閑話 不敗の勝負師
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アタシは20歳になった頃に家を出た。
別に不満があった訳でもなければ、家庭の環境が酷かったわけでも無い。
ただ、なんとなく大人になった1人で生きていくものだという考えがあったからだ。
「これから平凡な生活を凡庸に過ごしていくのか。」
1人の人生というのは壮大に聞こえるかもしれないが蓋を開けてみればどうということはない。
ただ生きるために金を稼いで、苦労しない範囲でやりくりして生活する。
そんな主人公でもなんでもないモブみたいな人がほとんどだろう。
アタシだって色んな挑戦をして人生の主人公になろうとしたことはあった。
趣味だった絵を描くことも、得意だった歌を歌うことも全て越えられない壁というのが存在した。
それを乗り越えるた先に普通とは違った人生があると人はよく言ったものだが、そんな綺麗事は通用しない。
成功した人間が言えば成功論、成し遂げてない人間が言えば説得力はない。
捻くれた考えかもしれないがアタシがそう思ってしまったのだから仕方ない。
退屈な人生を恨んだことも何回もあった。
もっと刺激的なものが用意されていない世の中が悪いのだと思った。
「何か面白いことないかなぁー。」
20代の前半を終える頃にはそれが口癖になっていた。
没頭できる何かがアタシの元へ舞い降りてこないかと何度も思った。
とある日の昼休みのこと。
業務が円滑になるように仲良くしていた友達達が彼氏の愚痴をこぼしているのを聞いていた。
どれも愚痴をいう名の惚気話で聞くに絶えないものばかりだったので、アタシはいつものように話半分で流していた。
しかし、1人の相談がかなり深刻なもので流れが変わる。
「彼氏がギャンブルにハマってしまいまして、パチンコ屋に毎日通っているみたいなんです。」
その話を聞いた友達達は一斉に体を前にして別れなさいと連呼するのだった。
好きであるなら別れる必要なんてないのだろうかと思ったアタシは薄情な女なのだろうか。
パチンコなんて男の人ではしょくある趣味だろう。
何も面白いことがないから趣味であるパチンコに行ってしまうだけの話。
その後も詳しく彼女の話を聞いていたが、別にデートに行かないわけでは無い。
お金も彼女から巻き上げているわけではなく、自分の稼いだお金の中でやりくりしているようだ。
それでもみんなパチンコが悪だと言い聞かせて彼氏と別れさせようとしていた。
昼休みが終わった後にふと先程の話が気になってしまう。
パチンコが人を狂わすということはよく聞くが本当にそうなのだろうか疑問に思った。
もしも、そうであるなら人生を賭けてでもやり続けてしまうものとはなんだろと好奇心が湧いてしまう。
「パチンコかぁ。次の休みにでも行ってみようかしら。」
もしかしたらアタシも人生を変えるほど面白いと思えるものに出会えるかもしれない。
そう思い呟いた一言はその日のモチベーションを大きく上昇させることになった。
早速次の休みの日にはパチンコ屋に足を運んでいた。
朝一番にというわけではなかったが、それでも午前中には着いたが中には人が大勢いた。
ボロボロな格好のおじさんからピシッとしたスーツを着ている男性まで年齢も境遇もバラバラのように感じた。
席に座ってみると親切に始め方が書いてあるわけではなかった。
とりあえず横の人の様子を見よう見まねでやってみながら始めることができだ。
無作為に落ちていく玉を何分間も見つめていた。
何回も画面に表示されたルーレットを眺めていたが今のところ心を熱くすることは起きなかった。
数分に1回画面から何か変なのものが出てきて、台に付いているボタンを押させることがあった。
2時間ぐらいその後も続けてみたが5万円使って換金時には10万円ぐらいにはなっていただろうか。
いくらパチンコで儲かったからといって運が良かったと思うのとちょっと嬉しいと思うくらいだった。
「これがまだ始めたばっかりだからということもあるわよね。次、また次行けばハマるかも。」
この時はアタシはこんなことにでも縋るしかなかった。
気が狂いそうになるほどの退屈に身を壊されそうな毎日を崩壊という形であっても終わらせてほしかった。
しかし、どんな物語であっても自分の思い描いたようにはいかないのだ。
2回目行っても勝ちはした。3回行ってもそれは変わらなかった。
湯水のように湧き出るお金を見て何か喜びを覚えることができそうだったが、どうしてもその次の感情までに発展しない。
「ねぇ?宮武さん。私、宮武さんがパチンコしに行くところを見ちゃったんだけど。」
声をかけてきたのは彼氏がパチンコ依存症だと相談してきた女性だった。
「最近、友達との付き合いで数回行っただけよ。何か相談事だったの?」
「彼氏がついにカジノにハマり始めちゃったの。日本ではお金をかけるカジノって違法なんでしょ?どうしたらいいか分からなくて。」
ギャンブルには様々種類が存在する。
競馬や競輪、パチンコなどの公営のギャンブルから日本ではまだ違法とされているスポーツベッティングや彼女が付き合っている男性がしている違法なものまで。
法に触れることだから彼女は真剣に悩んでいるようだ。
しかし、アタシは興味が湧いてしまった。
例えそれが法に触れることだったとしても。
「アタシに任せて。今度彼氏と休みを2人で合わせましょう。アタシが尾行してなんとかしてあげるわ。」
これはただの建前。
普通では絶対に味わえないだろう体験ができることに好奇心が止まらない。
結構の日。
彼女からの連絡を彼氏と同棲しているアパートの前で待って、後をつけた。
そうすると着いた場所は意外と普通のビル街の中に紛れていることに気づいた。
一般人でも何かの商業施設と間違って入ってしまう可能性だってありそうだ。
「それ以上先にはいかない方がいいわよ。」
「誰だよ!お前になんの関係があるんだ。みんなだってやってるんだから良いじゃないか!」
「アンタの彼女から止めて欲しいって言われてるのよ。電話繋がってるわ。この先に行くなら別れを告げてからにしなさい。」
彼女宛に繋がった電話を手渡した。
何秒か迷った末に電話をとって泣いて謝った後、電話を返して彼女のいたところへ戻った。
「さてと、こっちの問題も片付いたし。」
せっかく連れてきたもらったカジノの中に足を踏み入れる。
外とは全く違う空気感。
人生の道を踏み外した人間が溢れるここで身を滅ぼすほど熱い賭けがしたい。
「お客様失礼ですが、お金の持ち合わせはありますでしょうか。」
尾行が目立たないように、地味な格好をしているから怪しまれたのだろう。
貯金の100万円を見せると中へ案内される。
そして、何回も通ったようにブラックジャックのコーナーによる。
「始めましょうよ。人生の賭けた戦いを。」
そう。アタシはこの緊張感を求めていた。
そこからは何回もカジノへ通い詰めた。
海外のカジノで全部お金を巻き上げたこともあったぐらいに負けることはなかった。
結果的には海外のカジノではブラックリストに乗ってしまい通うことができなくなってしまう。
【不敗の勝負師】
それが海外では広まってしまった称号。
だから、逃げるようにして日本に戻って賭博を続けた。
アタシが1番運が悪かったのは、警察に捕まってしまった1回限りだろう。
違う世界に生まれ変われたら何か他に面白いことに出会えるといいのだけど。
そう思いながら地獄のような刑務所へ送られた。
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