第048話 進化する力
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「まず、普通に投げてみろ。」
「普通に投げるというとスキルを意識しないでか?」
「スキルにはそもそも所有者が使用することを明確に意識しない場合を発動しない。これも勉強のうちだから覚えておいた方がいい。」
俺はまずスキルを意識せずにダガーを投げてみる。
サーカスのバイトをしていた時のことだけ思い出して投げてみるといつのもように狙った場所に刺さる。
「見てみろ。木に刺さっただけだ。これがスキルを使うと。」
俺は言われた通りに【投擲】を意識して同じ木を狙い投げ込む。
違いは一目瞭然だった。
「全く違うな。刺さったところの周りが衝撃で削れている。」
普段のスキル使用時には全く意識のしていなかったことだ。
スキルでは何かしらの補正が掛かると予測していたもののはっきりとした実感はなかった。
言われてみればただ刃物を投げただけで今までのような攻撃ができるとは思えない。
「で、どう思った?」
「どうって言うのは?」
「スキルを使った時と使わなかった時に発生する違いの仕組みについてだよ。」
「それがスキルの進化と関係してくるってことか?」
そう問い返したが、返事が返ってこない。
まずは最初の質問に答えろ。
そう言わんばかりの雰囲気が醸し出されている。
「スキルを使用する際に何かしらの働きかけが脳に送られたとかだろうか。スキルという概念がそもそも曖昧だ。【鑑定】したら習得したスキルが表示されるけど、これは何が作用してこうなっているのか。」
俺は今まで疑問にすら感じなかったことを深く考察し始めた。
この機会に学べることは全て吸収したからな。
「その調子でスキルについて考えておけよ。それで・・・今ッ!!!スキルを使え!!!」
「えっ!【投擲】!」
言われたままにスキルを使う。
これが進化する方法なのか!
と思ったが、俺の飛ばしたダガーはあらぬ方向へ飛んでいく。
いきなり言われて焦ってしまい的から外れたとかそういうことが原因ではない。
明らかに俺との意思とは違ってところへ飛んだのだ。
「プククク!これがスキルの暴発だ。今回の例は気持ちが全く使用するという意識がなく使用したから起こったもの。他にも感情を昂らせすぎたり、発動条件を満たしていないのに無理矢理発動させたりするとこうなる。」
「わざわざ実践させるな。実践を。でも、1つ良い情報があったな。無理矢理発動させると暴発という形とは言え、発動はするんだな。」
「面白いところに目をつけるな。【反撃】が相手の攻撃なしで使えるかどうか試したんだろ。やってみろよ。」
俺は言われた通りに構える。
それも木を相手になんかじゃない。
余裕そうに俺の前に立っているプハンエに対してだ。
黒鉄を鞘から出したが逃げる気配がない。
つまりは全力で放っても何1つ問題がないということ。
「【反撃】」
使用後真っ先に襲ったのは俺に対する強い衝撃。
そして、その衝撃によって10メートルほど後ろに吹き飛ばされてしまう。
「やっぱりこんな感じになるのか。俺の提案を素直に許してる時点で失敗することはできたけどな。」
「実際に実験するまでは可能性を信じる。実に愚直で面白いな。でも、【反撃】スキルじゃそう上手くはいかない。他にも、相手に依存するようなスキルは暴発として自分に返ってくる。」
「色々試したけどスキルの進化はしなかったぞ。結論はなんだ結論は。」
「脳と心。それがスキルに作用する。無意識の中で自然と強く求める欲望に脳が強く反応しシンクロする。それがスキルの進化条件だ。」
「簡単なようで理解するまでに結構時間が掛かるんだけど、俺のスキルを進化させてくれるんじゃなかったのか?」
「そうだぜ。だから、死ね。」
急に荒い言葉を使ってくる。
最初はなんの冗談かと思ったが、顔つきに一切の笑顔はなく至って本気のようだ。
どうすれば俺を殺せるのか。それを真剣に考えている。
それに応えることがスキルの進化に繋がるのであれば俺も応えるよ。
俺も全力を持ってプハンエを止めにかかる。
攻撃方法は実にシンプルなワンパターン。
派手な攻撃をちらつかせてこちらが反撃をしようとしたところに攻撃を仕掛ける。
積極的な攻撃に見せかけた相手の後手に回る消極的な戦法。
「【投擲】。使ってればいつかなにか掴めるのか?実践あるのみとかそう言うことじゃないよな。」
「お前のそのくらいの【投擲】じゃ、掠りもしないぞ。来いよ。もっと。【威圧】”フルオーラ”」
この威圧感。今までに会った誰よりも殺気を感じる。
立っているのもやっとなくらいで動くことは困難だ。
その間も攻撃するためにナイフを持ってこちらに近付いてくるプハンエ。
この状況で自分自身の体を動かすには痛覚を自らに与えることで意識をそっちに誘導させるしかない。
しかし、全く体を動かせない状況でどうすれば。
「あった。それもさっき実験したばかりの【反撃】」
体に強い衝撃が流れる。
痛いとは思うがナイフで心臓を突き抜かれるよりはいい。
襲いかかるナイフを蹴り上げて、こちらからの攻撃に移る。
「【威圧】を解除するまでは完璧だった。けど、すぐに攻撃に転じても防がれるぞ。」
「お前がバケモンなだけだろ。」
攻撃は見事に避けられてしまい、振り出しに戻る。
この戦いを後何回続けると終わるのだろうか。
スキルの進化を求めてる俺にとって今の時間は意味があるのだろうか。
考えるほどに疑問は残るが言われたことをこなす以外に選択肢はない。
「破滅の時計。聞いた人間の平衡感覚を10秒間失わせる魔道具だ。10秒あれば確実に殺せるからな。しかし、使うまでに3分かかる。死にたくなければ止めにこい。」
宙に浮かんでタイムをカウントし始めた破滅の時計。
あれを壊すのが最優先事項か。
「ここで俺のスキルが進化するってことだな。【投擲】」
「そんなの分かってて通す訳ないでしょ。」
【投擲】で投げたポルタガは簡単にプハンエによって防がれてしまう。
相手は何がなんでも3分間破滅の時計を守り抜くつもりだろう。
「30秒経過。何もしないまま終わってもいいのか?」
愚直に接近戦を挑んではいけない理由が1つある。
まだ、この戦いにおいて見てない【分身】だ。
ただでさえ技量に差があるのに数まで増やされてしまえば勝ち目は少なくなる。
しかし、黒鉄の【身体強化】を利用するという方法も悪くはないのではないかと考えている。
「考えるのは一旦後だな。分身が来たらその後に考える。いくか黒鉄。」
俺は鞘から黒鉄を抜き出して構える。
プハンエの中では想定の範囲内だったようで既に【分身】を使って攻撃に備えている。
「進化刀。そいつを1人で相手するのは厄介だからな。」
「2人ならいけるとでも?」
「あぁ。それと後1分45秒。時間は有限だぞ。」
刻一刻と迫り来るタイムリミット。ここからあの破滅の時計に届くのか。
俺の心配とは裏腹に激しい攻防は長く続く。
あと少しで刃が届きそうというところで何度も遮られる。
「30秒。俺の期待はどうやら間違っていたようだ。」
プハンエの声は今の俺には届かない。
ただ、どうすればあの破滅の時計を壊せるかだけに意識を集中させる。
半端な遠距離攻撃は通らない。
接近戦も一度も簡単に防がれてしまう。
魔法は威力が足りないから今回は向いていないだろう。
「死にたくはないから。全力で投げる。この残り時間と距離ならそうするしかないだろ。壊れろよ、この一撃で。」
思い出したのは、今まで体験してきた窮地。その時に渇望した力のこと。
その気持ちを胸に投げるダガーには自然と力が集約されているような気がする。
狙いは破滅の時計。
角度は完璧。多少の風は吹いているもののこのポルタガの重量なら風の影響は皆無。
「貰った。」
風を切り裂き、空を飛ぶダガーはプハンエに動く隙を与えることすらなく破滅の時計まで届く。
「来たな。これがスキルの進化だ。けど、その後のことを考えていないな。」
あの殺気はハッタリだったと気付かせるように、油断した俺の頭に峰で一撃。
「いてぇー。って、これが本当に進化したのかよ。」
ステータスのスキル欄には、
【鑑定】Lv3 【反撃】Lv3 【土魔法】Lv1 【料理】Lv1 【読書】Lv1 New【迅雷投擲】Lv1
本当だ進化している。
もしも、全部のスキルに進化の可能性があるとした。
この時、俺はまだこの世界のことを何も知らないのだと再確認した。
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