第029話 残された跡
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あの火がまだ俺の目の前で燃えているかのように鮮明に思い出せる。
昨日の火事
それが現実だったということを突きつけるように外の景色は真っ黒な焦げ跡に覆われている。
もう何時間も経ったと言うのに見物人が後を絶えない。
火事のことも気になってしまうのは仕方ないが、今は依頼をこなすことに集中しよう。
このまま何もせずに過ごすということは不可能だ。
王都を後にしたので、衣食住に関して手厚いサポートは無くなってしまった。
それに加えてこちらは人数が多い。
油断していれば、3日と持たずに食事にありつけなくなる。
どうやらこの部屋で起きるのは俺が最後らしい。
部屋には他の3人が起きた形跡だかがあり、下の階では食事をしている客の声でいっぱいだ。
眠い衝動を抑えながら少し服装や髪を整えて、下に降りる。
案の定、俺以外は全員集まっているようだ。
「遅かったなイチノセ。もうみんな食事をしているぞ。」
「だらしない顔してるわね。シャキッとしなさい。シャキッと。」
「それは出来ない相談だ。眠気っていうのは逆らえるものじゃないだろ。」
そう言いながらもあくびが止まらない。
他の人も寝た時間は変わらないはずなのに、どうしてこうも違うのだろうか。
「全員揃ったところで僕達のやるべきことを確認しましょう。」
今日の会議が早速始まった。
1番問題に上がったのは、やはり金策。
食事をしないというわけにはいかないので、ここはマストだろう。
問題はここにどれだけ人数をかけるか。
他にやることは、秘宝探し、ティキア団と不景気の謎、レインのペンダント。
1番優先度の低いティキア団周りのことは放っておくとしても、人手は足りてなさそうだ。
「大人しく依頼をこなすことに1日使うべきだ。俺達もかなりの実力がついてきた。数班に分かれれば作業効率も上がるだろう。」
大城の意見が考えられる中でベストな形かもしれない。
変に人数を分けても効率が悪ければ結果はついてこない。
何もなかったのと変わらない。なんてことにだけはしたくないからな。
食事を済ませた俺達は手際良く装備を身につけてギルドへ出発することにした。
すれ違う人は皆、昨日火事ばかりを話題にしている。
噂話が好きな人々にとって昨日の事件は話のネタの1つすぎないのか。
あれで悲しむ者達などお構いなしといった様子だ。
現に被害者は、焼け焦げた店の前から1歩も動くことが出来ず、その場で項垂れている様子だった。
気分の上がらないまま、ギルドに到着した。
中が混んでいたら全員で入ると動きにくいので何人かは外で待機しておくようにと俺が伝える。
本当は混んでるとか混んでいないとかは関係のある話ではない。
昨日の冒険者がいて、レインとバッタリ鉢合わせしてしまうので防ぐためだ。
昨日はたまたまどうにかなったが、次は手加減しないぞと警告してきたからな。
こちらが冒険者と知っているのでギルドで見張っている可能性は捨てられない。
その予想は、嬉しいことに外れていたようだ。
どれだけ辺りを見渡しても彼らの姿を見えない。
そして、ギルドを利用している冒険者も少ないので受付もスムーズに進む。
今日の依頼は、
・ローウィングバードが怖い
説明:街を出た平原に最近ローウィングバードが大量発生しているの。あいつら羽があるくせに低いところしか飛べないけど、その分移動速度がかなり速いから怖いのよね。子供も平原に出て遊ぶようになる歳だし、安心できるように出来るだけ狩ってね。
報酬:ギルド指定害獣のためギルドから 1匹 :400ゴールド
個人の依頼でもギルドから報酬が出る場合があるのか。
確かに、何匹も狩ってこられて金を要求されても一個人では支払える限界があるからな。
なんらかの条件で審査が通ればギルドが報酬を負担してくれるのだろう。
冒険者からしてみれば、どちらが払おうと変わりはないので気になるところではないけど。
受ける依頼は決めたが他の依頼も簡単に目を通すとギルドが負担しているものは何件か見受けられる。
ギルドはどうしてそれだけの金を持っているのだろうか。
お金は払うことはあっても回収する方法があるのだろうか。
関係ないことではあるが少し気になってしまった。
外で待っている人と合流してすぐに平原へと向かう。
井村の魔物図鑑でどういう生き物なのか説明を受けてイメージを固めておく。
そして、平原に着くと一昨日とは全く違う光景になっている。
あっちの世界で見たカラスの大群のようにローウィングバードが群れている。
こっちは1人も広範囲に攻撃できるスキルを持っている人はいないはずなので手間がかかりそうだ。
群れの一体がこちらに気付く。
距離にしたは200mほど離れているのによく気がついたものだ。
そう関心していると群れはどんどんこっちに向かってくる。
スピードはかなり早く時速40〜50kmくらいだろうか。
こんなものに体当たりされたら致命傷では済まないぞ。
そう思いながらも応戦する準備を進める。
まずは、群れを分断させる。
これは俺の役目なのでしっかりとこなそう。
「【土魔法】”マッドウォール”」
縦に作られた土壁。
あれほど勢いよくこちらに向かっていたのだから数匹はぶつかっていてもおかしくないと思ったが、全部綺麗に左右に分かれて向かってくる。
俺もこれで役目が終わりではなく、右の方へ加勢に行く。
次は、遠距離攻撃部隊が一斉に数を減らす時間だ。
ここが1番重要でどれだけ数を減らせるかが受け取る報酬と直結してくる。
しかし、心配はいらないようだ。
みんな次々と魔物を倒していく。これだけ倒せばかなりの稼ぎになるのは確定していそうだな。
最後に取りこぼした数匹を大城と俺で仕留める。
近接も任されるようになって来たので今度から【剣術】を取得するのも悪くないだろう。
鞘に手をかける。一瞬のズレが命取りになる。
「覚悟はいいか一ノ瀬。しっかり決めろよ。」
「あんたもな大城。」
「つくづく生意気だ。」
「「はぁああああああ!!!」」
あれだけスピードを出していたなら、こちらが動かずとも刃に当てるだけで終わる。
大城の方は素手だと言うのに、あの勢いと軽々と受け止めて一撃を放つ。
「どう?上手く行った?」
「こっちの方は素材になりそうなもの回収しておきましたよ!」
「俺達の方も問題はない。」
結果としては順調。
30匹ぐらい1回目で倒すことができたのだから文句はない。
不明瞭な素材は置いておいて、確実は討伐報酬だけで考えても12000ゴールド。
まだまだ、群れは見えるのでこれを繰り返せばかなりの金額が稼げそうだ。
「よし、次へ行きましょう。」
「ま、ま、待ってください!あれなんですか!」
慌てた様子の小原が指した方向には大きな翼を広げた怪物がそこにいた。
そいつが現れたせいか全てのローウィングバードはどこかへ飛んで行ってしまった。
「ローウィングバードの親玉って訳ではなさそうね。」
「何方かと言えば、ドラゴンだろ。」
「そう、あれはドラゴン。ドラゴン種の中ではそこまで強力な種類ではないけど倒すのは苦労する。」
レインがあのドラゴンを見るなり、そう説明してくれる。
どう見ても、今の俺達では対処することが出来ないぞ。
念の為、俺は【鑑定】を使っておく。
あらかじめスキルを知っておけば簡単に死ぬことはないだろう。
名前:火粉吹きのファイアードラゴ
称号:火龍の幼体
スキル:【火魔法】Lv7 【飛行】Lv6 【ドラゴンブレス・火】Lv7
【爪攻撃】Lv4 【牙攻撃】Lv4 【逆鱗】Lv1 【咆哮】Lv6
これだけ見ても今までも魔物と格が違う。
「助太刀に来たぞ!!!冒険者!」
そこに現れたのはティキア騎士団だった。
街に被害が起こりそうな時はしっかりと対処する。
冒険者には厳しいが今は心強い限りだ。
その後ろには冒険者も何組か見える。
「あのドラゴンは近年、街の近くに何度か現れて被害を出している。それも今日で終わりだ。せいぜい足を引っ張るなよ冒険者共!!!」
こうして先陣を切ったティキア騎士団。
どれだけの実力か楽しみにさせてもらおう。
緊張の1戦であるドラゴン狩りが始まった。
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