第177話 醜い偽り
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「あの高さからの落下で死なない上に、【禁術】まで使い放題とはな。本当に人間なのか。」
「寝ぼけてるのか大城。あれはどう見たって人間ではないだろ。」
ルーデの姿は仲間を取り込んだ影響か、ところどころ歪である。
鱗や翼、人とは思えない鋭利な爪や牙。
最も印象深いのは、眼だ。
さっきとは違い片目だけ色の違うオッドアイになっている。
ただのファッションならそれでも良いが何か仕掛けがありそうだ。
「どうするのよ。あれじゃ、攻撃する隙もないじゃない。」
「それもそうだな。利点があるとするなら広い空間になったことくらいだ。アイツがあの身体に慣れていないことに賭けて突撃するのも選択肢か?」
「死んでもいいなら行って良いですよ一ノ瀬さん。そうじゃないなら冷静にお願いします。大事な戦力が減るのは痛手ですからね。」
「冗談だっての。まだ死ぬには若すぎる。」
半分は冗談だが、半分は本気だ。
きっかけを作らないとあのままルーデの自由を許してしまうだけ。
力の差があるのに、そんなことをしてしまえば残された結末は蹂躙されることのみ。
「会議は終わったか元同胞。俺の作り上げた世界を壊しやがって。」
「お前が望んだ世界は魔族に反映されているということか?」
「あぁ、そうだ。元いた世界は生きづらかった。特に日本ではな。必要以上の謙遜、完璧を求められる空気読み、異物を完全に排除しようとする冷たい視線。そのどれもが俺の中は辛かった。」
よく聞く不満ではあるな。
だが、忘れてはいけないのがその裏には数えきれないほどの恩恵が存在する。
国民の安全性の確保、清潔な環境の徹底、最低限のお金の保障。
どれを取っても他の世界では考えられないほど優遇されている。
貧しい国だって山ほどあるのに出して良い不満ではない。
「辛いのが自分1人だけだと思ってるのか。本当に視野の狭い奴だ。」
「なんか言ったか?俺は今、腹が立ってるんだよ。これ以上暴れさせるなよ。」
「まるで子供の癇癪だな。思い通りにならなかったら騒ぎ立てて事を大きくする。それで今まで解決してきたのか?」
「やめください一ノ瀬さん!このままでは暴走しちゃいますよ!」
そんなことは分かっている。最初からそれが狙いだからな。
冷静でいられるよりは勝てる可能性も高まる。
誰にも打ち合わせなんてしていない一か八かの賭け。
失敗したら全部俺の責任だし、恨みに思ってくれても構わない。
「こうなったら乗るしかないですよね。はぁ・・・。分かりましたよ。」
俺の作戦に上野も乗ってくれるらしい。
「好き放題言ってくれるな!【魔眼】”ディメイションエンペラー”」
その瞳から放たれる波動は、地面を干からびさせ植物を枯らす。
生命だって例外ではないはずだ。
昆虫や小動物も体内から水分を全部抜かれて死んでいる。
確かに強力なスキルだが、その間ルーデは全く動けなていない。
「このタイミングです!」
「念には念を。【影操作】」
動けないはずだが、もしもの為に予防策を用意しておく。
このチャンスにピッタリな一撃を放つ。
「任せたぞ井村!」
「うおぉおおおーーー!!!」
竜魂によって真なる姿を手に入れたヤマトオロチを直撃させる。
激しいぶつかり合い。
ただ、これでも互角のままだ。
【影操作】も数秒と保たない。
そうなれば、【禁術】を使われて井村の身が危ない。
どうすれば良いかと考えていると俺の服から真偽の審判が飛び出す。
この状況を覆す力を持っているとは思えない。
しかし、これに賭けるしかない。
なんとかなってくれと真偽の審判をルーデに向けると、今までに見たことのない強い光を放っている。
「なんだこの光!クソッ!クソがぁ!!!」
苦しみの雄叫びを上げながらその場に膝から倒れ込む。
抵抗力を失ってしまったので、その勢いでヤマトオロチを防いでいた腕が斬り落とされる。
何が起こっているか理解できない。
よく見るとルーデの近くには、吸収したはずの守護者の姿が。
そこから推測するに真偽の審判の力で元の姿に戻されたのか。
これは大きな好転だ。
厄介な【禁術】の連打を封じ、片手も失ったことで大きな戦力ダウン。
畳み掛けるなら今しかない。
「これで終わりにしよう。【逆鱗】!」
「まだだ!まだ、俺の野望は終わらせねぇーーーー!【魔王解放】」
残されていたスキルを見て、攻める勢いを緩めて後退する。
【魔族解放】よりもさらに1段階上のスキル。
人の形はそのままに闇を纏う姿は、まさに強者の風格だ。
「【魔王解放】”エンドカウント”」
魔王の後ろに現れた巨大な時計。
針は1つしか無く、ゆっくりと進行している。
1周するまでに掛かる時間は目算3分と言ったところか。
それまでに破壊しないと何かが起こるのは理解できる。
「どうする。簡単には近付けされてもらえないだろうけど。」
「それでも突破するしかないですよ。」
「私が行きますよ。その刀借りても良いですか。」
小原は井村からヤマトオロチを借りて前に立つ。
元の戦闘力を考えれば、鬼に金棒。
十分に対抗できる余地がある。
「アンタも他人事みたいな顔しているけど、行くのよ。」
「分かってる。後ろからの援護任せた。行くぞ小原。」
2人で並んで立つのは、久しぶりだ。
最初の時と比べると尋常ない速度で成長しているので、俺も遅れを取らないようすることで精一杯だろう。
「どっちを受け持つ。時計か魔王か。」
「私が魔王を殺すので時計は任せました。」
俺はその言葉通り、小原の1歩後ろを付いて行く。
「邪魔するんじゃねぇ!!!【魔眼】”終焉の隕石”」
そこら中の岩石が燃え盛る炎と共に襲いかかる。
それでも俺達が足を緩めることはない。
「【暴走光波】」「【風装】」
2つのスキルを掛け合わせ無数の岩石を粉々に破壊する。
「後は頼んだ。」
魔王の横を俺は通り過ぎる。
もちろん、ルーデもそれをただ見過ごす訳がなく残された腕を伸ばして阻止しようとする。
「残された時間を争う為に使うのは悲しい。ただ、流れに身を任せるようにするべきです。」
「邪魔するな!」
小原が間に入って阻止する。
流石にルーデも小原の存在を無視して俺を追いかけるのは不可能だ。
俺は安全に時計まで辿り着く。
力一杯に進化刀を突き刺すがそれでも時計の針は止まらない。
何度も何度も壊そうと試みる。
手は痛くなるほどボロボロだ。
それでも止めることはできない。
「いけぇええーーーーー!!!」
ここ最近で1番の声を腹から出して気合いを入れる。
パリッン
ガラスが壊れる音と共に壊れていく時計。
これでアイツの企みをも阻止できた。
後は小原が倒してくれることを祈るのみ。
「終わったみたいですね。」
「まだだ。まだまだまだまだまだぁーーーー!!!」
「もう終わっているのに気付いてないんですか?首は付いてないですよ。」
俺が振り返ると首の付いていない魔王の姿。
終わったのか。
意外にもあっさりとした幕引きだった。
それでも良い。この長い旅が終えてやっと休めるのだから。
拳を上げて勝ったことを仲間に知らせる。
湧き上がる喜びの声はしばらく止むことはなかった。
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