第165話 迎え撃つ魔導
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魔族の1人が既に待ち構えている。
ここまで上がってきたことに驚きはないようだ。
「敵は7人と1匹。監視役の報告によれば、その犬がワープ系のスキルを持っている希少種か。」
情報を余すことなく書き込まれた紙がその場に散らばっていた。
データに忠実に戦闘するタイプなのだろうか。
「アタシは1人で戦うなんてことしないわよ。そもそも援護がアタシの得意分野なんだから。」
「それで構わないですよ。確実な勝ちを取った方が良いですから。」
「あれは2人の気合い入れみたいなもんだからな。そろそろ俺も体を動かしたくなってきたからな。」
俺は戦闘体勢に入っている。
それでも反応を見せない相手に気持ち悪さすら感じる。
慈悲を与える必要もないので、近づいて刀を振り上げる。
「これは進化刀と言う奴か。確かに普通の武器と違って妙な覇気を感じるな。1つの武器にこれだけのスキルが入っているのは珍しい。」
振り下ろした刀に感触がない。
陽炎にようにゆらゆらと揺れる敵。
これが本物でないこと以外は状況が何も掴めない。
ここを守る者がいないとすると無駄な労力を割かなくて済むな。
わざわざ登場を待ってやる必要もないので階段を上がろうとすると、ジリジリと電子音を立ててホログラムが現れる。
『こんなホログラムに騙されるなんて低脳がよ。よく見れば偽物って分かんだろ。って、俺様の発明が天才すぎるのが問題か!』
さっきのキャラよりも大分癖が強い。
前は奇妙なキャラを演じていたようだが、今は生意気過ぎる。
どちらも相手にするのは面倒だな。
「口が悪いガキね。放っておいて先を急ぎましょう。」
『そのガキの術中に嵌っているのお前らは愚かだな。』
階段は大きな壁に変わり地面に落とされる。
落とされた先には、捕縛用のトラップが。
捕まってしまえば、この先へ進むことなく魔王への挑戦は終わる。
空中で体勢を変えようにもいつの間にか包囲していたホログラムが邪魔をする。
こちらからは攻撃が効かないのに、相手からは攻撃できるのかよ。
為す術もなく捕まってしまう。
1人と1匹を除いては。
「運が良い女だな。」
「わざわざ姿を現すなんてね。てっきり、部屋の奥で怯えているのかと思っていたわ。」
「あれだけ人数がいたら流石に俺も勝てないからな。でも、お前相手だったら話は変わってくるだろ。なんたって、魔導具頼りの雑魚なんだからよ。」
「失礼な奴ね。他の奴らはご丁寧に自己紹介までしてくれたのにアンタはない訳?」
「チッ。面倒くせぇーけど、ここで死ぬなら冥土の土産に聞かせてやるよ。魔王守護第五等級・メニック。それでお目の名前は?」
「ぜーーーたいに教えない。」
煽りにも煽りで対抗する宮武。
敵のペースに持ち込まないのは、戦闘において大事なことだ。
だが、数の不利があるのは絶対的事実だ。
ヴァイスのワープゲートが唯一の望み。
「人間よりもあの犬っころが厄介だ。自由にさせるな!」
「させないに決まってるでしょ!これで足を止めなさい。」
電子基盤を地面に設置する。
あれで時間を稼げるとは到底思えない。
「魔導具・電脳ジャック002。これで、一定範囲の電子系統を発動させないわ。」
「ここは俺の世界だぜ?魔導具が簡単に使えると思うなよ。」
これでホログラム達を消すつもりだったらしいが、何かの仕掛けによって不発に終わってしまう。
丸くなっているヴァイス。
流石にこの窮地は脱することが出来ないか。
「情けない状況になっているな。」
一撃で全てのホログラムを倒す者が現れる。
どうやら、ギリギリワープが間に合ったか。
無敗の神人ゼエス。
この場において、これ以上に頼り甲斐のある助っ人があるだろうか。
「俺はあの魔族を倒せば良いのか?」
「そうね。そう言いたい所だけど、あの魔族か無数のホログラムどっちの相手が嫌かと聞かれればホログラムね。」
「今も無数に湧いている偽物を倒すのか。直接魔族を倒してやりたい気持ちが強いが仕方ない。」
背中を預ける宮武。
てっきり全部倒してくれと頼むのか思っていたが違うらしい。
悔しそうな表情を見せるメニック。
それもそのはずだ。1番警戒していたはずのゲートを使わせてしまったのだからな。
その感情の揺らぎを見逃さず、攻撃を仕掛ける。
アイテムバッグから取り出しているのは、手榴弾か。
「俺に物理的なダメージは通用しねぇーよ。魔族兵器・天霊の羽衣があるからな。」
どうやら相手にも魔導具に似た道具が支給されているようだ。
スキル等を使ってこない所を見ると宮武と似て道具を駆使するタイプなのかもしれない。
目の前で爆発する手榴弾。
しかし、物理的なダメージではなく【水魔法】が発動している。
「魔導具なんだから、普通の爆弾な訳ないでしょ。どう?【水魔法】の味は。」
「本当に愚かだなお前。勝ち誇った顔をしているのが謎だ。」
「どうやって今のを。」
「素直に答える訳ないだろ馬鹿が。」
近距離戦は苦手かと思われたが、果敢にも宮武に近付くメニック。
武器には、ダガーを持っている。
普段は近距離での戦闘をしない宮武は反応が遅れる。
もう距離にして拳一個分もないだろう。
誰もが避けられないと思ったその時、ゼエスによってぐっと後ろに引っ張られる。
さらに攻撃は自分の腕で受け止める。
突き刺さったダガーは痛々しそうだ。
「何してんのよアンタ!腕を犠牲にしてまで!」
「それはこっちのセリフだ。深く刺さっているがこれくらいの傷は治る。でも、死んだら意味がないぞ。まだ敵はいるんだろ?」
「えぇ。油断していたって言葉じゃ、通用しないわね。」
「まだ手助けはそっちの手助けは必要か?」
「要らないわ。十分過ぎるほど貰ったもの。」
気合いは入った。
顔つきが先程までと大きく違うのが分かる。
時間を掛けてヴァイスが俺達の罠を解除してくれた。
これで人数差は軽減されたも同然だ。
「援護するぞ宮武。」
「さっき1人では戦わないって言ったの撤回するわ。今は助けてほしくないかも。」
本人が要らないと言っているのだから無駄なことをするのはやめておこう。
それにあれだけ戦闘でやる気を見せているのも珍しい。
魔王戦の前に新たな成長が出来る機会かもしれない。
「俺を放っておいて会話盛り上がるのやめろやうぜぇー。ここでは俺が主人公なんだよ。」
「悪いわね。アンタをどうやって倒すかだけ考えていた所よ。」
「俺はお前との1対1なんて当たり前に勝つことを前提に計算してんだよ。勝率100%でな。」
「それは分の良い賭けね。なら、しっかりと賭けておきなさい。アタシが破産させてあげるから。」
負けず嫌いなのか無謀にも近接戦を仕掛ける宮武。
ここで勝てる確率は低い。
それは本人も分かっているはずだ。
何か策を見せてくれると信じている。
「そのまま死ね。」
ダガーで心臓を的確に刺すメニック。
だが、その場に血が噴き出る様子はない。
「殺意が高い人間はどうして分かりやすく心臓を狙ってくるのかしら。お陰で対策しやすいわ。」
「たかだか、1回攻撃を防いだだけで調子に・・・!?」
「鉄喰らいのフロッグ。魔導具の中ではかなり値が張る方だけどこういう時に役立つのよね。」
服から飛び出して来たのは金属で作られたカエル。
ムシャムシャとメニックのダガーを食べている。
相手に一泡吹かせることに成功した宮武。
反撃の時間はこれからだ。
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