第169話 和風な魔族
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「それにしても謎が多い相手でしたね。」
「まぁ、魔族全員が好戦的とは限らないわよね。ちょっと面白い物も見れたし良かったんじゃない?」
「もうそれ以上は言わないでくださいよー。」
恥ずかしい思いをした清水のおかげで勝ちを掴み取ることが出来た。
結果的には、激しい戦いにもならなかったので体力の温存にも繋がってる。
残された魔族は3人。
残り僅かであるからこそ気を引き締めなければならない。
もう何回目になる階段を登る作業。
これだけでも意外と疲れが生まれる。
あとどれくらいで次の階層に到着するのかと思いながらも、淡々と進んでいく。
「どうやら着いたみたいですね。」
先頭を歩く上野と大城が立ち止まった。
次の階はどうなっているのだろう。
俺もやっと登り終え、広がる景色を確認する。
ここは地獄なのかと勘違いするほど、真っ赤に染め上げられた照明に暑苦しいマグマ溜まり。
極め付けは、鬼の巨大インテリアまで置いてあるではないか。
「肝心の敵の姿が見当たらないな。」
全員で周りの様子を観察しているが、それらしき人物はまだここにいないようだ。
それならば、律儀に待ってやる必要もない。
奥に見える階段を目指して歩き出す。
もちろん、そんなに簡単に通してくれるほど馬鹿な敵ではなかった。
鳴り響く和風なメロディー。
いかにも今から来るぞと伝えているようだ。
身構える俺達の前に現れたのは、顔を完全に隠した侍だった。
「俺は魔王守護第三等級・ナギハヤ。2度と俺の姿を見ることはないだろうけど、覚えておいてくれや。冥土の土産くらいにはなるだろうよ。」
「いきなり現れて野蛮なことをいう奴だな。」
「野蛮?平和に暮らしていた俺達に勝負しかけて、日常壊したのはアンタらだぜ?」
「平和なのは魔族だけだろ。それ以外の人間、いや、種族は平和に暮らせていない。」
「まぁ、そう言ってくるわな。仕方ない、元より話し合いで解決しようなんて思ってないから・・・なぁ!!!」
いきなり俺に向かって攻撃を仕掛けてくる。
ギリギリのところで進化刀を取り出したが、相手の方が勢いが強い。
「なんて、馬鹿力だ。」
「嬉しい褒め言葉だなー!その刀、噂には良く聞く進化刀だろ?アンタがどこでそれを手に入れたか知らないが、羨ましくて仕方ないぜ。」
「欲しいのか?でも、残念だ。これは使用者以外の人が使えないようになっている。」
「そんなことは知っている。それに、その進化刀よりも良いもんを使っているから大丈夫だ。」
名前:血喰らう暴刀・絶
説明:対象者の血を吸うことによってその強さを変化させる刀。魔族は、人間よりも血の量が多いため相性が良い。吸った血によって固有のスキルを得ることがある。
スキル:【吸血】LvMax 【身体強化】LvMax 【血戦】LvMax
どうやら特殊なスキルが多いようだ。
見たことのないスキルに細心の注意を払いながら戦う必要がある。
「どうした?さっきからジリジリと押されちまっているみてぇーだが。」
ナギハヤの言うことを否定できない。
想定以上の強さに、後ろの壁へと追いやられている。
こうなれば、日に何度も使うと異常な疲労が蓄積されるが、【一心化】を使う他にない。
「ワシらもいることを忘れないで欲しいね。【反転】」
俺は井村が予め持っていた小さな石ころと場所が入れ替わる。
急に力を加える先がなくなったことで体勢を崩す。
「ありゃりゃ、後少しってところまで追い詰めたと思ったんだけどな。」
「こっちは7人もいるんだ。仲間がやられるのを黙って見過ごす訳がない。」
「良いなぁー、その目。本気で俺に勝つと思ってる目だ。けどよ、ここまで上がって来れたのはたまたま。いや、下の守護者が雑魚だったからだ。」
「自分は強いと言いたそうですね。その慢心でやられるとは思わないのですか?」
「慢心、慢心なぁー。それは、強い者の特権みたいなもんだろ?そして、慢心だと言ってくる奴は決まって弱者。強者と弱者どちらが勝つかは決まりきっているだろ。」
慢心を否定することなく、それでも勝つと宣言している。
つまりは、その程度では覆せないほどの実力差があるのだと言いたいのだ。
確かに少ししか刀を交えていないが、明らかに強さのレベルが上がっている。
それもまだ本気でないというのだから恐ろしい。
とはいえ、何度も言うように人数差がある。
どうにかして、それを活かしたいものだ。
「とはいえ、魔王様から手下も必ず近くに用意しておけって言われたから数で勝とうなんて思わない方がいいぜ?」
俺達の考えも想定済みか。
ここまでの階層も手下がすぐに来たのは、そういう理由があったからか。
いくら、手下とはいえ中途半端な強さではない。
下手をすれば壊滅状態になるのは俺達の方かも知れないな。
「さぁ、勿体振るのはここまでにするか。仕事の時間だ!」
石像に扮していた巨大な鬼が動き出す。
やはり、ここの層のレベルだと巨体でも俺達と変わらないスピードで動く。
「おい、ナギハヤ様の邪魔をするんじゃねーよ!」
「簡単にナギハヤ様の下まで辿り着けると思うなよ!」
連携力も高く、後ろのナギハヤまで辿り着くのは困難だ。
「やはり、ここは流れにそってワシが。」
「無理にとは言わないぞ。歳を考えれば体力的にきついだろ。」
「本音を言えばそうかもね。でも、ワシだって漢なんだ。他のみんなが闘志を見せてくれたのに、黙っていることなんて出来ない。」
熱く語る彼からは意地でも押し通すという強い気持ちが伝わる。
こうなれば、俺が止めるのはどう考えても野暮だ。
「作戦はあるんだろうな。突破が難しいこの状況でタイマン出来る場を作り出すのは不可能に近いぞ。」
「困っているのか。俺で良ければ手助けするぜ。」
いつのまにか俺らの横にいるフウライ。
ヴァイスのワープによって助っ人として現れたのだろうが、どういう感情でそこにいるんだ。
最後の最後で自分の興味の為に敵として立ちはだかったのを忘れたのだろうか。
「おいおい、露骨に嫌そうな顔するなよ。あん時はちょっと発作みたいなのが起こっただけだっての。それよりもあの化け物から道を作れば良いんだろ?」
「簡単に言ってくれるな。苦戦しているのが見えないのか?」
「イチノセ達は窮地にならないと本気が出ないタイプってのは知ってるからな。それまではエリートの俺がサポートしてやるっての。」
論より証拠。
見せる方が早いと鬼の石像へ走り出す。
真正面からの侵入者を拒むように立ち塞がる2体。
安易の突っ込むフウライも問題だが、それに反応してしまう2体の石像も問題だ。
力こそあれど知能は高くないのか。
「どっちも釣れたのはラッキー。俺の進化を見せてやるぜぇ!【体術】”奥義・振空両波”」
勢いよく突き出した両手の衝撃だけで空気を振動させる。
それもただの揺れているだけではない、触れたものを簡単に吹き飛ばす威力を有している。
勿論、2体の石像であっても例外ではない。
「これで道は開いただろ?進め!俺、いや、人類の希がアンタ達託されている。」
「ありがとうフウライ君。みんな、その2体を喰い止めるのは任せた。その代わり絶対に勝ってくる。」
俺達の中で最年長が気合い見せているのだから、手下くらい俺達で足止めしよう。
必ず勝つと信じながら。
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