第046話 残る強者
誤字脱字や文章の下手さについてはご了承下さい。投稿予定時間になるべく投稿できるようにします。
よければ、評価とブクマ等していただければ幸いです。
結局1日の全日程が終了するまでに残っていたのは10人程度。
あれほどまでいたのがこの人数になるとは。
控室の大きさは心無しか大きく見える。
残った10人はそれぞれが好きなことをしているようだ。
今日の分の戦いは終わった。
それならばここに残る理由もないのだが、誰も動こうとはしないのだ。
俺はここから立ち去ろうと思い、出入り口まで足を進めようとするがそれを止められてしまう。
腕を掴んで止めてきたのはプハンエ。
彼が俺になにかようがあるのかと思い振り返ると
ズサッ!
俺の横を微かに外れて通っていくナイフが1本。
それは俺が出るはずだった扉に突き刺さっている。
しかも、刺さっている場所は当たれば死は免れない後頭部だ。
「おいおい、困るぜぇー!プハンエよぉー!」
「そうですわ。せっかく新入りの十傑が死ぬかどうかを賭けていましたのに。大損しちゃいました。」
「ハグッ!アーグッッ!ほれのふぁいふを!ゴクッ。投げんじゃねーよ。馬鹿どもが。」
「皆の怒りは分かりますが、こいつは俺が育ててる最中でしてね。困るんですよ殺されたら。」
最初に威勢よく声を上げた男がプハンエに近づいていく。
「随分と調子に乗ってる見たいじゃねーかプハンエ。そんな初心者ばかりで遊んでるから初見殺しのなんて恥ずかしい称号付けれられんだぜ。」
「初見殺し。俺は気に入ってるんだけど。それともお前も見たことないような殺され方されてみる?」
「・・・ったくジョーダンだぜジョーダン。まじになるなよ。あーこえーこえー。」
そのまま元いた場所に戻っていく。
他の者は静かなやつが多いのか喋っている人間が少ない。
「俺が紹介してあげるぜ。君も十傑の仲間入りだからな。」
「そもそも十傑ってのはなんだ?ここにはあまり詳しくないから教えてほしい。」
「あちゃー。まずそこからか。十傑ってのはその日最後まで残った10人のこと。日によって違うけど最近では固定だ。」
「つまり、今日で俺に落とされた十傑がいるのか。」
「そう言うこと。今から十傑紹介するからよく聞いてろよ。ここが1番重要だから。」
そこから説明が始まった。
名前と二つ名だけをまとめると。
威勢の良いやつが、”狂気の愉快犯”クロン
お嬢様みたいなのが、”死を好む姫君”ぺリーラ
ただひたすらに食事をしている”暴走する食害”ハクファン
身長がかなり低いドワーフ族らしき”武器破壊の専門家”ドウイウ
一切顔の見えないベールで覆われている”魅了の隠匿者”リリス
さっきからこれだけ大声や音が出ているのに起きる気配のない”妨げられぬ欲望”スイム
俺の方をずっと見て何かを探っている”全知の錬金術師”ミストローダー
後ろでずっとゲームをピコピコしている”電脳の統率者”サガ
そして、圧倒的な風格と威圧感を放っている”無敗の神人”ゼエス
あとは、ここまで何かと世話を焼いてくれている”初見殺し”のプハンエとまだ二つ名のない俺だ。
「それじゃあ、誰か二つ名でもつけてあげたらどうですの?」
「僕は試合観察してきた思いついてるよ。”一撃の決闘者”ってのは?」
ドウイウの言葉にみんなが笑いを堪えている。
たぶん、ギャンブルなどが横行しているこの国で正直者というのは、よくない意味なのだろう。
「別にそれでもいい。二つ名で決まるのが実力だと思ってないからな。それとも、あんたらはかっこいいあだ名でも決め合って満足だったのか?」
俺は扉に刺さったナイフを抜き出す。
そして、【投擲】のスキルを使って、クロンの頬が少し切れるぐらいの真横を通過させた。
俺だって実力はあるという証明と宣戦布告のようなものだ。
「お前、ここで死にたいのか。」
頬の傷口から出た血を舐めて、戦闘の気分に移り変わっているようだ。
「やめろ。決着をつけるのはギャンブルファイトだけにしろみっともない。」
このゼエスに喧嘩を仲裁されると先程までは暴れる気だったクロンもおとなしくなる。
しかし、その目は俺を捉えている。
許しはしないがゼエスの忠告を無視するようなことはできないのだろう。
「そうですわ。私達だってナイフを投げて遊んでいたのですから。」
「黙ってろぺリーラ。俺はゼエスが止めたから従っただけだ。あいつと対立するのは面倒だからな。」
その後、用事が済んだのか全員控室から出て行った。
ゼエスはその場から動くことなく1番最後まで残っていたので、何かあるのかと気になったが今はまだ関わらない方がいいだろう。
控室を出ると俺はプハンエを探した。
彼には今日1番お世話になったのだから、お礼だけはしっかり言おうと思ったからだ。
しかし、出たタイミングはそこまで変わらないはずなのになかなか見当たらない。
1階フロアを探してもいないということは地下2階にまで降りたのだろうか。
そういえば今日はこのフロアにずっといたので下の階を見れていないので、下の階に繋がる階段を探した。
数分後にフロアの端の方で発見することは出来たがなぜか受付のようなものもセットであるのが見える。
「ここから先に降りたいのだけど、何か条件を満たさないと通れないのか。」
「条件という条件があるわけではないのですが、ここから先を通るなら1万ゴールドを払って通行書をもらうと通れますよ。」
「1万か。これで。」
アイテムバッグに入れておいた今日の儲けの中から少しお金を取り出した。
そして、受付の女性から受け取った通行書をムキムキの門番に見せると通過することを許された。
階段を降りた先には商業施設の集合体のような場所についた。
2階はショッピングフロアだったのか。
俺はプハンエに会うという当初の目的はすっかり忘れてしまい散策するという気分に変わる。
少し歩いただけでも面白そうな商品やブランド物まで様々な物を取り扱っている。
「あっ!一ノ瀬さん!」
俺のことをはっきりと一ノ瀬を呼ぶのはあの7人のうちの誰かしかいない。
それにこの声は聞き覚えがある。
振り返ると手には何も持っていない小原がいた。
この階にいて買い物をしていないということは来たばかりなのだろう。
「1人か?宮武とか清水とは一緒じゃないのか?」
「今日はずっと1人行動していました。他の2人は始まってすぐにどこか行きましたし邪魔するのも悪いので。」
「そうか俺も今日は1人で行動してたな。で、どれくらい稼げたんだ?」
「私は、そこまでギャンブル詳しくないので最初にルーレットに全額賭けたら10万ゴールドになったのでそれ以降はこの階でウロウロと。」
1回賭けただけでそれほどの大金になるのは幸運の持ち主としか言いようがないな。
それよりも長い時間このフロアにいたのなら少しぐらい買い物を楽しんだらよかったのだけど。
「買い物をしなかったのは何か理由があったのか?」
「理由はないです。元々ここに来たのも1階の人達が怖くて降りてきただけですので。それにこのお金はみんなのお金なので私が使うわけにはいきませんよ。」
「真面目だな。たぶん他のやつらは使ってると思うぞ。もうそろそろ集合場所に移動するか。」
「そうですね。みなさん集まっていたら大変ですので。」
久しぶりに小原と喋ることになった俺はたわいもない話で間を繋いだ。
どうやら俺達が1番乗りだったらしく、多少は待つことになったが仕方がないだろう。
全員で集めた金額は50万ゴールド。
1番集めたのは小原の9万ゴールドだったようだ。
俺は明日もギャンブルファイトに参加するのでそこまでの金額は見込めないな。
あとどれくらい滞在するか分からないがあそこから学べることが多そうだ。
そう思いながら食事へ向かった。
ご覧いただきありがとうございました!
宜しければブックマーク、いいねお願いいたします。
毎日22時から23時半投稿予定!