第088話 賢者の意地
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「あちらも戦闘が始まりましたか。こちらも本格的に始めるとしましょう。」
時は同じくして、こちらは賢者との戦い。
「なぜこちらが4人もいるのか疑問ではありますが、相手をして差し上げましょう。」
アナモの相手は2人であるにも関わらず、こちらは4人である。
しかし、戦闘面で考えればこれでちょうど良いと考えている。
相手は賢者と呼ばれているが、魔族に力を借りているだけのただの老人のはず。
それならば苦労せずに勝てるだろうから、さっさと終わらせて2人の援護に行きたいところだろう。
「相手が誰であれ油断はしないつもりでいますから安心してください。【火魔法】”インフェルノ”」
「可能であれば油断しておいて欲しかったですけどね。教会に来た邪魔者を排除するので疲労したくないので。【火魔法】”インフェルノ”」
会話をしながらも、高レベルの火魔法であるインフェルノを相殺する。
もしかすると賢者の火魔法を得意とする戦い方なのかもしれない。
同じ方法で攻撃しても相殺されてしまい勝ち目は薄いと判断した上野は近接戦を仕掛ける。
そして、そのサポートとして魔導具を宮武が取り出している。
身体能力は高い方である上野も近接戦を本格的に始めたのは昨日の今日の話なので援護があると動きやすい。
宮武の魔導具は、相手の魔法を1つだけ吸収して好きなタイミングで跳ね返す物。
これで賢者の得意分野である火魔法は封じれる。
使えるのが魔法スキル限定であるし、吸収している間に反撃を喰らうことが多いので使用する機会は少ないが今は絶好のチャンスだろう。
「この距離での戦闘は慣れていないはずですよね。【衝撃】!」
ダンジョン内で手に入れたスキルを早速活用する。
受けの体勢を取られてもこの攻撃はダメージを与えることができる優れものだ。
しかし、それは接触しないと発動しない。
何か1つ武器でもいいので防御してくれるのを待つ。
「【衝撃】。私は賢者と言われる男。君に使えて私に使えないスキルなど存在しないんですよ。」
全く同じスキルをまたしても使われてしまう。
たまたま覚えているスキルが同じだったとも考えられるが何か裏があるようにしか思えない。
これはもう少しスキルを使って様子を見るしかない。
「宮武さん!あれをしましょう!」
「あれね。タイミングは任せるけど、あの賢者何か怪しいわよ。」
どうやら、宮武さんも何かを感じ取っているようだ。
だからこそ、1人では使うことのできないこのスキルで相手を試す。
「「【双撃】」」
「なるほどね。そちらが可能でこちらは不可能なスキルを使うということですか。しかし、賢者に不可能はないのです。【双撃】」
1人では発動できないはずのスキルを当たり前のように使用してくる賢者。
そして、その威力は上野達が放ったものと全く変わらない。
ここで上野が1つの仮説に辿り着く。
それを確証に変えるためにまた動き出した。
「これならどうでしょうね。【光魔法】”ライト”」
「無駄ですよ無駄。【光魔法】”ライト”」
教会の一部で激しい光がぶつかり合う。
この時点で上野の仮説は立証される。
「どうやら同じスキルを全部覚えてるというのはハッタリでしたね。」
「何を根拠にそんなことを?もしかすると私のスキルの豊富さに恐れを成したのですか?」
「【火魔法】”ファイア”」
突如として放つ【火魔法】。
いきなり攻撃に多少の戸惑いを見せたが直ぐに落ち着きを見せ対処されてしまう。
「【火魔法】”ファイア”。危ない人ですね。会話の途中でも容赦なく攻撃してくるのですか。」
「何故、わざわざインフェルではなく同じファイアを打つのか。それは同じスキルしか使えないからですよね。」
「スキルの豊富さと力の差を見せるために決まってるじゃないですか。」
「もうその言い訳は通用しないですよ。貴方のスキルは相手のスキルを模倣して使う物ですね。」
「勝手にそう判断してくれても構わないですよ。しかし、誤った判断で不利になるのはそっちの方ですね。」
「【思い出の燈】」
「【思い出の燈】!クソッ!何故だ!私のスキルが発動しない。まさか!ユニークスキル持ちか。」
正確にはユニークスキルとは違うのだけど、あえて訂正するようなことはしない。
賢者は模倣できないことに焦りを覚えながらも何か魔導具を取り出して攻撃を防ごうとする。
本当であれば、あの攻撃がまともに当たってくれればかなりのアドバンテージを得れるはずだった。
「えいっ!私には私に出来ることをします。」
寸前まで姿を消し、完全に無と同化していた小原が急に姿を現し賢者の魔導具を奪って逃げる。
これは賢者も仲間である上野自身も想定しなかったこと。
目を見張る小原の成長に驚きながらも燃えていく賢者を見つめる。
「クソガキが!!!」
怒りで我を忘れる賢者。
狙いを完全に小原に向けている。
小原は、清水と宮武が身を挺して庇う形になっている。
あの攻撃が来てしまい後ろに被害が及ばないようにするためには、ここで完全に止めを刺すしかない。
「瀕死の状態になってもなお足掻くとは見っともないですね。」
「俺はこの世界の王になる!そして、全てを意のままにすると決めたんだよ!」
もう繕った喋り方の賢者はいない。
醜い欲望だけが残った人の皮を被ったそれは怒りを顕にしている。
「燃えていた方が十分に存在価値はあるようだ。永遠に燃えて貰おう、その思いを抱えながら。【悪心】【思い出の燈】」
「何度も何度も面倒なスキルを使いやがって、【禁術】”人間破棄”」
魔物の血らしき物を取り出して一気に飲み干すとオーガの角を生やして体格も2倍ほど大きくなる。
禁術は名の通り、人が使用するのを禁じられたスキル。
それに手を出したということは意地でも上野達を仕留めたいらしい。
「「ウォオオオオーーーーー!!!」」
一ノ瀬達が戦っている化け物と雄叫びが重なり合い、教会全体が揺れている。
教会という場でありながら、現状は魔物の飼育園としか思えないほどの魔物の種類が多い。
「でも、いくら禁術を使おうとしても無駄よ。だって、神がいるとしたらこの愚行を許さないもの。【運命天論】」
もうとっくに狙いを外してたはずの炎。
その炎がゆっくりとまた燃え始める。
そして、再度現れた炎は本来の何十倍の威力で賢者だったものの体を焼き尽くしていく。
「本当に宮武さんのスキルってずるいですよね。」
「言ってないだけで条件があるのよ条件が。」
「手の内を晒さないってのもかっこいいですね。」
「あの身勝手なことを言うのは分かっているんですけど、私に止めを刺させてもらえないでしょうか。」
武器として持ち込んでいたナイフを強く握りしめる清水。
犠牲になったであろう子供達を思う感情が、彼女を突き動かすのだろう。
その言葉を誰も止めることなどしなかった。
静かに何も問うことなく心臓を突く彼女が感じているのは怒りか、将又悲しみなのか。
死体となった賢者をしばらく見つめる彼女だけが、その答えを知っている。
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