第031話 鍛冶屋は変人
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素材を入手したら普通はどうするだろうか。
売ってお金にするのが一般的か。
それとも何か他のことに使うのか。
俺は苦労して手に入れたドラゴンの素材を売るのは持ったない気がした。
なので選択肢は後者。
鍛冶屋があるのは前々から知っていたのでそれを利用することにしよう。
一旦、夕方の自由な時間を使って俺は鍛冶屋に向かう。
なぜだか、レインも付いてくるというのだ。
別に嫌なわけではないが一応理由を聞くと、
「ドラゴンの装備なんて滅多に見れるものじゃないだろ。それに、イチノセお前は信用しているが他のやつらそうじゃない。契約を結んでないからな。」
他の奴らと仲良くするつもりはないらしい。そんな意思表示に俺はため息をつく。
「どう思うのも勝手だが、せめて表にはそんな態度出すなよ。」
「私がそんな簡単に思っていることを態度に出すと思っているのか。心理戦の1つくらい造作もない。嘘と真実を見抜くのは私の得意分野だからな。」
それはそのペンダントを持っているからだろ。
と言いたくもなったがそんなことは言わないでおく。
勝手に機嫌でも損ねられて暴れ出したら面倒だ。
それにそうなって人目につけば、あの冒険者が俺達を見つけ出すかもしれない。
「とりあえずは、店まで移動しよう。」
歩く道中はドラゴンの話で持ちきりだ。
もう街中に噂が広まっているのか。
確かにドラゴンの肉を街に卸すと言っていたな。
そこからドラゴンの討伐を耳にした者や勘付いた者は大勢いるだろな。
屋台から香る匂いはいつもの何倍も香ばしく食欲を掻き立てる。
「そこのお兄ちゃん!ドラゴンの肉あるよ!滅多に手に入らないから食べるしかないよ!」
元気な客引きにまんまと誘導されてふらふらと屋台の方へ向かう。
目の前になるとその匂いでお腹がなるのを止められない。
これがドラゴンの肉。
よく見ると恐らくこの屋台の店主が作り上げたお手製の秘伝のタレで美しく着飾った肉が。
ステーキなんかにしてなるべく素材の味を楽しみたいと思ったけど、これもこれで悪くない。
「どうだいお兄ちゃん1本買ってくかい?」
ここでお金を使っても良かったが自分のドラゴン肉と交換してもらえないか交渉してみる。
俺がドラゴンの肉を持っているのと武器を所持していることで1つの結論に至ったらしく、驚きが隠せないようだ。
「まさか!あんたもドラゴン狩りに参加していたのか!よっしゃ、その肉は自分で使いな!十分稼がせてもらってる礼だ。1本持ってきな!」
そういって気前良く、串を差し出してくる。
しかし、レインにも食べさせてあげたいので肉を少し分けて2本もらうことにした。
もらった串の肉の量より明らかに多いので店主も困惑していたが、折れてくれてもらってくれたようだ。
「ほらよ。ドラゴン肉の串焼きだ。」
「いいのか私も貰っても。」
「遠慮するな。こう言う時はありがとうって言っておけばいいんだよ。」
「そうか。・・・ありがとう。」
レインと一緒に食べると2人で目を見合わせて驚く。
こんなに溶け出す肉の旨みと濃厚なまでに濃縮された肉汁が、見た目に反してさっぱりと爽やかな柑橘系の混ざったタレにマッチして食べる手が止まらない。
こんなに美味しいのなら料理スキルを試す良い機会になるのかもしれない。
美味しい串に夢中になり言葉を一言も発さないまま完食する。
「美味かったな。少し寄り道してしまったけど、鍛冶屋に行こう。」
「あれ、また食べられるかなぁ。」
レインはすっかり串焼きの虜になっているようだ。
色々と予定外のことはあったが、この街で俺が1番来たかった目的地の鍛冶屋に到着した。
中に入ると1人の男がぽつり。
身長はそこまで高くないように思える。
「なんだてめぇー。人の店の前でウロウロしてると思ったら今度は俺のことを睨みやがって、喧嘩でもしてーのか?」
あまりの喧嘩腰に俺もびっくりする。
ここまで強気に接客して経営は上手くいっているのだろうか。
「もしかしてだが、お前はドワーフか?」
この身体的特徴には、地球の知識で心当たりがある。
ドワーフは主に鍛治や炭鉱夫として書かれていたイメージだ。
その常識が当てはまるのは分からないがその可能性は低くないだろう。
「俺の種族を1発で当てるたぁー。ちょっとは知識があるみてぇーだな。何の素材持って来たんだ。見せてみろ。」
「まだ何も言ってないぞ。と言いたいが、ここに来た理由なんて全員同じか。」
素材を持ってきたことを当てられて驚いたが、大体ここですることは1つか。
いや、依頼してから素材を集める可能性もあるからやはり洞察力に長けているのか。
そんな考察をしながらも、アイテムバッグの中からドラゴンの素材を取り出す。
「おい!まさか、それはファイアードラゴの爪と鱗じゃねーか!一体どこでそれを。」
「俺が倒したんだ。まぁ、1人で倒したんじゃないけどな。この火粉吹きのファイアードラゴの素材で何が作れる?」
「今、なんていった坊主。」
「だから、何が作れるんだって聞いたんだ。」
「そこじゃねーよ。こいつ、火粉吹きのって言ったか。まさかダブルネームドの魔物か!」
勝手に興奮しているところを見るに、魔物の名前に言葉が付随しているのはダブルネームドと呼ばれて希少種の魔物なのかもしれない。
「で、作ってくれるのか。」
「待て、いくらそれが滅多にお目に掛かれない貴重な素材だからと言って、小僧なんかに俺・・・その腰に付けている刀!進化刀じゃねーか!どこでそんなもんゲットしたんだ!これは死ぬまでに拝めるかどうかの代物だぞ!」
「話が右往左往しすぎだ。興奮するのも良いが客の質問に答えるのが先だろ。」
するとその言葉に冷静さを取り戻したのか、1度椅子に座り直して素材をよく観察しだした。
口には何もしなかったものの、これは作ってくれると受け取ってもいいのだろう。
この後、数分間は何も喋らなかった。
俺もその間は、暇なので恐らくこのドワーフが作ったであろう武器や防具を見て回った。
色々と変なやつではあるが、職人としての腕は確かのようだ。
それは素人目からでも分かるほどに精巧に作られていることからも理解できる。
「こっちに戻ってこい坊主。」
やっと終わったようでカウンターに呼び戻される。
「先に言うとこれだけの素材じゃ作れるものは限られてくる。何せ、牙と鱗だけだ。こっちから素材を出したとしても作れるもんは少ねぇーだろうよ。」
「もっと素材を集めてから出直せってことか。結構待ったにしてはひどい仕打ちだな。」
「話は最後まで聞けと親に教わらなかったのか。」
「あるんだな。何か作れるものが。」
「あぁ。鱗は硬くで加工が難しいが俺の技術があれば無理なことは無い、そこに牙を入れることで大抵の刃なら受け止めれるグローブが作れるだろうよ。」
その耐久性がどこまでなのか分からないのに受け止める勇気はないだろ普通は。
もし、相手の刀の切れ味の方が上だったら手とはおさらばすることになるぞ。
「ただ、耐久力があるってだけじゃないんだろ?」
ドラゴンの素材を使っておきながらそれだけの機能だとは思えないからな。
「これだけでも十分すごいだろうが。」
「本気でそれを言っているなら帰るか。素材売った金で防具買った方が良いし。」
「耐火性能。それに加えて身体強化。あとは、暗視が付く。」
「結構付いてるな。どれくらいで作れそうだ。」
「3日。そのあとで受け取りに来い。」
名前を書いた紙を渡して店を出た。
俺には見せにいた時にずっと気になっていたことがあった。
「なんでレインは黙ったまんまだったんだ。」
「ちょっと色々な装備に夢中になっていてな。私の容姿は幼いだろ。ああ言ったタイプは私が口を挟むのを嫌うからな。大人しくしている方がスムーズに話が進んだだろ。」
そう言うところには気配りができるんだよな。
見た目と反して大人の行動を取るレインに感心しながらも、日がすっかりと落ちきっていたので宿に戻る。
早めに戻らないとみんなが心配しだすだろう。
しかし、宿に帰る道中でまたしても真っ赤な炎に染まる民家を見つけた。
昨日の事件はまだ終わっていないことを告げるように。
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