第051話 一ノ瀬VS暴食
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次の対戦は俺らしい。
プハンエの言っていることが本当であるなら相手はハクファンになるだろう。
いつも食事をしているようなシーンばかりしか見たことがないのでどんな戦闘をしてくるのか皆目検討もつかない。
この対戦カードもおそらく情報屋が仕込んだものに間違いない。
なぜ協力しているのか。
なぜ対戦表を操作できるのか。
情報屋についての謎は深まるばかりだ。
それを今、気にしていても意味はないのだけど、そう思ってしまうのは必然的なことだった。
「せっかく飯食ったのにこんなやつ相手にエネルギーを使わないといけないのかよ。」
ハクファンが試合前に俺の前に来てわざわざ声をかける。
戦うのが嫌ならなぜここにいるんだと言いたいところだけど、大方クロンとの知り合いで食料か何かを条件にここまで駆り出されているのだろう。
「どうせ、アンタらの誰かが対戦表をいじっているのは分かっているけどさぁ。試合始まったら降参した方がいいと思うよ。相手にならないと思うから。」
「結構自信があるみたいだけど、さっき仲間が1人負けてたぜ。」
「仲間か。面白くないことを言うんだな。あれは利害の一致で協力で参加しているだけだっての。俺は金と飯。それがあればなんでもいいだけ。それにアンタらが十傑で革命を起こそうとしているのは分かってんだよ。」
「じゃあ、怖くないのか?俺と戦って負けることがあるだろうに。」
「負けることはねぇーよ。クソ野郎が。ちゃんと飯食ってねぇーからそんなことが言えんだろ。」
どうやら思ったよりも自信があるタイプの人間らしい。
飯には全力を注いでいるようだけど、そこまで固執している理由がわからない。
しかし、こういうタイプの人間のことをいちいち理解しようとしても無駄なことぐらい分かっているので話半分に聞いておこう。
「言っとくけど降参はしないぞ。勝てなかったとしてもお前の嫌がることをするぐらいはしてやるよ。」
「まぁ、口だけのやつはいくらでも見てきた。」
口でのやりとりを続けてきたがついに攻撃を仕掛けてくるハンファク。
こちらからの攻撃はないと判断しての攻撃かもしれないがこちらとしてはスキルを試す良い機会になる。
まずは相手の撹乱を狙った【分身】。
「プハンエからそのスキルを教えてもらったのかよ。あいつも人が悪いね。」
「どういうことだよ。使い勝手の良いスキルだろ。」
実体があるわけでもなく、分身の攻撃は相手に直接的なダメージがあるわけではないがフェイントには有効。
つまり、戦闘の駆け引きにおいて強いスキルと言える。
「プハンエが使っている【分身】は進化している【高等分身】。つまり、進化スキルってことだ。そして、そのスキルには進化しているかどうかで大きな違いが発生する。【念力】”グラビティアウト”」
念力で生み出された地響きは本体である俺の向かって攻撃してくる。
ハクファンが言いかけたことが言葉にしなくても分かる。
「ただの【分身】じゃ、どこに本体がいるのか分かるってことか。」
ここで初めて知った【分身】の特性。
そこは説明しておいてくれとも思ったがスキルを伝授してくれている時点でかなり助かったので、文句を言う必要はない。
それに加えて俺が仮に負けたとしても俺にはデメリットはない。
むしろ、プハンエにこそデメリットがあると言える。
言い忘れかそれとも俺を試したのか。
真意は知らないが今は目の前のことに集中しよう。
「お前が【念力】を使えることが分かっただけでもこのスキルには意味があったみたいだな。」
「ただの【念力】ぐらいで大袈裟な野郎だ。これぐらい誰でも使えるだろ。」
「十傑の感覚はおかしいみたいだな。頭がイカれてるやつが多いようだし。」
「今なんつった。俺はおかしいって言われんのが1番嫌いなんだよ!ぶっ殺すぞ。」
「沸点が低すぎるだろ。それに十傑は全員残らず変なやつだ。」
「【身体強化】」
それ以上はなにも言わせないと言わんばかりに俺の喉元まで攻撃を仕掛けてくる。
攻撃の速度はかなり速いがそれくらいの戦闘はしたことがある。
だから、攻撃に合わせて次なる戦法を試してみることにした。
「【受け流し】+【反撃】」
「ッチ、いてなぁー。コンボのできるくらいにはなってるのかよ。」
どうやら俺がコンボができることは想定になかったようでかなりのダメージをもらっているようだ。
それにいくら油断してたとはいえ、【身体強化】のスキルを使っている相手。
しかも、十傑と呼ばれる戦闘ではかなり強い部類の人間にだ。
2度目はないぞって顔をしている。
次の攻撃からはさっきのコンボも想定しているだろう。
俺に出せるスキルを全部使って勝てるかどうかは怪しいと思う。
「めんどくせーよ。めんどくせぇ。さっきの炎使い。あいつお前の知り合いなんだろ。なら知ってるよなユニークスキルのこと。【悪食の悪魔】」
覚醒者が使うスキルのことを言っているのか。
あれがユニークスキルということか。
他のスキルとは全く違う性能で他を圧倒する。
何もない空間からありとあらゆる食事を用意して食べ始める。
その姿は決して誰も邪魔することはできない空間。
そして、その食事を終えると黒い翼が生える。
「あのスキル使えるってことはあの仲間もそしてたぶんお前も契約したんだろ?魔族とな。」
「待て。何を言っているんだ。魔族とユニークスキルに何の関係性が。」
「とぼけんなよ。あのスキルは魔族と契約なしでは使えない。もしくはお前らが魔族自身である必要があるがそんなの微塵も感じないしな。」
前のティキアで初めて知った魔族の存在。
それに関する新情報として手に入れたのはユニークスキルという強力なスキルが使えるということ。
この街はやはり魔族と根深く関わっているとみて間違いないだろう。
目の前にいるこいつは少なくとも関わりも持っていると自分から白状してきたしな。
「十傑が魔族と関わりがあるなんて知れたら大スクープだろうな。」
「バカを言え、この街では魔族との交渉なんて日常茶飯事だ。それにこの街には・・・・」
何か言いかけた瞬間に天空から黒い弓が降り注いでくる。
そして、一瞬にしてハクファンの首を掻き切る。
俺の攻撃ではない。
しかし、試合は俺の勝ちとして処理されている。
運営委員に運ばれて消えていくハクファン。
明らかに不自然だったにも関わらず他の人間はどうようの色すら見えない。
魔族の情報は迂闊に出してしまうとやられてしまうということか。
日常茶飯事ということはこのカジノ全体に魔族、もしくはそれに関係している人間がいるということだ。
ここがギャンブルファイトだったので死んでも救護が行わられる可能性があるかもしれないが、もしも外だったと考えると恐ろしい。
「何を話していたかは大体予想がつくから触れないでおくが勝ち勝ちだ。よくやった。」
控室に戻ってかけられた言葉はそれだった。
これが勝ちだと言われても正直実感はない。
それでもプハンエの計画には支障がないのだからあまり興味がないのだろう。
それとは違って興味を持って近づく人影が1人。
「今のはなんだったんですか。少し気になるんですが教えてはくれないんですか?」
「後で絶対に教えるから今は教えられない。俺もあれみたいにはなりたくないからな。」
「本当に教えてくれるんですか。あんな面白いこと絶対教えて欲しいんですけど。」
こいつに詳しく魔族のことを教えてたら何かよからぬことをしそうで怖い。
覚醒者と魔族の組み合わせが誕生したなんてことなったらそれもそれで怖いしな。
「それよりもプハンエって人に協力しているのはなんでですか?」
「強くなれる気がした。それだけだ。ちゃんと魔王討伐のことも考えてるから安心しろ。」
「僕はもうその心配してないですけどね。」
その目が語るのは何か俺にはまだ知ることはできなかった。
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