最終話 償い
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「終わった!!!」
全員が喜びの余り駆け寄って来る。
1つの目標がここで終わったのだ。
長い長い旅だった。
「お疲れ様。僕は君ならやってくれると信じていたよ。」
「イラか。お前はこの後の処理で忙しいんじゃないか?」
「絶対にそうだと思うよ。魔王と守護者5名の死亡。これは魔族にとって大きな痛手であって、それと同時に好機でもある。それを知ったらみんな目の色変えるんじゃないかなぁ。」
「必然的にリコワルドとイラは繰り上げされるんだろ?そうなれば、次期魔王はお前だな。」
「そうなれば良いけど、最初の内は挑戦者がどんどん来るだろうね。」
自分にもチャンスがあったのに自動的に魔王が決まれば、はい、分かりましたと納得できる者も少ないか。
イラに関しては、その辺の魔族にやられると思えないが、
「なんなのその目!僕だって守護者としてやってきたんだから大丈夫だもん!」
「守りは硬いが如何せん攻撃面がな。」
「う、うぅー。それを言われたらなんも言い返せないよ。」
「大丈夫ですよリコワルド。君だけに背負わせない為にすでに何人か候補はいますから。リリスやガーデハの魔族とかです。」
ほっと胸を撫で下ろすリコワルドだが、肝心なことに気付いていない。
このあまりに準備の良過ぎる手際は予め予測していないとできないこと。
俺達も魔王もきっとコイツの手の上で踊らされていたのかもしれないな。
「そうだ、これ。僕には必要のないものだから。」
手渡されたのは、ガラスの球体と中には水が半分まで入っている。
これが何か分からないが重要なものであることは間違いない。
「それは欲望の水滴。僕には理解できないけど、君達はあの世界に戻りたいんだろ?なら、それが必要になる。」
「帰る方法がやはり存在していたのか。」
「えっ?半信半疑でここまで来たのかい?」
「一応、アロットの国王が願いを叶える秘宝をくれるとは言っていたが、嘘だと知ったからな。」
「それなら問題はないね。これもヤマトオロチのように2つで1つの秘宝だ。きっとその秘宝と組み合わせて使うんだろう。」
希望がないと思っていた元の世界への帰還方法。
まさか潰えた夢の続きを見れるとは思ってもいなかった。
「一ノ瀬!アロットに帰るわよ!」
宮武が大声で俺を呼ぶ。
十分過ぎるくらい余韻に浸ったのだろう。
それよりも早く戻りたいという気持ちが勝るのか。
「呼んでますよ仲間が。早く行ってあげた方が良いんじゃないですか?」
「お前は帰らないのか。」
「この世界が好きですからね。神が逃げ出すことを許してくれたからここにいられる。」
「そうだ、ヴァイスをお前が預かってくれないか。」
「あの白い犬ですよね。僕は良いですけど、ヴァイスくんがどう思うか。」
「どっちにしろ連れては帰れない。元の世界に戻れば、それ相応の裁きを受けるだろうからな。」
全員分かっていて帰るという選択肢を選んでいる。
後悔がないかと言えば返答に困るが、自らの罪から逃げるべきではない。
帰り際に何度も鳴くヴァイス。
耳に残ってしまえば余計に辛くなるので足早に去った。
◇◆◇
「よくぞ帰ってこられました勇者様方。帰ってこられたということは・・・。」
「魔王の討伐は約束通り完了した。」
ざわざわと周りが騒然となり始める。
いくら魔王が強いとはいえ、本当に倒してくるとは思っていなかったという反応をされるのは心外だ。
期待などされていようが嬉しくもないのだけどな。
「約束のものを渡して貰おうか。」
「そうでしたね。持ってきなさい。」
近くの人間を走らせて秘宝を運ばせる。
やはり、1つでは効果がないからなのかあっさりと渡そうとしている。
形すら見たことがないので、どんなものなのか気になる。
「これが欲望の壺です。どうぞ、お受け取りください。」
手渡された瞬間に、真偽の審判の反応を確かめたが嘘ではないようだ。
「この後に、皆様のご活躍を祝してパーティーを開かせていただきます。用意が整いましたら、使用人を部屋に向かわせますのでお待ちください。」
目的が秘宝だけなので忘れていたが、この国や世界にとって俺達は語り継がれるべき存在である。
ぞんざいな扱いをする訳にもいかないので、形だけも祝賀会を開くのだろう。
待ち時間があるみたいなのでその間に帰るか。
部屋に戻った後にすぐに1つの場所に集合する。
「さぁ、今のうちに帰りましょうか。」
「そうね、湿っぽくなるのも苦手だし手短に済ませましょう。」
「えぇー、悲しくないんですか!?」
集まってからまだ数分も経っていないのに秘宝を使おうとする上野と宮武に難色を示す清水。
別れを惜しむ気持ちは理解できなくもないが、2人がそういう柄でないことも理解してやってほしい。
「確かに別れを惜しむ気持ちは分かるよ。」
「数えきれない思い出がありますから。」
援護するように井村と小原も過去を振り返り懐かしむ。
「思い出せば辛くなるぞ。あっさりしている方が心もスッキリするものだ。」
「まぁ、本当に帰れるかどうかの確証もないけどな。」
その瞬間、誰もが俺の方を見た。
確かに空気を壊すようなことを言ったかも知れないが、この後に何も起こりませんでしたとかいう可能性もある。
そっちの方が気まずいだろ。
「なーんか、気付けばまた日常に戻ってるわね。昨日まで魔王と戦って死ぬ思いでいたのに。」
「何事も無かったかのように。魔王なんて最初からいなかったかのように。」
「得したのは人間という種族だけだったな。果たしてこれが正解だったんだろうか。俺は甚だ疑問だ。」
この世には数多くの種族が存在する。
その分、損をする種族というは少なからずはある。
全種族を平等になんて詭弁を掲げるのは余りに愚かだ。
結局は欲を持った汚い種族が得をする。
「考えるのはやめよう。俺達はやるべきことをした。それが誰かにとっては罪深いことかも知れないが、元の世界で十分に反省しよう。」
「それが正解ですね。」
「じゃあ、始めるぞ。」
欲望の壺の中に一滴の欲望の水滴を垂らす。
その時に何かが俺に語りかけてくる。
『汝の願いを答えろ』
「地球に帰ることだ。」
その言葉を言った途端に体が軽くなる。
光に包まれているような感覚だ。
思っている以上に唐突だな。
気まぐれにこの感覚に逆らってみようとするがびくともしない。
俺の記憶はここで閉じた。
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『昨夜未明、コロムズ刑務所から脱走したと思われる7人の囚人が収容所の中で発見されました。取り調べの際、7人は違う世界にいたと全く同じ証言をしている模様です。今回の騒動に対して7人の言動の曖昧さに憤りを感じる市民が多い中で、コロムズ刑務所の警備体制に不安の声が上がりました。続いてのニュー・・・・』
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