閑話 灰燼の芸術家
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「お父さん。僕、今日のテスト100点取りました。」
「それがどうしたんだ。お前はこの私の息子だ。小学生レベルの問題で100点を取ったからなんだと言うんだ。昨日渡した中学3年生の問題集は終わらせたんだろうな。」
「いえ。あの問題はまだ僕には解けません。レベルが・・・」
その言葉を遮るようにして1回だけ机を激しく叩きつける。
顔を見ることはできなかったが怒りに満ちた顔をしているのは幼いながらの僕にでもわかった。
「なんのためにお前にパソコンやタブレットを買い与えたと思っているんだ。あれは遊び道具じゃないんだぞ。使い方を適切に把握して問題に関する解説を見つけろ。期限は1週間後だ。」
自分の言いたいことを言って満足したのか食事の途中にも関わらず席を立った。
もう用はないのなら俺は部屋に戻るということか。
「それと、お父さんはやめろ。お父様と言えと何回言えば分かるんだ。俺の教育まで疑われる。」
ただ吐き捨てるようにして立ち去る。
今思えば、あれが実の息子にする教育なのかと疑問に思うかもしれないが、その時は右も左も分からない子供。
親の力がなければ生きていくことの難しい僕に否定する考えなど浮かばなかった。
母親は、もうこの家にはいない。
他界したのではない。
自ら母親という肩書きを降りたのである。
それが憎いと思った時期も少なからずあった。
でも、徐々に母の行動が合理的だったのだと納得してしまうのだ。
あの環境で人として生きていくことはできない。だから、母は自己防衛として離婚という手段を選んだのだ。
もしかしたら、父に一言謝罪の言葉が聞けると思ったのだろう。
しかし、あの時の父の言葉は、
『金は後でゴチャゴチャ言われても面倒だ。200万くれてやる。その代わり、俺の名前は2度と口にするなよ。お前と結婚したのは、俺の人生においての唯一の汚点だった。あぁ、それと息子は俺が育てる。完璧に教育して俺の後継者にしないといけないからな。』
母は泣くでもなく、怒るでもなく。ただ、頷くばかりであった。
父がどうしてこんな性格になってしまったのか。
それには全くの興味もなかったが、経歴について調べることは何度もしていた。
社会的に抹殺するために、黒い噂が1つでも出れば。
そう考えたからだ。いや、本当にそうであればどれほど良かったのか。
そんな噂など1つもなかった。
会社でも経歴は完璧なエリートで、優秀な実績を納めている。
1人も悪く言う者はいなく、人は父を優秀な人材として崇めた。
だからこそ、余計に厳しい教育しかできない父を憎むことしかできない。
中学に入る頃には既に高校卒業レベルの問題を何なくこなせるようになってきた。
父の予想を超える範囲で成長を見せれば、さすがに褒めてくれる。
そんな彼の子供として淡い期待を抱いていた。
「お前にはこれから私の指導無しで学習を進めてもらう。カリキュラムも自ら考えろ。そして、中学卒業までに大学レベルの問題を解いてもらう。分かったら自室に戻って勉強を始めろ。」
この頃からだろうか。僕は喜怒哀楽を押し殺し始めた。
人生に一喜一憂することが無駄な時間だとそう思い始めたから。
きっと僕の一生は、父親が育て上げた優秀な息子として終えるのだろう。
それは父が死んでも終わることのない呪縛として。
そんなある日、俺は中学の同級生と夜遊びに出かけたことがあった。
学校内では人との交流を持っていた方だったので、遊びに誘われることも少なくなかった。
しかし、僕が友達を作っていた理由も学校生活で利用価値があるから。
結局、僕はあの人の血を確実に受け継いでいる。それを否定したくて、せめてもの抗いとして夜遊びに出かけた。
きっと父は怒り狂い叱りつけるのだろう。
そんなことは用意で想像できた。
そう言う人間だというのは嫌と言うほど見てきたから。
「ただいま。」
怒られることなど覚悟の上で、僕の想定が正しかったのか確かめるために声を掛けた。
「・・・パフォーマンスを最大限維持するために、息抜きも大事かもしれんが勉強は毎日しろ。以上だ。」
たったそれだけ。
夜遊びをしたことへの許しでもなく、普段の僕を労う意味でもない。
何をしようが勝手だが、ノルマは達成させろ。そう言うことだろう。
興味を失ったのか、自立させるところまで教育なのかは知り得ない。
ちょっとだけ無責任ではないかと思っただけ。
ただ、言われた通りに勉強をこなすだけ。
中学2年になった頃の父は、いよいよ家にすらあまり帰ってこなくなった。
監視の目が無くなった僕は、その歳で1人での生活に感動を覚える。
実は言うとこの頃には大学卒業レベルの問題は難なく解けていたので、勉強を頑張らなくても問題はなかった。
そのことを父が知ったら次のノルマを用意するだけだろうが、彼の教育は詰めが甘かった。
息子のことを知ろうと思わずに適切なデータを持っていないがために、僕と言う存在の能力をうまく把握しきれていなかった。
自分が父よりに有能に、そして父が自分より無能になっていくことに、絶望を覚える。
結局、どう転ぼうとも人生の逃げ道は用意されていなかった。
そんな日々が突如として終わる。
僕は、いつものように帰宅した。
すると、帰宅した家は見覚えのないものに変わっていた。
暗い夜を燃え盛る炎が照らすその光景が、僕の記憶には鮮明に残っている。
誰もがこの光景を見ようと携帯を片手に見物して、それを警察が抑えていた。
父も現場には既にいるようだ。
自分が作り上げてきたものが一夜にして消えたことによって、絶望した顔で両足から崩れ落ち泣いている。
それを見てどこからともなく湧き上がる感情。
そして、横の火事を見る。
「・・・美しい。」
不謹慎などと言うことは十分に理解していながらも、心の底からそう思えてしまった。
今まで自分を縛るようにして封印してきた、感情が動くことを確認して、一気に僕の人生が救われた気がする。
きっとこの時からだろう。僕が人の道から外れるようになったのは。
まずは、教科書や賞状を燃えしてみることにした。
あの火をもう1度だけ再現できると思ったから。
「違う。これじゃないんだ。あの時とは全く。」
やはり、実行するしかない。
なので、僕が持てるすべての技術や知能を集結させて放火の計画を立てた。
バレることのない完全犯罪。
それを考え終えた時点で僕は興奮が抑えきれなかった。
実行当日。
狙ったのは地元で最悪と名高い暴走族の家。
悪事をする者の家を狙うことによって、犯人を絞りづらくする狙いがあった。
そして、火をつけて燃え上がるの待ち続ける。
燃え上がる炎。やっと、あの感情を取り戻すことができる。
でも、いくら経っても心が動くことはなかった。
群衆に紛れて帰ろうとした時、家主が帰ってきたようで大声を出して暴れている。
「どこのどいつだ!!!俺の家に火つけたやつは!喧嘩してぇーなら正々堂々こいや!!!」
あぁ。理解した。
人の動揺や焦り、そして絶望。
その負の感情を含めて僕は。
「これが美しい。きっと僕はこれをやめられない。」
そう感じるのだ。
その後、僕”灰燼の芸術家”と呼ばれるまでには色々なことがあった。
ターゲットは、犯行の動機が不特定多数の人間にある犯罪者や道を外れた者の建物を狙った。
だから、人々は僕を救済者として扱うこともあった。
日本だけに留まらず、海外に移住してもその行動を止められなかった。
外国語を喋りながら絶望しているのでそれを理解できた時に、初めてあの人の教育に感謝することになった。
僕を止められる人間はいない。
誰にも止められない全能感は、さらに僕を高揚させる。
その結果、僕は捕まることになる。
どうして捕まったのかは簡単で、僕が狙いそうな家を予め各国で複数用意して罠を張っていたらしい。
そこまでの大掛かりの計画を立てられていたのは誤算だった。
迂闊に名前が広まってしまったのが、失敗だったのかもしれない。
しかし、心のどこかでは安心すらしていた。
この感情はこれ以上表に出さない方が良かったと思うから。
また、あの時同様に心の中は空っぽだ。
もしも、違う世界の僕がいたとしたら心を揺れ動かすほどの人間達と生きてみたいと切に願う。
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