第089話 いつだって突然に
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辺りは荒れ果てて椅子もステンドグラスも女神の像も全てがまともに形を残していない。
最後にあの2人が残した住民の洗脳があるので、この悲惨な教会の中を見れば俺達が悪者にされることだろう。
見えない正義に見える悪。
どちらを信じたくなるかなど誰かに問うまでもなく分かる。
元々この国の全員を救うためにやっていることではない。
俺達の目的に付随いた事象がそうであったというだけのこと。
もちろん、純粋な気持ちで戦いに挑んだやつもいるようだけど。
かなり前の時点で次の目的地は決まっている。
ここに長居する必要性もなくなったので例に漏れることなくここ直ぐに出発することになるだろう。
「これでハッピーエンドって言いたいけど、満足していないって顔だな。」
「え、そうですね。今でも賢者を斬った時の感覚が手に残っている。誰かを守るために汚したはずの手なのそのせいで守ったものに会いにくくなる。不思議な感じです。」
「お前がやったのは立派なことだろ?胸を張って会いに行けばいいだろ。」
「この血が付いた手で子供を抱くことはできないですよ。」
確かに先程の返り血で手は真っ赤に染まっている。
しかし、清水が言っているのはそのことではない。
子供の置かれた環境を知り、賢者を憎み自らの手で殺した、
その揺るぎない事実だけが今後彼女の心を蝕んでいくことになる。
「なら、あの時の判断は間違いだったとでも言うのか?」
「間違いとまでは言いません。でも、何かしら違う解決策があったのではないかと。」
まだ教会での激しい戦いを終えたばかりで、考えがうまくまとまっていないとしか思えない。
「間違っていたと思うなら、一生後悔していろ。だけどな、俺達は今後答えをどれほど考えても出ない場面ばかりだ。その足だけは引っ張らないでくれ。」
「答えが見つからない時はどうやって乗り越えるんでしょうか。私にはこの先で乗り越えている未来が見えません。」
俺はこの時間で人生相談がしたかった訳ではないが、ここまで来ればこの問いに答える必要がある。
俺だって人生経験が多い方ではないし、答えがあるなら知りたい。
「今は無理でも明日には。明日が無理でも明後日には。そう考えながら1日でも長く生きることだな。大抵のことは経験がなんとかしてくれるもんだ。」
「そうだと信じたいです。」
彼女のコップを握る手は強くなる。
俺は清水ではないからどんな思いを持っているかなど分からないが、きっと思い悩むほど辛いのだろう。
綺麗なものは汚れが目立つ。それは彼女の心も同じだ。
俺達が何も思わないことでも、彼女の真面目さと純粋さがそれを許さない。
少し清水のことが知れたので俺は部屋に戻る素振りを見せる。
そして、曲がり角の影に隠れて彼女を観察する。
自分でも今やっている行動がどれほど酷い行動か理解しているが、念には念をと言う言葉があるくらいだ。
大きな戦いの終了後、全員の疲労が溜まる中で動く可能性が高いと俺は考えた。
ここで動くことがなければ、覚醒者だという疑いが晴れる。
それは俺にとっても、清水本人にとっても必要なことなのだ。
コップの水を一気に飲み干した彼女は、宿を出て夜の街を出歩く。
夜風に当たりたくなったのか。それとも他の目的があるのか。
今、街では魔族の死体と賢者の死体が見つかったことか大騒ぎになっている。
いくら寝静まった人間の多い深夜だからといって、下手に出歩けば目撃されるリスクもある。
どこへ向かっているのか言うまでもないだろうが、目的ななんなのか。
それが重要な項目である。
「何をしているんだ。教会であった事件を知らないのか。」
こいつは恐らく教会の人間。
しかし、清水の顔を見たこともなく、警戒すらしていないところを見ると下っ端だな。
「すみません。ちょっと道に迷ってしまいまして。」
関わりたくないので、嘘を付いてその場を凌ごうとする。
しかし、それくらいの嘘が通用するわけもなく下っ端は応援を呼ぼうとしている。
が、途中から顔色を悪くして走ってその場を離れていく。
一瞬俺の横をすれ違ったが、小声で「漏れる、漏れるって。」と言っていた。
もしかすると清水が何かしたのかとも思ったが、覚醒スキルが相手がトイレに行きたくなるスキルなはずもない。
教会についたが、もちろん戸締りはしっかりしているので入ることは出来ない。
何回も通っていた清水がそれを知らないはずもなく、当然かのように外壁をよじ登る。
壁の高さを子供がどこかへ行かないようにする程度の高さなので大人が少し頑張れば登れないこともない。
俺も後を追うようにして壁を登る。
気付かれてはおしまいなので直ぐ様隠れようと思ったが、俺が壁を登り終えるころには姿が消えていた。
何かのカラクリでもあるのだろうか。
「消えるはずなんてないからな。この辺をくまなく探すしかないだろうな。」
茂みの中や壁などに隠し通路がないか探していく。
しかし、それらしき物は全く見当たらない。
このままでは何が起こっているのか分からないまま、時だけが過ぎていくことになる。
諦める訳にはいかないので、捜索を続けていると土が被せられた跡のある木の板があることに気付いた。
誰がこの板についていた土を払った形跡もある。
「ここしかありえないよな。」
俺がその板を持ち上げるとやはり人1人が通れる穴が掘られている。
男でも通れるか疑問だったがギリギリ通ることができた。
清水がどこだ。
見失った清水を懸命に探す。
いくら職員が寝静まっているとはいえ大きな音は立てられたない。
慎重になって移動していると、廊下へ少しだけ光が漏れている部屋を見つける。
扉の前まで行き、仲の様子を伺っているとそこは信じられない光景が広がっていた。
子供を誘惑し、大人の経験をさせようとする清水の姿が。
あれ程警戒していたはずだったのにすでに清水は覚醒者だっということか。
そんなことを考えている暇もなく、止めに入る。
「あれ?覗きですか?趣味悪いですね。」
「次の覚醒者がお前であることくらい分かっていた。だから、見張らせてもらったんだよ。」
「次のってことはやっぱり他にも記憶を取り戻している人間がいるんですね。」
「詳しいことが知りたいなら、その子から離れろ。事を大きくされても困るからな。」
渋々子供から離れた清水がまたねと手を振ってここから離れる。
今回は未然に防ぐことが出来た。
それが嬉しい反面、着々と増えていく覚醒者に恐怖を覚える。
宿に戻る途中で、覚醒者の情報を持っているだけ話した。
「何故、まだ隠しているんですか。もう半数以上が知っているのに隠していても意味ないですよ。」
「そこは話し合ってはいる。しかし、清水の言う通りこれ以上は隠していくのが難しいだろうな。」
こればかりは耳が痛い話だ。
俺は逃げるようにして、話を変える。
「スキルが新しく使えるようになっていただろ?どんな能力があるんだ?」
「それはですね。」
耳元まで近付いて、誰もいないのに小さな声で話す。
「内緒ですよ。」
何から何まで彼女のペースで進む帰り際の会話。
早く宿に着かないかと思いながら歩みを進めた。
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