第078話 嵐の前の静けさ
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5階を攻略したにも関わらず、俺達の顔色は晴れない。
それほどあの幻術の強さが窺える。
その後、誰1人として言葉を発さないまま6階の攻略を進めた。
今は6階で特殊なことが起きるようなことはない。
けれど、魔物のレベルは明らかに今までの階層とは違う。
ある程度の知能を持った魔物がほとんどだ。
「厄介なやつらが増えてきたな。こっちが距離を詰めようとするとトラップがある方に誘導してくる。」
「本当に面倒だな。俺達よりもこの地形を理解している分、地の利があるからな。」
「魔物に知能があるってことがこれほど面倒だとは思いませんでした。」
「まだ半分も終わっていない。まだまだ先は長いな。」
異様なまでの疲れが見える。
特に井村と小原は歩くのがやっとという感じだ。
もしも、この調子で7階まで進んでしまえば足を引っ張ることになるだろうな。
それならば、今日はひとまず攻略は終わりにした方がいいかもしれない。
他の6人も口に出すことはないもののそれを理解している。
歩けば歩くほど静けさが目立つ。
誰も言葉を出すことはない。
「もう少しでこの階の攻略も終わるだろう。疲れてもかもしれないが気合いを入れ直すぞ。」
「これが終われば今日の攻略は終わりだ。美味しい飯は働いてないと味わえないぞ。」
食事の話を聞くと数名の顔色が変わる。
人にとって食欲は抗えない欲求だからな。
目の前に餌を垂らされて全員が元気を振り絞る。
しかし、その元気も意味のないものになった。
魔物に遭遇することなく階段を見つけることができてしまったからだ。
いや、魔物だけじゃない。ダンジョン内に1つの音も響くことはなかった。
今まではどこからともなく聞こえる風の音や魔物の呻き声がひっきりなしに聞こえていた。
俺にはその静けさが何かを予兆しているようにしか思えなかったが、口に出すと不安を煽るだけ。
疲労が溜まっている今はそれが精神的にかなりの負担をかけるのは明らか。
「よし、予定通り6階の攻略が終わったからここでキャンプベースを建てて野営をしよう。」
7階で少し進んだところ。見渡しの良い広場で一夜を過ごすことにした。
今のところ敵が出てくる様子はないが、念の為2人体制で見張りをすることになっている。
「ご飯が何か気になるねー。疲れた後の食事ってのはいつでも美味しいからね。」
「そこまで期待しない方がいいぞ。俺の料理の腕はそこまで高いわけではないからな。」
「何言っているんですか!私も手伝わせてもらいましたけど、プロにも引けを取らない技術でしたよ。あれがスキルの力ってやつですか?」
「まだレベルは低い。もしかしたら、レベルがマックスになったら美味しすぎて気絶するかもな。」
「それって一周回って食べたくないかもしれないかもです。」
先ほどまでの緊張感はどこへやら。
気の抜けた雑談で心のゆとりを取り戻す。
そして、最後にとっておきのものを取り出す。
本当はもっと後で使うことになると思ったのだが、今は状況はよくないため完全に精神状況を復活させて明日の攻略をスムーズにさせたい。
「これ、みんなで食べたらどうだ?」
「え!?これってお菓子ですか?」
「甘いものは食べた方が気分転換になると思ったからな。」
「でも、なんか一ノ瀬さんがお菓子作りとは。ぷっ。似合わないですよ。」
「そうか。上野はいらないみたいだから他の奴が食べてもいいぞ。」
「嘘ですよ!嘘!あ、宮武さん僕の持って行かないで!」
俺も柄にもないことをしたと自覚しているが結果的には喜んでいるから成功と思っていいだろう。
料理スキルでお菓子作りが含まれているかのテストのついででもあったしな。
「休憩は十分できたと思うから今から今度の作戦会議をさせてもらうぞ。」
「そうですね。今日はかなり苦戦しましたし、明日はより深い階層へ挑戦することになるんですから時間を掛けて話し合いましょう。」
「本当に魔物が強いよ。ワシは後半で体力がもたなかったし。」
「それでいうなら私も最後は足を引っ張ってしまいました。」
2人は自分がパーティの足を引っ張ていることに罪悪感を抱いているのだろう。
体力については人それぞれだから差が生まれることは想定の範囲内だ。
こちらも強引に攻略を進めている節があるので小原や井村を責めようというつもりは全くない。
「反省することはないでしょ。初めてのダンジョンで分からないことだらけなのよ?死んで戦力を減らすこと以外は何やったって問題なし。」
珍しく宮武がフォローに入る。
その言葉を聞いて少しでもネガティブな気持ちを抑えてくれれば嬉しい。
「個々の反省は自分達ですることにして、問題は敵の強さだ。」
「数は少なかったですが、強さや知能が確実に上がっている。もしも、下に降りるごとに個体数が増えるとするなら危険だな。」
「そうですね。逆に罠のような小細工は少なくなったようにも感じます。」
「今はまだ6階層。仮に5階層が節目だったとすれば進んだ階層はまだ少ししかない。トラップについて判断するにはまだ早いだろうな。」
「1番俺達が考えるべきなのは10階層だろ。5階だけが立派な門を構えているとは思えない。恐らく、10階層も同じように強敵が待ち構えているだろうな。」
「5階層は一ノ瀬さんがいなければ全滅の可能性もありましたからね。」
戦いを終えた後でも印象に強く残る幻術の敵。
俺がなぜ打ち破ることが出来たのかは本人にすら理解出来ていないことだ。
「もっと前向きに考えてみませんか?今日で6階層も進むことが出来たんですし、明日は少し気が楽じゃないですか!」
「それに、通路に出現する魔物と戦って危うい場面は今のところない。こちらも成長はしているということだ。」
「目標は最低でも10階層の攻略だ。きっと苦戦することはあっても出来ない目標ではない。」
「結局シンプルにまとまりましたね。注意するべきことは十分共有出来ましたし、あとは睡眠に時間を充てましょう。」
このダンジョン内でも睡眠というのは当たり前に必要になってくる。
時間はしっかり確保して明日に臨みたい。
見張りはじゃんけんで決めた結果、最初が俺1人ですることになった。
どうしても7人という割り切れない数字であるのであまりが出るのは仕方ない。
まさか、俺が1人になるとは思ってなかったけどな。
「しっかり見張ってくださいよー。」
「おやすみー。せいぜい魔物に殺されないようにねー。」
他人事だと思って好き勝手言いやがって。
6人が寝床につくと先ほどまでのうるささは嘘だったかのように静かになる。
この静かさは普段誰かと行動している俺にとっては懐かしくも感じる。
瞼を閉じれば一気に眠気が襲ってしまいそうなので体を動かして誤魔化す。
前の世界ではきっとこんなに体を作っていたことはなかったはずだ。
なのに、これほど体が動くのはこの世界に来た影響なのか、記憶にない部分がそうさせるのか。
そんな考えを遮るように声が聞こえる。
『助けて。私は最下層で囚われている。』
「誰だ。なぜ最下層から俺に語りかけられる。」
怪しい言葉。魔物が近くにいるのかと思ったがどうやら違うようだ。
俺が返した質問には返答がない。
ただのいたずらか。それとも運命を左右する声なのか。
その答えは最下層にしかないだろう。
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