第028話 静かな火
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俺が宿屋に帰ると他の6人は既に戻って来たようだ。
色々と話し込んでいたので、外はすっかり暗くなっていたし1番最後でもおかしくはない。
ただ、遅くなったからと言ってここまで視線を集めることはないだろう。
その原因は他の要素にあると言える。
例えば、俺の横にいる赤い長髪の少女が不思議でたまらないとか。
「ちょっといいですか。一ノ瀬さん。」
「なんだ?」
「なんだじゃないでしょ!なんだじゃ!その子誰なんですか。」
上野なりの気遣いなのかある程度レインと距離を取ってから、俺達だけに聞こえる小さな声で話始めた。
「まぁ、その拾った。帰る場所がないんだと。そんな可哀想な子を置いていくのか?」
「え!親御さんがいないんですか!そんなの可哀想ですよ!私達で面倒見てあげましょ。」
いち早く反応したのは、狙い通り清水だった。
違和感のない設定の中でレインをパーティに参加させるのは、これが1番だと考えた。
それに、もし他の5人が反対しても清水はレインをほっとけないだろうからな。
そうなれば、仮に1でも意思の強い1に負けた5人の賛同の声も得ることができる。
結局は、全員が最初から賛成してくれたけど。
「で、自己紹介くらしてくれないの?」
「まずは自分から自己紹介するべきだ。おばさん。」
「大城。その手を離して殴りにいけない!」
「落ち着け。言い方に多少の棘を感じたが言っていることは正しい。」
その様子を見てケラケラと笑っている様子のレイン。
人のことを揶揄うのが好きなようだが、あまり遊びすぎないでもらいたい。
この状態が続けば、間違いなくレインをこの場に連れて来た俺の責任になる。
「アタシの名前は宮武里帆よ。おばさんじゃなくて、お姉さんと呼びなさい。」
「ごめんなさい。宮武お姉ちゃん。」
さっきまでとは一変して、甘えた猫撫で声で宮武のことをお姉ちゃんと呼ぶレイン。
それを聞いて満足したのか、何度も頷いて喜びを噛み締めている。
「これでいいんだろ?」
俺の耳元でそう囁いた。
まるで、お前の立場が悪くならないようにしてやったぞと言わんばかりだが、元を辿れば自分から蒔いた種なのだからマッチポンプも甚だしい。
その後も全員と自己紹介を済ませていよいよ質問攻めといったところか。
この質問をどれだけ違和感を感じさせずに誤魔化せるのかで今後の動きやすさが変わる。
「で、どこから来たのかくらい教えてくれても良いのよね?」
「分からない。思い出せない。」
「それってつまり記憶喪失をいうことですか。」
「でも、名前覚えてたじゃない。」
「記憶喪失にも様々な例があります。名前を覚えていたのは恐らく自分の意識の中に強く刻まれているものだからかもしれませんね。意識しなくても呼吸やまばたきが出来るのと理屈は同じですね。」
簡単そうに症状の説明をこなす上野に関心している様子のレイン。
これだけ頭の切れる人間がいれば役に立つかもしれないと考えたのだろう。
「他に思い出せることはないかな。」
「ある。私の使命が。」
「使命?それは誰かから伝えられたものなの。」
「いや、そうじゃない。先程の言葉を借りれば意識の中に強く刻まれたもの。覚えていない分も多いから詳しくは話せないけど。」
「それは一体。」
「このペンダントに相応しい人間を探している。これを渡すことが私の使命。」
すっかり聞くのを忘れていたレインの使命。
これを手伝うことになるのか。
誰かも分からない人を手探りで探すのは簡単なことではない。
それを他の人も分かっているようで、言葉にこそ出さなかったが困った表情を浮かべている。
一瞬の沈黙が生まれる。
しかし、その静寂も誰かの言葉を終わりを迎える。
それは、この中の誰でもない声だ。
「おい!!!火事だ!火事!手が空いてるもんは表出て消火するの手伝え!」
それは火事を知らせるものだった。
俺達も何があったのかを調べるために急いで表にでる。
そこに広がる光景はあまりにも酷いものだった。
火は大きく燃え上がり近接した店を次々と燃やしている。
その火がこれ以上燃え移らないように【水魔法】が使える者は、率先して消火活動を行っている。
「これは・・・。」
井村はこの光景を見てそう呟いた。
この惨状に言葉を失っているのだろう。
他の人もまた言葉が出てこない。
人一倍正義感の強いであろう上野は自分の拳を強く握りしめている。
その表情は強く何かを感じているように思えた。
【水魔法】をあれだけ長い時間使っているのに火が消えるスピードはあまりにもゆっくりだ。
今いる俺を含めた8人の誰でもないところから声が聞こえる。
「誰だよこんなところで【火魔法】を使ったの!しかも、あの様子を見る限りかなりのレベルのやつだ!」
出火原因は【火魔法】か。
一応、上野には使えるかもしれないが、それほど高レベルのものはまだ使えないはずだ。
それに出火の状況を見るにずっと俺達と一緒にいた上野には無理だろう。
しかし、全てに疑いの目を持つのは悪いことではない。
俺は例え味方であっても疑い続ける。
それがこの世界で決めたルールだ。
「戻ろう。何も出来ることがない以上、冷やかしだと捉えられても仕方ない。」
「そうですね。被害にあった人にとってはこれ以上見せ物になるのは気分が良くないでしょうから。」
大城と上野の配慮ある声に俺達は宿に戻る。
中にいた客の全てが外に出て行ったので宿の中は従業員の人しかいない。
あれだけの騒ぎだ。当分は戻ってくることはないだろう。
「あの出火。何が目的だったんだろ。」
たぶん、独り言を呟いたつもりの小原。
けれども、この宿には人がいないのでその小さな声でも聞こえてしまう。
「目的はなんだったにしろ、褒められる行為じゃないわね。」
「当たり前だ。もし仮に火をつかられた側に問題があったとしても許されるはずがない。」
目的など関係ないだろと主張する清水と大城。
正常な倫理観ではあるが、かといってどうでもいいわけではない。
仮に理由があるとするならば、この事件が再発する可能性を防げる。
犯人の目的が、この火事が起こった場所だけではないとしたら近いうちに確実にもう1度事件は起こる。
「おい、そこのお前らこっちにこい。」
もう何度も見て来た格好のティキア騎士団が俺達を呼んでいる。
その言葉には、こちらを疑っているような感情を感じる。
「今から、【鑑定】を行う。出火の原因は【水魔法】でも消えにくいことを見るに高レベルの【火魔法】だ。それを持っていないか見せてもらおう。」
こっちの意見は全く耳を傾けないといった姿勢で【鑑定】を始める。
そして、案の定上野の前で足を止める。
鑑定をした団員が先ほどの偉そうな態度のやつに駆け寄り、耳打ちで何かを伝えている。
何を言ったかなど聞こえはしないがこの場にいる誰もが予想できただろう。
本当であれば、真っ先に疑われるのはレインだろうがなぜか鑑定を受けても何も言われなかった。
そのことに多少の疑問を覚えつつ、騎士団側からの言葉を待った。
「【火魔法】を使えるやつはいるみたいだが、あまりに低レベルのため本件とは関係ないだろう。邪魔をした。」
そういってこの場を後にした。
「言葉に棘はありましたが、冷静な判断が出来る人で助かりました。」
1番酷い言葉を投げかけられた上野がこの感じなら、これ以上俺達が悪く言うこともできない。
もう夜も遅くなってきた。
明日に備えて部屋で寝ることになった。
「で、なんでお前はついてくるんだレイン。」
「なんでもなにも、私はお前と約束をした。お前が私の面倒を見るのは当たり前だろ。」
「あのな。こっちは男部屋だ。来られても困るんだよ。」
「では、どうしろというんだ。」
「なにしてんのアンタはこっちだよ!」
こっちの部屋に入ろうとしたレインを見つけて強制的に連行していく宮武。
意地でも動こうとしなかったので助かった。
あとで礼を言っておかないといけないな。
今日の火事騒動。
あの静かに燃える火がまだ鮮明に思い出すことが出来る。
願うならあの火をもう2度の見ることがないように思う。
瞼をゆっくりと閉じながら今日も眠りにつく。
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