第176話 崩壊の城
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「【火魔法】”イフリート”【土魔法】”ガイアテンペスト”【水魔法】”ポセイドン”」
「どれだけ最上級レベルの魔法を連発すれば気が済むんだよ。」
襲いかかる数々の魔法スキル。
いくら【吸収】があるからとはいえ、この量を対処するのはかなり苦労する。
それに俺は難を逃れても他の人達が対処できるかどうか。
助け舟を出してやりたい気持ちは山々だが、自分のことで精一杯だ。
「どうするの!?このままだとやられるのも時間の問題よ!」
「僕もどうにかしたいとは思ってますけど、どうにも出来ないですよ!」
「落ち着け。まずは自分の身を守ることだけ考えろ。魔力は無限じゃないはずだ。そのうち尽き果てて反撃のチャンスが来るはずだ。」
大城の冷静な指示でなんとか希望を見出す。
相手の魔力が尽きれば、他のスキルだって使えないはず。
そうなれば、俺達は勝ちに大きく近づいたと言っても良い。
ただ、確証のない賭けである。
相手は魔王と呼ばれて恐れられている存在。
魔力であっても他の生物とは訳が違うはずだ。
「俺の魔力が尽きるまでか。後、1年はそのままだろうな。」
彼の口から語られる言葉。
それに絶望を覚える。
嘘の可能性もあると分かっているはずなのに、どうしても体が信じて疑わないのだ。
止まない魔法の連発にそろそろ限界が来そうになる。
受け止めきれなくなったエネルギーをどれだけ耐えられるか。
生きていれば清水の【回復魔法】でどうとでもなるが、死んでしまえば生き返る保証はどこにも。
ヴァイスの力を使えば蘇生の可能性はあるが100%とは言い難い。
「ワオォーーーン!!!」
人間よりも遥かに大きな姿へと変化するヴァイス。
エデルの時に変化した姿に似ているが、その時よりも勇敢で逞しい姿だ。
立派な毛並みを靡かせて、鋭利な牙を見せながら衝撃波を口から放出する。
あれ程苦戦した魔法の数々も衝撃波1つで全てが止まる。
魔王に対抗する存在。
もしも、あの時ヴァイスと出会っていなかったらと考えると恐ろしい。
「何なんだそいつは。・・・俺の魔法よりも強い攻撃が使えるのは想定外だが、その想定外が俺の心を踊らせる。」
一瞬の戸惑いを見せたが冷静になるのは早かった。
いや、冷静というよりはボルテージが上がったというべきか。
今はヴァイスのおかげで命があることに感謝しよう。
2度も命を救われることになるとは思っても見なかった。
「お前のテンションが上がっているところ悪いが、次は同じようにいかない。【風装】」
全員が【悪心】を発動させている。
好き勝手やってくれていたが、今度は俺達が攻撃する番だ。
「【思い出の燈】」
「それは効かないな。俺に触れなきゃその炎も意味がないだろ?【土魔法】”ガイアロック”」
土の壁が上野の攻撃を遮る。
ただの土魔法ならとっくに崩壊しているはずだが、その気配は見られない。
俺はまだその異様さに慣れないが、上野はどうやら違うらしい。
「それも計算内。その壁は簡単に壊せない。壊せないからこそ意味がある。」
生まれるのは、確実な死角。
それが俺達にチャンスを作り上げる。
「どれだけお前が強くても動けなければ意味がないだろ。【幻想の豪雪】」
地を這うように襲い掛かる大城の攻撃。
ルーデにとってこの攻撃すらも容易に避けることが出来るだろう。
出来るだろうが、避けたとしても足下が安定しなくなる。
二重に張り巡らせられた仕掛けが牙を剥く。
「甘い、甘いな。詰めが甘すぎる。俺の足場は確かにないが、お前らの足場は何もないだろ?」
まさか、あの距離からこの距離まで移動するつもりか!?
遠距離攻撃ばかりに気を取られて、その身体能力を失念していた。
「あえてですよ。そうやってくると思ってね。」
「まるで読めていたような口ぶりだが、止められないと意味がないだろ?」
上野がこの状況になるように仕向けたようだが、ルーデの言う通り止められるとは思えない。
思えないが、上野の考えた策に穴があるとも考えにくい。
ならば、信じて待つしかない。
いずれ、自分の役目だと分かるタイミングがあるはずだ。
「男ってのはすぐ自分の力を見せびらかす。自分が誰よりも優れてると証明したがる。でも、この世で最も強いのは運が良い奴よ。味わってみる?【運命天論】」
コインを1枚弾いた。
それを見たルーデは何か察したのか進路を変える。
今まで一目見ただけで異常を察知した人間はいなかった。
危機察知能力にまで長けているということかも知れないが、宮武のスキルからは逃れられない。
「そのスキル厄介だな。」
「厄介で済めば良いけどね。」
弾かれたコインが壁に当たり壁にヒビが入る。
たまたま脆くなっていただけだろうが、連鎖して崩れ始める床や壁。
「このままだと俺達まで危ないんじゃないか!?」
あれほど苦労して登った魔王城は崩壊の危機にある。
ルーデにダメージを与える為には自分達も何か犠牲を払う必要性があるのか。
それほど魔王という存在の脅威が伝わってくる。
しかし、そんなことより今は自分達の生存を真っ先に考えよう。
今にも崩れ落ちそうな魔王城からの脱出。
丁寧に階段を下る方法は取れなさそうだ。
「こっちから出るしかないわ!」
崩れた壁からは外の景色が見える。
あまり乗り気はしないが、宮武が提案した以上ただ死ぬということもないはずだ。
意を決して飛び出す。
飛び出した瞬間から、外の風を存分に感じる。
隣では瓦礫と化している魔王城の姿。
あれでは下敷きになった魔王も無事では済まない。
「これ使いなさい!」
やはり魔導具があるようで、パラシュートのような植物を投げ渡される。
受け取れなかったと思うとひやりとするが、綺麗に俺の手元へと届けられた。
ふわりと落ちて少しした後にようやく地面に着地する。
俺達7人以外にも生存者がいたようだ。
「えっ!?これ、何がどうなってるの〜!?訳がわからないよ!」
「リコワルド、落ち着いて。僕達は巻き込まれないように離れた方が良い。」
イラとリコワルドか。
生きているのがこの2人なら納得できる。
「派手に暴れてくれているみたいだね。でも、魔王は生きている。くれぐれも気をつけて。」
その警告を最後に距離を取る。
まさかまだ生きているとはな。
瓦礫の山がグラグラと揺れ動く。
どうやらイラの言葉は本当らしい。
「俺の城、俺の城を壊しやがったなぁ!!!!お前ら全員ぶっ殺す。【禁術】”同族吸収”」
恐らく、この瓦礫の下に埋まっているであろう守護者達がルーデの下に集められる。
そして、炎のような魂に変わり1つの塊になる。
徐々に融合するルーデ。
これが最終形態ということか。
「来るぞ!構えろ!」
その言葉が終わった頃には吹き飛ばされる大城。
今までが遊びだったのではないかと思うほど、能力が強化されている。
今すぐにでも回復をすべきだと判断した清水が大城に近づこうとするが、それを阻まれそうになる。
「お前の存在が1番めんどくせぇーんだよ!!【禁術】”破滅の前奏曲”」
これはルミルが使っていた禁術。
恐らくイラとリコワルドを除く、全ての守護者が使った禁術が発動できるのか。
この攻撃は井村の【反転】によってギリギリで回避出来たが、2度も3度も上手くいく保証はない。
勝ちに近づいて、また遠のくシーソーゲーム。
決着が付くのはまだ先になりそうだ。
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