第036話 真なる正義を求めて
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集められた会議室では魔道具によるプロジェクターのようなもので説明を受けている。
「まずは、入団おめでとう。君達はあの10人の中から選べれた5人だ。まずはそのことを誇っていいだろう。」
「言葉が悪くて申し訳ないですが、これでは強い者と強い者が戦い、弱い者と弱い者が戦えば公平性に掛けた試験なのでは?」
俺は当然の質問を投げかける。
俺と戦ったやつは確かに冷静さに欠けていたが、それでもこの中にいるメンバーに実力が劣っているとは思えない。
「相手の力量を見定めるのもまた実力。そうは思わないか。」
「・・・失礼しました。それもそうですね。」
そう言うことにしているなら俺が言うことはこれ以上ないな。
質問を続ければある程度、騎士団に採用される人物を探れると思ったが当てが外れたな。
「少しネガティブな考えをする人間もいるようだが、あの様ないつもの実力を発揮できないような場所でも勝ちを掴みとることができたという経験はいずれきっと役に立つだろう。私達は市民を守るため必ず勝者でなければならない。」
活動理念は市民の為。
聞こえは良いかもしれないが全てを市民のためだと言い張れば良いということではない。
その中では民衆という名の正義の下で行ってきた暴挙もあるかもしれない。
今日を含めて3日間。その間でボロが出るとは思えない。
しかし、やらないければいけない。
特に、火事の事件の犯人をここまで早い段階で導き出したのは不可解だ。
もし、間違った推理で誰かが牢屋に入ることになれば悲劇としか言えない。
それに加えて、2回目の事件では俺達8人の中の2人が目撃されている。
考え過ぎかもしれないが俺達が疑われている可能性も0ではない。
「最近は物騒なことが連日起こっている。窃盗が1件、火事が2件、ドラゴンの出現も。これで安心して眠れない市民もいる。これは我々の大きな失態とも言えるだろう。だから、我々は前々から進めていた・・・。」
「合格者がどんな者かと近くで見にきたら、君は1日目の新入団員に何を話そうとしているのだい。」
すると話をしていた騎士団員が席を立ち忠誠を近くポーズをする。
俺達もそれを見よう見真似で後に続く。
遮られた話に少し興味がある。
俺の予想では、戦争でも始めようとしているのではないかと思っている。
しかし、本当のことを今は聞けそうにないな。
入ってきた人物は女性。
髪は長く、身長は高い。そして、目鼻も整っている。
今日初めて入団試験を受けたはずの奴らも知っているようなので。騎士団の少ない女性として顔が知れているのかも。
「大変申し訳ないことをいたしました。騎士団長様。」
「今後、気をつければいい。それに君達にも悪いことをしたね。顔をあげなさい。」
まさか、団長は女性だったのか。
勝手なイメージだけど、ゴリゴリのマッチョおじさんとばかり思っていた。
そんなことを考えながら団長の方を見ていると視線が合う。
「君が最初にフィールドに上がった入隊希望者か・・。」
「はい。そうです。誰かが先陣を切る必要があると判断しました。」
「ハハハッ!始めっから作っていたかのような模範回答だね。今年はどんなやかと思った面白い奴だ。でも、それが本当の理由じゃないことくらい分かっているぞ。」
いきなり俺が潜入目的だということがバレたか。
いや、そんなことはありえない。試験中も怪しい動きをしたわけではないし、今の発言に失言があったとは思えない。
なので、ここはどういうことか分からないフリをして見せる。
「とぼけなくてもいいさ。他の入隊希望者のことを思って先陣を切った男があんな挑発をするわけがないだろ。本当の理由は自分の腕に自信があったから。そうだろ。」
「俺があの時何を考えていたのかは、団長様の推察によって変わりますね。」
「貴様、少し無礼なのではないか。」
そう言うと詰め寄ってこようとする団員達。
それを片手を横に広げて阻止する。
「実に面白いう奴じゃないか。忠誠心があるように見せかけて自分本心までは見せない。そんなミステリアスな男も悪くない。せいぜい、生き残れるように頑張れよ。」
無礼な態度をとったが意外にも寛大な対応をしてくれる。
上に嫌われなかっただけ幸運だったと考えよう。
俺達を見て満足したのか団長はこの部屋から離れようとする。
するとその瞬間に、あの女性入隊希望者が声を出す。
その声は緊張からか震えまじりなっている。
「わ、私は騎士団長様に憧れて入団を希望しました!あなたの背中を追い求めてきました!私もあなたのようになれるでしょうか?」
「君の質問は実に可愛くて、私への尊敬を感じる。そして、悲しい質問だ。君は、私の背中を見ているだけで満足かい?私としてはいつか隣を歩くぐらいの気概が欲しいのだけど。どうかな?」
「はい!!!いつか必ずあなた様の隣に立ちます!」
「簡単ではないが自分で言葉として出したからには実行してもらうよ。」
こちらの顔を見ることなく前に進みながら手だけ振ってこの場を後にする。
団長が帰った後も淡々と騎士団の説明がなされる。
正直、覚えても使わないことだけらだったが、頭に入れる程度には聞き流している。
でも、高校時代の授業を受けているような感じがして嫌だな。
一瞬だけ他の人の様子を見るとその顔つきは真剣だ。
これから自分の抱いていた夢に向かっていくのだから当たり前ではある。
そんな中に俺が混じってしまっているのは申し訳ない気持ちにもなるが、こちらも事情があるので仕方ない。
色々と考えごとをしていると説明は終わっていたようだ。
「これで説明は以上だ。今日説明したことは、マニュアルとして配るので安心していいぞ。それでは、今から20分間の休憩とする。休憩後はここで待機しておくように。」
説明してくれていた団員が部屋を出ていくとみんな緊張の糸が取れたようでだらけ初めて。
机に突っ伏して寝ようとする者、立って背伸びをする者と様々だ。
俺もゆっくりしようとしたが、俺に話掛けてくる人物に邪魔をされる。
さっきから目立っている実力派の女性だ。
何か抗議したいような顔で、俺の前に仁王立ちしている。
「何かようですか?」
敬語はあまり好きではないので使いたくは無いのだが、ここで無視を続けるわけにはいかない。
それに普通なら用がある方が話しかけてくるべきなのだろうけど、この少女は一切喋ろうとはしない。
「あなた、クルン様に少し気に入られているからって調子に乗らないでよ。」
「クルン?」
「騎士団長様よ!そんなことも知らないでここの入団試験を受けに来たの。そのうちいなくなりそうね。」
あの人はクルンと言うのか。
情報としてはあまり価値のあるものではないが、こいつが勝手提供してくれたからありがたい。」
「で、挑発でもしに来たのですか?」
「あなたじゃないからしないわよ。それにその取ってつけたような敬語やめてくれない。気持ち悪い。覚えているんだからあなたが煽っていた時に敬語使っていなかったことくらい。」
「嫌いなら俺に絡むのやめたらどうだ?」
「全部、全部気に入らない。だから、頼むのよ私とあなた戦って負けた方がここを去る試験をしてくれって。」
勘弁してほしい。ここまで来てあんな長い説明だけ受けて帰ってきましたとかだと冗談では済まされない。
「なるほどな。ここの方針が気に食わないと直接騎士団に申し立てる訳か。肝の座った奴だって噂になるだろうな。それに俺には何のメリットもないことする訳ないだろ。大人なら損得を覚えた方がいい。」
「・・・クッ!あなた、それでも騎士を志す者なの!?人を馬鹿にした態度気に食わないわ。」
「お前はどう思おうと勝手だが、自分の感情に振り回されているようじゃこの先が不安だな。それに最初の決闘でフィールドに上がって来なかった時点で、お前は俺と同じ土俵にすら立ててないぞ。」
怒りを通り越して呆れたという表情になる女。
これ以上何も言ってこないならそれの方がありがたい。
休憩時間ももうすぐ終わりそうだ。
結局、1つも休むことが出来なかったことは後悔しようだ。
いきなり、仕事とか始まらないといいのだが。
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