第166話 運を司る
誤字脱字や文章の下手さについてはご了承下さい。投稿予定時間になるべく投稿できるようにします。
よければ、評価とブクマ等していただければ幸いです。
「何個も何個も面倒な魔導具ばかり用意しやがって。」
「それにしても最初の威勢はどこにいったのかってくらいに苦戦しているわね。」
「お前調子に乗りすぎだ。俺の本気ってのを見せてやるか。【魔族解放】」
他の魔族と違って鉄の塊が全身を包んでいる。
動きはあまり速くないようだが、放たれる攻撃は全てを破壊する勢いだ。
強化と言えば強化かもしれないが、極論全く当たらないということも出来そうである。
相手がいかにして動きの遅さをカバーしてくるのか。
そして、それを上回る宮武の戦術に期待したい。
「それじゃあ、アタシも本気出してあげる。【悪心】」
これで互いに全力を出している状態。
張り詰める空気感の中でメニックが動き出す。
が、あまりの遅さに全く距離を詰められない。
一定の距離を保ちつつ何かを狙っている宮武。
「クッソだるいな。わざわざ近付いてやる必要性もないか。見とけよ人間、この装備は破壊力だけじゃないんだぜ。【魔族解放】”フルバーストウエポン”」
腕に集められる光の粒子。
魔法ではない何かが発射されそうになっているようだ。
「全体的に動きが遅いわね。これじゃあ隙だらけよ。【運命天論】」
コインを相手へと飛ばす宮武。
これで確実に何か幸運が起こるのは確定した。
後は運命に身を任せるだけなのだろうか。
溜めが完了したメニックは、光の波動を放つ。
触れた物は全て灰に変えられていくのを見ると相当な温度を有している可能性が高い。
投げたコインも不運なことに燃やされてしまう。
何かを起こすためにはキッカケが必要だが、それを作るためのコインが消えた今不発に終わったと考えるべきか。
「ここで死ぬんだよお前は!」
「結構、物騒なこと言うのね。不利な状況になったのはアンタの方なのに。」
「何を戯言を言っている。勝ちはもう俺の目の前にあるんだよ。」
目の前に来た光の波動を全て受ける宮武。
あの威力の攻撃で全身で受けてしまえば、生きている保証はどこにもない。
寧ろ、灰になっている方が自然だ。
案の定、攻撃が止んだ床には灰が散らばっている。
唐突に訪れた宮武の死に誰もが呆気にとられた。
ヴァイスも形が残っていない者を復活させるのは難しいらしい。
メニックの高笑いだけが会場に響き渡る。
「その気持ち悪い笑い方どうにかした方が良いわよ。」
聞き覚えのある声。
誰もが死んだと思っていた彼女の声。
敵を罵倒している状況なのに何故だか安心する。
「どうやって生き残ったんだお前!」
「身代わりのお守りよ。死にそうになったら1度だけ身代わりになってくれるの。まぁ、効果は絶大だけど使えるのは人生に1回だけだし、高級すぎて中々手に入らなかったけど。」
「そんな貴重な物をここで使い切ったというのか。仮にも俺を倒せば後の戦闘が控えているんだぞ!恐怖とかはないのか!」
「ないわよそんなの。それに、もう要らないしあれ。だって、アタシが死にかけることなんて一生ないもの。」
遠回しにお前では勝てないということを伝えている。
メニックはそれに気付ける状態にない。
自慢の攻撃を防がれてしまったことで数秒間の戸惑いが生まれる。
しかし、間髪入れずに同じ攻撃を仕掛けることにしたようだ。
「同じ攻撃なんて芸がないわね。野生の魔物じゃないんだから、少しは頭を使いなさいよ。」
「この俺に頭を使えと言ったのか。ふざけるなよ!俺はこの世界の誰よりも天才なんだよ。」
「アンタの未来は真っ暗ね。ほら、何も見えないでしょ?」
部屋は窓などが開いていないはずなのに、どこからか風が吹いている。
縦横無尽に駆け巡り部屋中の灰を掻き集め、メニックの鉄で出来た頭を覆い尽くす。
狙いが定まらなくなったメニックの攻撃は宮武とは全く違う方向へと飛んでいく。
「イライラさせるのが得意だなお前!でもよ、相手が悪いぜ相手が。」
視界を確保した途端に襲い掛かる。
もはや、彼に冷静さは残されていない。
目の前の宮武という存在を消し去ることで思考が固定されてしまっている。
宮武がこうなることを狙っていたのかどうかは分からないが、有利な状況になっているのは確かだ。
「ただ近付けば良いって話じゃないの。攻撃の対策をされないように神経を使わないと。」
バッグから木の人形を取り出す宮武。
それでどうするのかと思っていたが、触れている内に宮武そっくりに変化していく。
魔力によって形を変化される魔導具なのかも知れない。
「普段は使い物にならないスキルを持ってるけど、この魔導具と組み合わせれば効果を発揮できるのよね。これが私の秘策、【双撃】」
自分の魔力を使っているからなのか息のぴったり合った攻撃。
その破壊力は鋼鉄すらも容易く砕く。
機械で出来た鎧の中からは血だらけのメニックが現れる。
まさか、あの一撃でここまでのダメージを与えたのかと驚くが良く考えるとありえない。
魔族解放は魔物に近い姿になって内なる本能を解放する物。
それを無理矢理改造したからこうなったのかもしれない。
やはり風が肌に当たるだけで痛むのか苦しみの声を上げている。
聞くに耐えないその声に敵ながら同情する気持ちすら芽生える。
「許さねぇー!!!この痛みをお前にも味合わせてやる!!!」
「やめてよ、そんな負け犬の遠吠えみたいなこと言うのこれじゃアタシがいじめているみたいじゃない。」
近付いて倒れ込んだメニックを見下ろす。
言うまでもないが、ここでどちらが上かはっきりとしている。
「お前は気付いてないかもしれないが俺はまだ【禁術】を使っていない!あの破滅的な力を使えば。」
「なんで今更そんなこと言うのよ。もっと有利な場面はいくらでもあったじゃない。自分に自惚れて慢心した結果がこれじゃないの?恥ずかしい奴ねアンタ。」
言っていることはすごく正論なのだが、まだ息のある魔族相手に掛ける言葉ではない。
感情の昂りが最高潮に達したメニックが最後の力を振り絞り、一矢報いようとしている。
「死ねぇーーー!!!」
「アンタに1つだけ良いことを教えて上げる。本物の勝負師は感情だけに左右されないこと。この意味が分からないならから二流にも満たないんだろうけど。」
宮武の声は全く届いていない。
殺すことは以外は脳にないのだろう。
「【運命天論】」
綺麗な指を弾く音が聞こえる。
この抗うことの出来ない運命に負けを認めざるを得ないだろう。
最初に放った光の波動で脆くなった床に足を取られる。
勢いを殺すことなく躓いたので、転がって宮武の足元へ。
自ら2度も見下される状況を作り出すとは屈辱以外の何ものでもない。
足下にポロリと落とされた最初に使っていた魔法スキルの込められた手榴弾。
同じ手で止めを刺すとは最初から最後まで手加減のない奴だ。
「安心して任せられそうだな。」
「その傷、悪かったわね。代わりと言ってはなんだけど、しっかり魔王倒してくるわ。」
「あぁ、遠いニペガピから朗報を待っている。」
俺達の窮地を救った英雄はワープで帰っていく。
ここに立っていられるのは多くの縁によってだ。
だからこそ、背負う必要がある。
託された思いが俺達の背中には預けられているのだから。
ご覧いただきありがとうございました!
宜しければブックマーク、いいねお願いいたします。
毎日22時から23時半投稿予定!