第172話 卑怯な戦法
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「ギギギギィー!!!」
興奮気味に何かを伝えようとしているが、全く伝わってこない。
魔族は人語を話せる者が多いが、こいつは例外のようだ。
言葉を理解できない敵を待ってやる必要はどこにもない。
下手に相手が動いている前にこちらから仕掛けるのが得策。
何故だか体が今まで以上に、思い通りに動く。
身体の構造を全て把握して、何をどう動かせばより素早く動けるのかが脳に思い浮かぶ。
不思議な感覚の正体を知るよりも前に、爬虫類野郎に刃が届きそうだ。
慈悲もない一撃に体をブルブルと震わせている。
これが異様に違和感を覚えた。
今まであれほど高圧的で攻撃的な感情を見せつけてきた相手が、ここまで瞬時に感情を切り替えられるだろうか。
内心では人一倍恐怖していたというなら納得は出来るが、俺には違和感があるように映ったのだ。
「キシィッ」
やはり何か隠していたのか近付くタイミングを待っていたという不敵な笑みでこちら見る。
それと同時に口から吐き出された紫色のガス。
こんなにも丁寧に毒というアピールをすることがあるのかと思いつつ顔全体に掛かってしまう。
目が霞む。
直接目に入った訳でもないのに影響が出ているということは、もう全身に毒が回っているということだ。
あまりに速い効果にたじろぐことしかできない。
「キシシシィ!引っかかった引っかかった!俺のことを知能低いとか思ってだんだろ!人間の言葉話さないとこうも簡単に騙されてくれるとはね。舐めてくる分戦いやすくていいや。」
「大丈夫ですか一ノ瀬さん!今すぐにでも【回復魔法】をするのでこちらに。」
「無駄無駄。今頃、全身に毒が完全に回りきって立っているのも辛いくらいだ。キシシィ。やっぱり、リーパー様の作戦はいつも上手くいく。」
その場から逃げようとするのを止めようとするが完全に力が出ない。
それでも俺は進化刀を握る。
「おいおい、冗談はやめてくれよ。」
敵が焦った様子になる。
それもそのはず。
握りしめた進化刀の【吸収】が発動して、体内の毒素が抜けていく。
毒と言えどスキルで発動したのか魔力があったようだ。
幸いにもそれに反応して一命を取り留めた。
まだ毒の余韻で体を動かすのが上手くいかないが、逃げる相手を追うことぐらいは出来る。
「チッ、残念だけど、ここでおさらば。俺を捕まえないと一生ここから出られないぜ!キシシィ!」
透明になって姿を消す爬虫類達。
複数体いるのに、本命は俺が戦った1体のみ。
まともに戦闘をする気もない相手と追いかけっこをするのも骨が折れるだろうな。
「こっちでも戦っている間に何が起こったのよ。説明しなさい。」
「あの爬虫類軍団の中で、俺が戦った奴がリーダーだろうな。そいつが毒を使ってくるタイプで多少手こずった。」
「どこが多少よ、どこが。完全に倒れたじゃない。」
まぁ、結果的には生きているのだから問題ない。
と、言えば怒られてしまいそうなので、胸の中だけにしておこう。
「その分取れた情報もある。ここを抜け出すためにはリーダーである魔族を倒さないといけない。それと、守護者の名前はリーパーでそいつの指示で動いているってことだ。」
「完全に指示で動いているならアドリブに弱そうなので相手の予測していない動きが出来れば、こちらにもチャンスがありそうですね。後は、どうやって探し出すか。」
「そこが1番問題ですよね。見えない相手を探し出すのは簡単じゃないですから。」
「まぁ、あれがスキルの効果なら常に姿を消しているということはないと思う。ないと思うが、どちらにせよあの群衆をかき分けて広大な土地を探すのは難しいな。」
文句はいくらでも出るが、ここは動かないと始まらない。
こういう時でも全く心配はいらない。
俺達が動いている間にも頭脳担当が何か作戦を考えてくれるはずだ。
やはり、街路には人が大勢行き交っている。
最初の時同様に俺達の姿を見つけると異常に殺気立って攻撃してくる。
「【愛の劇薬】!これでこの周辺は無傷で抑えました。今のうちに探し出しましょう。」
「効率で考えるなら手分けして捜索するのが1番なんだろうけど、相手の厄介な毒スキルと潜伏による奇襲、何より数が多いから集団で行動するしかないですね。」
「それならまずは目立たないような工夫が必要ですね。」
「俺に考えがある。ちょっと待ってろ。」
俺は服屋探した。
そして何着か盗み出すとそのまま店を出る。
あまりの鮮やかな手口に自分でも驚いてしまう。
「これを着れば周りに溶け込めるはずだ。」
「どこからこれを。」
「そこから拝借してきた。」
「なんという悪党っぷり。これには、私も引いてしまいそうです。」
ちょっと距離を置くような素振りをわざと見せる。
言っておくが、お前も犯罪を犯している経歴があるんだからな。
それに、ここはあくまでも幻術の世界。
本当の世界で犯罪を犯している訳ではない。
「冗談はさておき着替えましょう。衣装だけでもかなり雰囲気が変わるはずです。」
各々、俺が持って来た服の中から選んでトイレで着替える。
戻ってくるのに5分程度掛かってしまいタイムロスが発生したが、一般人に囲まれていたら同じこと。
武器もなるべく目立たないようにアイテムバッグへ。
「今は完全に無防備な状態です。くれぐれも無理はしないように。」
全員で歩いているが格段騒がれることは無くなった。
それでもたまに怪しんでこちらを覗く者もいるので、その時は眠ってもらうしかない。
強引な方法ではあるが、側から見れば急に道で倒れた人にしか見えないはずだ。
鳴り響く救急車のサイレンの音。
今、あちらこちらで救急車が稼働する異常事態が発生している。
街は混乱の渦に飲み込まれれいる。
常にカメラを回す者、恐怖でこの場から立ち去る者、そして泣き叫ぶ子供。
まさに地獄絵図だな。
しかし、これは俺達にとって好機でしかない。
この中から平然としている者を手当たり次第に探していけば、アイツを見つけ出す可能性が高い。
「あれじゃないですか?」
小原が何かを見つけたようだ。
指を指す方向には、中途半端に人に擬態したアイツの姿が。
「あれでも人に擬態しているつもりなんでしょうかね。」
「いや、また罠を仕掛けている可能性だって十分に考えられる。ここは慎重に・・・」
他の5人が話をしている中、1人だけこの場にいないことに俺は気付いた。
全くどこにいるのか分からないが恐らくは敵の下へ近付いているだろう。
「ギィッ!?」
その呻き声を聞いて初めて5人はアイツに目をやった。
「【気配遮断】を使ってなんとか、た、倒せました。」
あくまでもいつの小原だというアピールをするが、返り血を浴びている姿は完全に誤魔化す事ができていない。
「大丈夫?その血とか。」
清水が近寄った瞬間にこの幻術も解かれる。
同時に服装も元に戻りついていた血も完全に元通りである。
「うん、大丈夫。今はなんともないから。」
この時にやっと全員が気付いたのだ。
小原は完全に記憶を取り戻していることに。
人は知られたくない過去の1つぐらいあるだろう。
だからこそ、深掘りできないがきっと彼女の闇はここにいる誰よりも深い。
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