第174話 4つ目の秘宝
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「ここまで来たのか。やっとだね。」
「俺達のことをわざわざ待っていたのか?」
「まさか。僕も一応魔族、いや、魔王守護第一等級だからね。」
目の前には、イラがいる。
彼が魔王討伐を望むのであればここで無理に戦う必要はない。
ならば、肩を張る必要も無くなったか。
「お前が第一等級なのか。俺達は、あと少しで魔王の下まで辿り着く。邪魔はしないで貰いたいが。」
「それは安心してよ。ここで戦って君達の体力を削るなんてことしたくないからね。」
どうやら、イラも同じように考えていたらしい。
なら、話は早い。ここを通してもらうだけで良いのだから。
俺達はそれ以上の会話をすることなく通り過ぎようとする。
イラと俺の関係はあくまで味方ではない。
仲良く談笑をする必要性は皆無だ。
「ちょっと待ってくれよ。」
意外にもあっちの方から呼び止めてくる。
立ち止まるか迷ったが、何を話し出すのか気になり足を止める。
「どうかしたのか?一刻も早く魔王の下へ辿り着きたいのは理解して貰いたいが。」
「焦らなくてもいいじゃないか。少しだけ話をしないといけないことを思い出してね。」
「無駄な時間だ。先を急ぐぞ。」
俺とは対照的に話はいらないと歩みを再開した大城。
「勘違いをしているようだね。僕は話をしようと言ったんだ。それに否定も肯定もないよ。」
リリスが立ちはだかる。
彼女の強さは、俺達が良く知っている。
まともに戦えば、イラのことも考えると激しい消耗戦になることは避けられない。
ここまで脅しを掛けてくるということは何かしらの重要なメッセージの可能性がある。
もしそうでないにしろ、戦うのは悪手。
つまりは聞く以外の選択肢が残されていない。
俺としても話を聞くだけで済むならそうしたいからな。
「手短に話してくれ。余計な心理戦に持ち込まれても困る。」
「まだまだ僕の信用性はないようだ。それで問題はないけどね。」
これ以上抵抗するよりも素直に話を聞いて解放された方が早いと考えたようだ。
大城が合理的な判断を好む人間で良かった。
「なら早速話を始めよう。これは君達の生死を分ける重要な話になる。」
「わざわざ僕達のために忠告を?」
「もちろんじゃないか。現状で最も魔王を殺せる可能性が高いのは君達だ。利益があることに投資するのは当たり前のことでしょ?」
つまりは魔王の情報だと思ってまず間違いない。
あまりに少なすぎる俺達が持っている魔王の情報。
それを考えるとこれはかなり嬉しい話だ。
「魔王は、3つの秘宝が無ければ死ぬことがない。これは君達でも知っていることだと思う。」
「必要だというのは知っていたけど、まさか死なないとは。無謀にも挑戦した来た人間は返り討ちに合うだろうな。」
「馬鹿ね。そんな人間は最上階まで到達できないわよ。」
「それもそうだな。」
ここまで来ると言うことは、ある程度の実力を持っているということだ。
そんな人間が咄嗟の思いつきで魔王に挑むはずがない。
「あれね、正確には4つ必要なんだよ。」
ここに来て知らされる新事実。
あと少しで魔王の下まで辿り着くというのに、引き返さなければならないのか。
「でも、安心してよ。きちんとそれは持っているから。」
どうやらイラが最後の1つを持って来たらしい。
これで引き返すということにならなくて済みそうだ。
だが、どれだけ待っても彼の手から秘宝が出てくることは無かった。
しばらく無言のまま見つめ合う時間が続く。
そして、思い出したかのようにまた話を続けた。
「あぁ、そうか流れ的に僕から出すような流れだったね。説明不足だったよ。君達が既に持っている竜魂。あれがそうだ。正確には、天叢雲剣とセットで1つの秘宝なんだけどね。」
竜魂。それは、天叢雲剣を集めるために行った洞窟にあったもの。
まさか、それが必要になるとは思ってもいなかった。
あそこで持って帰る選択をしなかったら大変なことになっていたな。
「セットで1つということは、合わせると何か起こるのか?」
「それは実際にやってみるのが早いんじゃないかな。」
勿体振るイラ。
結局は自分達の手で合わせるしかないので、確かに彼の言う通りやってみる方が良い。
何が起こるのかという多少の不安を抱きながらも、アイテムバッグの中から竜魂を取り出す。
恐る恐る井村の方へ行き、天叢雲剣を受け取った。
2人で作業を行なっても良いが、万が一のことを考えると被害が出るのは1人で良い。
竜魂と天叢雲剣が触れ合った瞬間、勝手に自分の手元から離れて浮かび上がる。
「始まったね。」
イラが呟いた言葉も俺達の耳には届かない。
それほど、この光景に意識を持っていかれるのだ。
竜の鳴き声が室内に響いてやまない。
咄嗟に耳を塞いだがそれでも貫通して聞こえてくるのだ。
どれだけ時間が経っても止まないので、決死の思い出で掴み取ろうとする。
辿り着くまでの空間は重力が何倍にも感じる。
その間にも脳を破壊するほどの爆音が流れ込む。
「止まれぇーーー!!!」
最後の気力を振り絞りやっとの思いで、触れることが出来た。
暴れる2つの秘宝が鎮まっていく。
そして、確かに俺の手の中で1つにまとまる感触がある。
名前:天照真竜・ヤマトオロチ
説明:魔王を倒さんとする者に与えられる秘宝の真の姿。光を喰らい、より強い光を放つ。元々、この世界にあってはいけない物であるが1000年前に神の悪戯によって生み出された。
スキル:【竜の力】LvMax 【暴走光波】LvMax
竜の荒々しさがより強くなっている印象だ。
それに触れているだけで奥底から力が溢れ出すのを感じる。
武器としては進化刀も優秀な部類だろうが、これはその遥か上をいく。
「これで正真正銘準備は整ったね。」
「伝えたいことはこれで良かったか?」
「そうだね。これ以上は余計なのかもしれない。・・・いや、1つだけ言っておこう。何があっても勝つんだよ。」
激励を胸に俺達はその場を後にした。
魔王がいる手前の階層で戦うことがなくてラッキーだ。
イラに見送られながら次の階層に足を進める。
1歩1歩近付くたびに計り知れない緊張感が生まれてくる。
しかし、その緊張感さえも碌に感じられぬまま最後の階層に到着した。
待ち構えている扉は、禍々しさなど一切ないシンプルなもの。
それでも身震いをするほどの覇気を感じるのは、この先で待つ魔王のせいだろうか。
「行くぞ。最後の仕事が残されている。」
大城が扉を開けて先導する。
最後の敵は真っ赤な絨毯の道の先にいる。
王座に肘をついて座っているのは分かるが顔はよく見えない。
ただ、今までの魔族のように人の形を成しているのは認識できる。
「ようこそ、魔王の座へ。君達が辿り着くのは分かっていたよ。」
声はとても若い男性のもの。
「俺が全ての魔族を治める者・ルーデ・イーリッヒ。又の名を、入絵 輝葉。元同郷の民だから、仲良くしようじゃないか。」
最後に現れた魔王までもが日本人だった。
何が起こっているのか分からない。
俺達は今から同じ日本人を倒さなければならないのか。
重い空気は依然変わらず、俺達の肌を刺激するのだった。
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