第042話 業火の覚醒者
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ティキアから離れる日になった。
前日にグローブをしっかりと受けとったのでいつでもこの街から離れる準備をできている。
鍛冶屋のドワーフから説明を受けたように性能を確認したが申し分ない。
「それじゃあ、行くとするか。」
俺以外の人は済ませないといけない用事があるからと言って宿を既に出ていた。
先に会計は済ませてあるのでそのまま宿で出て、集合場所まで歩いていく。
その間の天候は出発を祝うかのように快晴で気持ちの良い風もあり気持ちがいい。
少し時間が余ってしまい、どこかへ散歩でもしようかと考える。
どこと言っても思いつく場所は少ない。
すると、とある場所が脳裏をよぎる。
ティキア騎士団本拠地
俺はそこにどうしても足を運びたくなった。
外からであれば誰にも見つかる可能性はないだろうし、何より1日とはいえ仲間だった3人の顔を見ておきたかった。
それに、アイツにも出会えるかもしれない。
ついてみると団員の掛け声が外まで響いている。
ランニングや剣術修行など、それぞれが自分の目標のために努力を惜しまない。
その中には、3人の姿もしっかり確認できる。
「もし、違う世界があったらアイツらと騎士団として生きるのも悪くないな。」
俺もあの中にいる世界線もあったのかもしれない。
そんなもしもの話を考えて戻ろうとしたその時だった。
風に乗って俺のとこまで届く、何かが焦げついた臭い。
その正体を俺はこの街に来てから嫌というほどに嗅いできた。
心なしか肌を焼くような熱さを感じる。
振り返るまでもなく火事が起こっていることに気付く。
一瞬、この状況について理解が追いつかない。
「なぜ、ティキア騎士団の本拠地が。」
人影が正門から出てくるのを感じる。
この場にいては俺が犯人と怪しまれてしまう。
そう思ったが隠れる場所もない。
「なぜって、それは今後の魔王討伐に邪魔になるから。それ以外にないと思いませんか?助手さん。」
聞いたことある声に、魔王討伐というキーワード。
そこに立っていたのは、上野誠一。
2人目の覚醒者は最も悪を嫌っていた人物だった。
「覚醒者としての気分はどうだ。お前も晴れて犯罪者としても自覚をもったということだ。」
「・・・気分ですか。不思議と悪くないですね。だって見てくださいよ。この絶えず燃える火の美しさを。」
「美しさなんてどこにもないぞ。ただ燃えているだけだ。作り上げてきたもの全てが。」
「見えるものは人それぞれ。一ノ瀬さんにはそう見えているのでしょう。僕には、この火とともに消えていく長い歴史が、見えない思い出が、そして、残された大切な物が。その全てが僕の感情を揺れ動かす。」
「要するに自己満足だろ。それにお前が1番嫌ってただろ覚醒者である大城を。」
「僕が覚醒したのは、1回目の火事の時からですよ。自分の犯罪に関することがトリガーになっている可能性が高い。ちゃんとその前までは嫌っていましたから。」
覚醒者になる条件が少しずつ見えてきた。
だとすると、いつどこで覚醒が起こってもおかしくはないということだ。
まだ、激しく燃える業火は途絶えることがない。
その火をうっとりと眺めて上野は言った。
「僕は、灰燼の芸術家と呼ばれた男。連続放火犯として数々の建物を放火してきました。僕は凶悪犯ということですね。だから、ちゃんと捕まえておいた方がいいですよ。助手さん。」
その場から立ち去る上野を俺はただ見届けることしかできなかった。
俺にはまだわからない、いや恐れていることがある。
覚醒者の心理状態だ。
今のところ、犯罪行為は起こしているものの仲間意識をいうのはあるように思える。
それはまだ、脅威になるようなことが起こっていないからとも考えれる。
もしもこの先で、自分の身か仲間の安全を問われた時に果たして仲間意識がどこまで作用するのか。
「俺は、誰を信用し誰を疑えばいい。この先に待っているのは悪か正義か。それとも全く別の何かなのか。」
その答えを教えてくれる者は誰もいない。
集合場所に戻る時にも俺は考え事が止まらなかった。
覚醒者のことを知っているのは3人。
俺と大城と上野
その中で2人が覚醒者になっている。
これの情報を俺だけが背負っていくことは荷が重すぎる。
「何か悩み事かい?勇者くん。」
イラ。彼が俺の前に姿を突如として現して。
黒い翼は光を浴びるこの時間でも闇を生み。人間ではありえない、牙や角。極め付けは尻尾まで生えているようだ。
姿は以前と全く違うがこいつがイラであることは間違いない。
「魔族ってところか。」
「へぇー。もう魔族のことまで知っているのか。それとも前の世界の記憶ってやつかい?」
前の世界。イラが言っているのは地球のこと。
そこで得た知識なのかと聞いているのか。
あの時にも聞けなかったが、どうしてこいつは俺達の情報に詳しいのか。
それを聞いて答えてくれるほど優しいやつではないだろう。
「何も言わなくてもいいさ。君を殺すことは諦めたから、何も情報がなくても問題はない。」
「それだと最初は殺すつもりだったという風に聞こえるが。」
「そうだよ。魔族は上下の関係が厳しいからね。でも、やめたんだよ。だってさ、するんだよ僕らと同じ負の匂いが。決して消すことのできない匂いが。」
「魔族と同類か。それは随分と偉業を成し遂げたもんだな。」
「君も本当は理解しているんだろ?なんなら教えてあげるよ。君が犯して罪は。」
何かを知っているようだが、そのまま信じるわけがない。
相手は敵とも言える相手だ。
信憑性に欠ける。
「その信じないって目。ゾクゾクしちゃうね。負の感情は蜜の味。やめらないよ。」
「要件は済んだか?俺達は、もう出発しないといけないからな。相手をしている暇はない。」
この場を今すぐにでも立ち去りたい。
魔族相手に勝ち目があるとは思えないからな。
それにいざとなれば、一切の躊躇いもなく攻撃してくるだろう。
「真偽の審判。君は見つけたみたいだね。」
今までの雰囲気が一変する。
声は先ほどまでと全く変わりのないトーンなのに、どこか冷たくて心の奥を締め付けられる。
そんな圧を感じる。
「だったらどうした?殺してでも奪ってみるか?」
俺にできる精一杯の強がりを見せる。
可能性としてはここで殺してでも奪ってくる可能性もある。
そして、俺が強がっているのも絶対に分かっているだろう。
「プッフフ!もういいのさ。僕らの計画は一部変更が入ったけど、順調に進んでいるからね。」
計画に必要なのが真偽の審判だったということか。
なんの計画か分からないが、魔族の考えることに良いことなどない。
それだけは分かるので渡さなくて済んだのはラッキーだ。
「ニペガピでは気をつけてね。僕より恐ろしいやつが待っているから。」
「待て!どこでその情報を。」
「僕らは世界に混沌を招き入れる種族。僕だけじゃない。この世界の至る所で待ち受けているから。それじゃあ、またどこかで会おう。最も魔族に近い人間くん。」
急に現れてはどこかへ消えていくイラ。
俺の悩みの種が消えることは永遠にないのだろうか。
しかし、得た情報もある。
次に行くニペガピでは確実に魔族がいるということだ。
備えておくに越したことはないだろう。
ただのお金稼ぎに行くと思ったのだけど、また何か大きな事件が待ち受けていそうだ。
集合場所には、俺以外の人間がいるのを確認できる。
その中にはもちろん、上野もいる。
「遅かったですね。早く出発しましょう。」
「そうよね。今、どこかで火事が起こったらしくて騎士団は大騒ぎらしいから。」
「ワシらに疑いをかけられたらたまったもんじゃないよ。」
上野は前と同様に接し方を変えるつもりはないようだ。
この街を出る時にもう1度だけ街の方を振り返る。
街の外からでも見える業火の火柱はいつまでも消えることなく、俺達のことを見届けるてくれるのだった。
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