第060話 開始の合図
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「戻ってくるのが早かったな。」
「こっちの動きが誰かに漏れているかもしれない。」
「えぇーー!それって問題ないんですか?」
「えっ。これは、し、失敗?見つかったら八つ裂きにされちゃうんですか?」
「落ち着け。バレてたとしてもギャンブルファイトに参加していた俺と上野の2人ぐらいだろ。他の4人の存在はバレていないはず。このまま計画が進めば成功する確率の方が高い。」
落ち着かせるようにそう説得したが、本当のところは不安要素が大きい。
裏切ったのか、情報が漏れたのか。このどちらかが判明しない対応が大きく変わってくる。
特に情報屋が裏切っている場合は、こちらにくる被害が計り知れない。
「計画にイレギュラーが発生したとしても続行するしかないだろうな。」
大城も何か異変が起こっていることに気づいてはいるものの他の人には悟られないように手助けを入れる。
時間的にもギャンブルファイトの試合は全試合が終わる時間帯だろう。
もうここまで来たら行く末に身を任せるのみだろう。
通信用の魔導具に音声が入る。
「こっちは十傑の集まりが始まりましたよ。あの不自然な対戦表について調べたいところですが、怪しい動きをしているようなやつは見当たりませんね。」
「プハンエは何か言っていたか?想定外のことが起こったのだから動揺の1つくらいあってもおかしくないだろ。」
「何が起こっているか分からないが計画は続行する。タイミングを見計らってオッドを呼ぶから。とだけ言っていました。動揺というよりも冷静に対処している印象の方が強いですね。元々想定していたようにも見えますし、ピンチだからこそ冷静になっているようにも見えます。」
「何かあったら連絡してくれ、俺達は控室の前に待機しておく。」
連絡を終えた後で、話を共有して控室の前まで移動する。
ここからでも話声を盗聴できるかと思ったが意外にも音は漏れてこない。
中の様子は気になるところだが、今は上野からの合図を待つしかない。
しかし、10分くらい経過しても何も連絡がこない。
どれほど時間が掛かるかは聞いていなかったが、オッドを呼ぶこと自体難しかったのだろうか。
そう思っていると合図にしていた連絡が入る。
すると同時に中から大きな音が響く。何かが破壊されたような衝撃音のようだった。
急いで扉を開けて中を確認すると控室は、今日のギャンブルファイトで来た時よりも酷い状況になっていている。
外壁はボロボロで備品が壊れた物が床に散乱している。
「遅かったなぁー!勇者共!」
計画通りそこにはオッドの姿が見える。
しかし、横にはプハンエと情報屋の姿もあることに気付く。
「驚きはしないのね。それもなんとなく想定していたということかしら。」
「驚いてはいる。十傑の大半が倒れているんだからな。」
「オッド様の実力があればこれくらいは造作もないことだろう。全てはオッド様に支配下にあるのだから。」
裏切られるのは、あの対戦表の時点で想定したことの1つだ。
何も驚くことはない。
しかし、十傑がここまでやられているのは想定外だったな。
普通に立ってているのは、ゼエスとリリスくらいで他は意識を保つのがやっとという状況だろう。
ここは【気配遮断】を持っている小原と【回復魔法】を使える清水が協力して回復させたいところだ。
もしかしたら戦力として戦ってくれるかもしれない。
「俺と戦いならそう言ってくれれば良かったのによ。前に絡んだ時には素っ気ない態度取りやがって。」
「あの時はまだ時期尚早だったんだ。今は計画通り進んでいる。」
「計画通り進んでいる?裏切りまで想定していたとは策士だなぁー!」
これは煽られているのだろうか。
俺からしてみれば結果的にプハンエの力を借りることにはなったが、そうで無かったとしても計画は進めていたと思っている。
「それにそんなに多くの味方引き連れてずるいじゃねーかよ。そうなったらこっちも人数増やすしかねぇーよな?」
これ以上敵を呼ばれたらかなり不利な状況になってしまうのでなんとしてでも止めたいが、増えたのは一瞬の出来事だった。
それも見たことのあるようなやつらばかりだ。
「ウギガァアーーー!!!」
その中の1人が雄叫びを上げる。
クロン、ハクファン、ペリーラの3人のようだ。
正確に言えば、その3人の姿をしてはいるが様子がおかしい。
まるでゾンビのように精気は感じられず、言葉も曖昧で話が通じる感じではない。
「手助けはいるか?」
ここで救いの手を差し伸べてくれたのはゼエス。
まさか、共闘してくれるとは思ってもいなかったが今は1人でも助けが欲しい。
できることならリリスも戦いに協力して欲しいのだが、どこかへ消えて姿を現さない。
「ゼエス。あんたなら、ハクファンとペリーラの2人を任せられるか?」
「時間を稼ぐだけならな。俺は魔族が憎いから手を貸す。それだけは忘れないでほしい。」
残るはクロンとプハンエ、情報屋にオッドの4人だ。
こっちの戦力は6人。有利かと聞かれれば難しいような状況だろう。
「こっちの回復終わりました!そっちの援護に入ります。」
清水と小原ペアが十傑の回復を終わらせてくれたようだ。
十傑の様子を見ると回復はしたが戦力になりそうな人間は2人だけだ。
「俺が1人でクロンの相手をしてあげよう。そうすればオッドを倒せる確率が上がるのだろ?」
「ならば、俺はお前らの援護をしてやろう。1人で戦闘する体力は残ってないがそれくらいなら役に立てる。それに進化刀を見せてもらったからな。」
ミストローダーとドウイウの参加によって戦況は大きく変わり始める。
「俺と上野、大城でオッドの相手をする。プハンエの相手を井村と清水、情報屋の相手をドウイウと小原で頼む。」
「了解した。しかし、この広さでは戦うのは難しい。フィールドの方まで誘導するぞ。」
「ここからは総力戦というわけですね。勝つ以外は生きて帰る選択肢はない。厳しい戦いになりそうですね。」
上野と大城、そして俺の3人は今この状況で出せる最高戦力と言える。
2人には覚醒スキルがあり、俺には先程進化して進化刀がある。
「話合いは終わったのか?最後に与えてやった生き延びるチャンス上手に使えたらいいな。」
オッドは余裕そうな表情で語りかけてくる。
ここまで俺達が作戦を考えられたのもこの慢心があったからだ。
それがなくなった今からは本気の戦いが始まる。
そんな緊迫する瞬間の中で1つのことを思い出す。
宮武はどうやってオッドを倒すつもりだったのだろう。
それも1人で確実に倒せると自信を持っていたようだった。
今どこで何をしているのか。
任せたら本当に倒せていたのだろうか。
それがふと気になってしまう。
「集中しろよ。目の前の相手は考えごとをしながら倒せるようなうやつではないぞ。」
「僕達は控室を抜けてフィールドの方までいかないとオッドももう待ってくれる雰囲気ではないですよ。」
その言葉を聞いて俺は足を動かした。
オッドは移動中に不意打ちをしかけるようなことはせず大人しく着いてくる。
今、ニペガピ建国以来初の抗争が始まろうとしている。
この抗争の結果を知るのは、まだ誰もいないだろう。
けれども、1つだけ言えることがあるとするならば確実に事は大きく進んでいるということだけだ。
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