第076話 模倣機械
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十数分はこの機械との勝負を繰り広げている。
あの機械はこちらが攻撃できる範囲に近づいた時にのみ反応して攻撃をしてくる。
その範囲から外れて攻撃をすれば良いと思ったのだが、攻撃であろうと反応して避けられてしまうようだ。
「あの手この手を試してみようかと思ったけど、どうやら真っ向から勝負するしかないようだよ。」
「あいつの体を1つ、こちらは2つ。それで押し切るしかない。」
「でも、スキルの構成に隙がないよ。」
「井村は念力以外にスキルはないのか?」
「・・・。あるよ、高級スキルロールで獲得したスキルが。」
ここまでで1度も聞いたことのない新情報。
スキルは個人情報とも言えるものだから隠しておくことを責めるつもりはないが、この場においてはあの機械が発動する前で良かった。
それに高級スキルロールならかなり実用性のある物だったに違いない。
「言わなくても良いけど、あの機械が勝手にバラすと思うぞ。」
ここであれに遭遇したのが運の尽きという思うしかないだろう。
それまでは全く気付くことなく俺達を冒険を進めることができたのだから。
「【反転】というスキルで効果は対象と対象の位置を入れ替える。レベルによって入れ替えることの出来る範囲が広くなるって感じだね。」
戦闘スキルにおいて移動系は重宝する。
これにおいてはサポートから攻撃まで様々は場面での活用が想定された。
「それを使ってこっちが有利を取れるかもしれない。いこう、反撃の時間だ。」
「待って!作戦は?何も聞いてないんだけど。」
「機械と井村が入れ変わる。タイミングは俺にまかせろ。」
機械の方へ歩いていくと俺達を敵とみなして攻撃を開始する。
まずは遠距離の土魔法を使ってくるので、それを邪魔する。
「コピー【土・・・。危険察知。コピー【受け流し】。」
俺の影操作に気づいたのかギリギリのタイミングで回避にスキルを使ってきた。
でも、【受け流し】は万能なスキルではない。強制的に攻撃を避ける代わりにその間は体の自由が効かないからだ。
その隙をつけば攻撃が当たるはず。
「コピー【分身】。これより限界値50%解放。」
俺の分身よりも明らかに数が多い。
これで数的有利がどうだと言ってはいられない状況になってきた。
しかし、これくらいは想定済み。
黒蓮華を鞘から抜き出し、近距離戦を挑む。
もちろん、後ろからの援護として井村が念力を使ってくれている。
そのおかげで一気に4〜5体相手するということにはならなくて済んでいる。
「お前らには投げる物がないからこのスキルは宝の持ち腐れだろうな!【迅雷投擲】」
隠し持っているポルタガを強化されたスキルに乗せて攻撃する。
この一撃の速さには他のスキルを使うこともできないまま倒れていく。
しかし、その敵は分身した敵。
この中から本体を見つけ出すのは至難の技かもしれない。
もう1度、他の敵に向かってスキルを使おうとするが的を絞らせないように懐に入って戦闘を仕掛けてくる。
この敵はダメージ覚悟で勝負をしているから捨て駒なのだろう。
かち合う金属の腕と進化刀。
その瞬間にあの感覚に襲われる。
「エラー:緊急モード」
機械が1度分身モード解いて、防御に専念しようとしている。
それほど力が溢れているということだろう。
名前:進化刀 四式 【黒鴉】
説明:進化刀の4段階目の進化の姿。刀の模様が綺麗に波を打っていてより黒を目立たせる。魔力を吸い過ぎた結果、凄まじい力を刃に秘める。
スキル:【進化】Lv4 【頑丈】Lv4 【攻撃力上昇】Lv4 【吸収】Lv3 【一心化】Lv1 ???
この進化は俺にとっても想定外のもの。
しかし、これは幸運だと言ってもいい。
相手はエラーによってこちらの攻撃を完全に防げるように距離をとっている。
最初の作戦とは少し変わってくるが、井村のスキルが鍵になってくるのは間違いない。
「武器のスキルまでは真似できないみたいだな。お前がお試しの相手になってもらう。【一心化】。」
スキルを使うと何か頭が割れるような痛みが一瞬あり、その後声が聞こえる。
その声はどこか聞き覚えのあるような。
しかし、思い出すことはできないような声。
『・・に・る・・・だ・やい。』
微かにだが何かを伝えようとすること理解できる。
声が聞こえなくなると自分の格好が変わっていることに気付く。
「一ノ瀬君、格好が!というより、半分黒く覆われているよ!」
何かは理解できない黒の物質。
これが俺に力を分け与えているのは間違いないだろう。
「なんか大丈夫みたいだ。心配いらない。それよりも相手は分身を解いた。ここから一気に勝負をつける。」
「わ、わかったけど本当に大丈夫なんだよね?」
「それは今からわかる。」
今度は先程の状況とは逆に俺から攻撃を仕掛ける。
そう思い床を踏み込んだ瞬間にいつも以上に力が入ることが分かる。
そして、その力をセーブする方法も。
「エラースキル:【防御層】」
井村のスキルかと思ったが、エラー状態になった時から設定されたスキルに変更されたのだろう。
それは好都合。敵は分身も受け流しも反転も使えないかもしれない。
そうなれば、こちらとしては成功率が大きく上がるだけだ。
一撃で防御の壁は破られる。しかし、何か策があるだろうとは警戒しておく。
スキルはもはや俺達の真似ではなくオリジナルのものだ。何が来てもおかしくはない心構えでいよう。
「エラー。エラー。実力が設定以上。エラースキル:【リミットオーバー】」
鉄の体は真っ赤に変化している。そして、溢れ出る水蒸気。
限界まで能力を高める代わりにオーバーヒートを起こしているのだろう。
俺を無視して、井村の方へ目掛けて走る。
最初の方では俺が井村へ攻撃する瞬間に機械と井村を入れ替えて何もできないまま倒すはずだった。
しかし、俺の能力値が急激に上がった分、井村へのヘイトが上がってしまったのか。
「作戦変更だ。俺と井村を入れ替えろ!」
「ええい。こうなれば一かバチかだ!【反転】」
俺がすでに振り下ろしている攻撃に向かって機械は走り込んでくる。
自分自身でも制御出来ていないだろう身体はもう止められない。
一撃で粉々に砕け散ってしまい、他の魔物と同じように消えていく。
他の魔物と違うのは落としたのがスキルロールだったということ。
これだけ多くのスキルを使える魔物が落とすスキルロールだから、かなりの価値があると思ってまず間違いない。
名前:転写のスキルロール
説明:任意の相手のスキルを合意の下でコピーして覚えることができる。ただし、コピーしたとしてもレベルは1からである。
これはかなりの優れもの。
とはいえ、俺が貰っていか迷うところだ。
「これ、転写のスキルロールという他人のスキルをもらえるものらしい。戦利品だ。
「そうかい!それならワシの【反転】を選ぶといい。ワシにはうまく使えなかったが一ノ瀬君なら使いこなせるだろう。」
それは魅力的な提案だ。
今度の戦闘に幅を持たせるためにはあって損はないだろう。
もしも、一言目がその提案でなければ今にでも使っていたところだ。
けれど、ここまで他人を優先する姿を見てしまえば心が多少なりとも痛む。
「戦力は1人に偏らせるより分散していた方がパーティとしては良い。だから、これは井村が使え。」
「ワシはなんもしてないからそんなものは貰えないよ。」
遠慮するのは分かっていたので無理矢理にでも持たせる。
そして、心の中で【迅雷投擲】のコピーを許可する。
「もうこれで俺は使う意味が無くなった。このスキルと【念力】の相性は良いだろう。」
「ありがとう!いつか借りは返すよ。」
そのやり取りをしている間に俺達は元のいた場所に戻される。
どうやら、俺達で最後だったようだ。
他のところで何が起こったのかそれは詳しく聞いておこう。
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