるじゃねーか!」
「にしても、人の分析手法をパクるなんて、お主、それはちょっとダサくないかの?」
「それは俺じゃなくて世のコンサル野郎に言ってくれ。じゃなくて、このやり方が効果的だから流行ってるんだよ! パクるとかそういう話じゃねーよ。俺のオリジナルの戦略モデルなんてあるわけねーだろ!!」
「一兆一フォース分析とかどうかの? 数も遥かに上回っておるし、世界中で採用間違いなしじゃぞ」
「それ意味わかっていってるのかよひいジジイ…… 出来る訳ねーだろ、一兆一なんて量」
「しかしながら、売木の倅よ。その5フォース分析とやらで何が分かるんじゃ? ワシの未来か?」
「ちげーよ! 自分の事業の競争要因と業界構造を分析して、今後のビジネス戦略に繋げる一つの方法だ!」
「なんか、小難しいのお、もうちっと簡単に言ってくれないかの?」
「ひいジジイが今やってるビジネスがどれだけ無謀かが大体これで分かる手法だ」
「なんじゃと!? そんな恐ろしい事が分かるというのか!? なんて物騒な分析手法じゃ」
「恐ろしいのは分析じゃなくて、ひいジジイのやってるビジネスだぞ……」
「と、ともかく売木の倅よ。その分析は一体どうやってやるのじゃ!?」
「とりあえず、自分のやっているビジネスについて『買い手の交渉力』、『買い手の交渉力』、『新規参入の脅威』、『代替品の脅威』、『業界の競合状況』……この五つに分けて評価するのが基本だ」
「は? なんじゃと?」
「んだから、『買い手の交渉力』、『売り手の交渉力』、『代替品の脅威』、『代替品の脅威』、『業界の競合状況』の五つの観点から──」
「な、なんじゃその難しい言葉は!? もっと分かりやすく説明しておくれ!」
「はあ? 説明も何もねーだろ」
「その、買い手のなんちゃらだけじゃちっとも分からん!」
「はーあ!? すんげえざっくり言うとだな……」
『買い手の交渉力』
ひいジジイも事業やってりゃ一回は経験したことあるだろ、値引きする客を。いわゆるそいつらのパワーを評価してるものだ。値引きする客はクソほど鬱陶しいし、対応も面倒だが、そいつらも買い物全てで値引き交渉しているって訳じゃない、分かるか?
何故なら、どこでも値引きが通用するってワケじゃねーからだ。なんで、値引きするとこと値引きしないとこの差があるのか? そいつらが買う物や受けるサービスが所によって違うからだ。じゃあ、そこに何が違うのか。
買い手の交渉力が高いって言うのは、ひいジジイみたいに値引きを強いられることを言うんだ。「別にそこまで欲しくない」とか「ここにこだわりがない」とか思われてるとそうなる。
じゃあ、逆に買い手の交渉力が低いって言うのは、値引きなんかとてもできない貴重なもの買おうとしているからだ。
すげえ、適当に言うとカードのレア度みたいなもんじゃねえのか? 強くて希少なレアカードは皆買いたいから値引きなんてしたら手に入らないし、逆にすげえプレミア価格がついて売られている。逆にノーマルカードはゴミになるからって渡しても受け取らないことだってある。
自分が提供するチー牛にそれだけの価値があるかどうかを、お客さんの面から分析する感じだな。
『買い手の交渉力』
今度は材料を仕入れる方の話だ。チー牛屋なら牛肉ぐらい仕入れるだろ? その時に相手がどれだけのパワーを持っているかを考えるんだ。
例えば、仕入れるものが「そこでしか買えない」と言うものなら、売り手の交渉力は強くなる。材料を安くしてくれないのでこっちが負担だな。
逆に仕入れるものが「どこでもいい」とか相手の足元を見た対応が取れる先は売り手の交渉力が弱い感じだな。
『代替品の脅威』
別にそれがなくたって別のものを使えば大丈夫ってことあるよな。写真機能がデジカメがスマホへ移り変わったように、自分の提供する物やサービスが別のものに置き換わるなんて話はよくある。
ひいジジイの場合はあれか? チー牛を売ってるから、代替品が多そうだな。別にこだわりがなければ親子丼だっていいしな。だけど、脅威はそれだけじゃねーぞ。今流行りの出前サービスとかも脅威だ。割と思わぬところで代替品があったりするぜ。
『新規参入の脅威』
急に現れた新参者とか鬱陶しいよな。だけど、誰だってそこに参加できる訳じゃない。新規参入の脅威っていうのは、そのビジネスを始めやすいかどうかで脅威が決まるって話だ。例えば、どこぞの年寄りがある日思い立ったかのように始められるチー牛屋ってのは新規参入の障壁が低いな。低いってことは、それだけ業界の競争が激化する。となると、ひいジジイのチー牛屋なんてあっという間に淘汰されるっていう話だ。いつの間にかルーキーにレギュラー取られた野球部員みたいになっちまう感じにな。
次々と期待のルーキーが生まれる業界は、そりゃ覇権を握っている人からしてみれば脅威でしかないわな。
逆に新規参入の障壁が高いところはあまり新参者が来ねーから、この辺りの脅威が少ない。例えば鉄道会社とかな。思い付きで始められるものじゃねーだろ? 線路引くのにも、電車買うのにもすげえ金かかるし、年寄りじゃ絶対無理だ。
『業界の競争状況』
最後に、現在置かれたビジネスの競争状況を洗い出す。まぁ、これでひいジジイは恐怖に震えるんじゃねえか?
「てな感じだ」
「ちっとも分からん。これ、先に分析に取り掛かった方が早いじゃろ」
「ふざけんな!! 一生懸命答えた俺は何だったんだ!」
「やってみればわかるじゃろ。習うより慣れろと言うやつじゃ。ほれ、さっさと始めるぞい」
「はーあ!? マジで何だったんだよあの時間。ただ俺が話してただけじゃねーか」