第030話 ドラゴン対人間
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「発砲よーーーい!!!」
その掛け声と共に準備が進められていく大砲が数台。
これはいつも空砲を鳴らしているものの正体なのだろうか。
流石のドラゴンであってもこれを喰らえば飛ぶことは出来なくなる。
ここにいる全員がそう思っていたのでないだろうか。
しかし、その思いは簡単に裏切られることになる。
「グギャオオオオオーーーーーー!」
ドラゴンの口からは眩しいほどの光を帯びた灼熱の球が作り出されていく。
これが【火魔法】だとすると人間の魔法の威力とは大違いだろう。
大砲の球は全て高温によって溶かされてしまう。
それはティキア騎士団にとって想定の範囲内だったのだろうか。
冷静に指揮を飛ばしているようすが窺える。
かなり統率が取れていて普段からこういった事態を想定していることがわかる。
優秀な軍隊には必ず優秀な司令塔が存在する。
きっとあの指揮を取っている人間もかなりの経験と訓練を積んできたことは、この数分を見ていれば間違いないと確信出来るな。
そんなことを考えているとドラゴンは口から広範囲に渡って放つ炎の息を吐き出した。
これは人間には恐らく使えないであろう【ドラゴンブレス・火】だろうな。
「俺達も攻撃は仕掛けるぞ。遠距離が使えるものは攻撃を試みてくれ!」
こっちの指揮を最初に取り出したのは大城。
このままじゃ全滅の可能性も見えて来た中でのこの一言にそれぞれが自分の役割を思いだす。
「大城、あのドラゴンの攻撃は避けれるか。」
「愚問だな。一ノ瀬お前は。」
「あいにく、俺は普通の一般人だ。死ぬかもしれないから多めにヘイト稼いでくれよ。」
俺と大城が勢いよくドラゴンの前に飛び出していく。
ドラゴンも遠くにいる敵よりも目の前にいる敵を排除することが優先だと思ったのか、攻撃パターンを大きく変化させてくる。
爪や牙を使った近接技ばかりを使っており、遠距離攻撃を避けなければいけないのでドラゴンの動きはより俊敏になっていく。
「覚醒者がどうなるのか。お前はまだ知らないんだったな一ノ瀬。これが俺に与えられたスキル【幻想の豪雪】」
空は先ほどまでの快晴が嘘だったかのように辺りを暗く染め上げていく。
そして、降り始める雪。
これを誰が作り上げたかなど言うまでもないだろう。
天候さえも変える力を持っているのかもしれない。
そう考えると今自分の中に隠されているスキルがどんなものなのかも気になる。
「グオオオオーーーー!!!」
雪に触れた瞬間に皮膚が凍り始めるドラゴン。
冒険者もティキア騎士団も何が起こっているのか理解が追いついていないようだ。
それも無理はないだろう。
今まであれほど暴れていたドラゴンがスキル1つでこうも身動きが取れなくなるとは誰も予想など出来るはずもない結果。
「1番良いところはもらっていくぞ。」
「好きにしろ。でも、やるなら早くした方が良いぞ。俺もこのスキルは使いこなせていない。持って数秒といったとこだろうからな。」
「おいおい!そんなことはもっと早く言えっての!いくぞ、黒鉄!」
氷塊によって動けなくなっていたドラゴンは自分の身体を熱くさせることに全て溶かしていく。
俺の攻撃が入るのが先はそれともドラゴンが動き出すのが先かの勝負。
他の誰もがこの緊張の一瞬に介入することが出来ない。
ただ、固唾を吞んで願うばかりである。
「まじかよ。あの一瞬で氷を溶かしやがった。まだ少し距離があるぞ。」
この数秒の差が俺に取っての命取りになることとなる。
口からブレスを吐き出す構えになっているドラゴン。
もちろん、狙う先にいるのは俺だ。
あの攻撃は避けようにも広範囲に渡って攻撃されるため難しいと言えるだろう。
あ、やばい。
もうほぼ口から漏れ出してる。このまま直撃ルートへ直行しそうだ。
「【光魔法】”ライト”」
急に現れた光の玉はドラゴンの前で発光する。
その光で怯んだのかドラゴンは狙いを定めることが出来ずに不発に終わってしまう。
「ぶった斬る!!!」
その瞬間を俺は見逃さなかった。
怖いと言う感情ももしかしたらあったかもしれない。
しかし、ここで俺が攻撃を緩めたら結局は死に至る。
ならば俺に出来ることはただ突き進むのみ。
背後に回り一撃を放つ。
しかし、鱗はあまりに硬く一切の攻撃を通さない。
俺の攻撃を嫌い暴れまくるドラゴン。
地を爪や尾で削り地形は最初からは想像できないほどに変わり果てている。
「ここなら攻撃通ってくれよ!」
今度の狙いは翼の付け根。
背中などには傷らしきものがあまり見当たらないが翼には多くの傷がある。
きっと翼の硬度はそこまで高くないはずだ。
あとは神に祈ることしかできない。
「グギャーーース!!!」
案の定、簡単にとまではいかないが刃を通すことが出来る。
このまま痛みで暴れているドラゴンの背中に乗っているのは危険だ。
力一杯に押し込んで翼をもぎ取ることに成功した。
片方はまだ残っているものの片方だけではバランスが取れずに上手く飛べないだろう。
「す、すげーぞあいつら。」
どこかの冒険者がそう呟いたのは気のせいではないだろう。
「こいつの行動力は低下させた。後は任せていいよな。」
「冒険者などと甘く見ていたが、どうやらゴミの中には宝石というのは混ざっているようだな。遅れを取るなよティキア騎士団!!!魔法が使える者は準備を!それ以外はやつの攻撃が他にいかないようにしろ!」
ここまで何も活躍ができていなかった騎士団も動き出す。
そして、司令官の挑発に感化された冒険者達も魔法などの遠距離攻撃を一斉に仕掛ける。
翼を失ったドラゴンは飛ぼうにも飛べず、這って逃げるにも地形は変わり果て動きにくい。
もはや、ここまで来ればそこらの魔物と大差ない。
無惨にも死にゆくドラゴンを見て何も言えないような気持ちになる。
これほどまでに強かった個体も圧倒的な数の前には無力なのかと。
「一応、感謝を述べよう。間違いなくこのドラゴンの討伐において最も活躍したのはその刀を持った男だからな。我々は、街を守れればそれでいいからドラゴンの素材は冒険者と話し合ってどうするか決めろ。ドラゴンの素材は価値が高いからな欲しがるやつは多いだろう。」
「いや、待てよ。俺達だってこの戦いでないも出来なかったことくらい理解している。それなのに素材だけもらおうなんて虫のいいこと言わねーよ。あんたら7人が全部もらってくれ。」
「そっちで話を進められても困る。こっちも持ち帰れる限界があるだろうからな。先に持って帰る素材を選ばせてくれればいい。」
俺は話合いの末、先に素材を選べることになったのをみんなに伝える。
「せっかくなら全部貰えばよかったのに。まぁ、アタシはほとんど何もしてないから何も言えないけど。」
「わ、私も選んで良いですか。ないもしてないのに。」
「ほら!行こうよ小原ちゃん!」
「ワシも行こうかな。興味があるものばかりだ。」
その後を追うようにして無言でついていく大城と上野。
他の冒険者がいいと言ったのだから遠慮はいらないだろう。
「で、イチノセ。お前は行かなくていいのか。」
「お前。・・・いや、行こう。」
俺は言おうと思ったことを胸にしまう。
ここで言うべきではないと判断したからだ。
他の後を追って素材を回収する。
鱗少しと貴重な爪、あと肉を1ブロック。本当は牙も欲しいが欲張るとしてもアイテムバッグの容量的に入らない。
「まさか、こんなことになるなんて考えもしなかったですね。」
「ドラゴンではあるがあれはまだ子供だ。それでかなり手こずったのだから成体は厄災に近いだろうな。」
ある程度素材を回収した後、冒険者も解体に動く。
特に、ドラゴンの肉は絶品で今日の夜にでも街に出回るだろうから食べて欲しいとのこと。
そんなにおすすめされてしまったら食べないわけにはいかなくなったな。
騎士団が土魔法で平原を整地しているのを見送りながら帰路につく。
火事が発生したこと。火魔法を操るドラゴンを発見したこと。
最近は何かと火に関わることが多い。これはただの偶然なのか。
それとも裏で糸を引く何者かがいるのか。
それはきっと時が進めば分かるのだろう。
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