第164話 悪魔の力
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「こっちも始めましょう?」
「言われなくても今度はこっちから行かせて貰いますよ。【悪心】」
魔法の詠唱を見る限り、近接戦闘が得意とは到底思えない。
距離を詰めて時間を与えなければ、勝つのは容易だ。
「野蛮ね。いきなり他人のテリトリーに入るなんて。【制限】”侵入禁止エリア”」
本人が自分の弱点に気づいていない訳も無く、対策はもちろんあるらしい。
見えない壁。
それが僕と彼女の間に生成されている。
その壁は侵入を拒んでいるが、無機物は通る。
あくまでも遠距離の魔法などのスキル対決に持ち込みたいということらしい。
また詠唱を始めたルミルに負けないよう僕も魔法スキルを使い始める。
こっちは杖での補助があるからか早く詠唱できる。
「僕の実力を証明する為の糧になってください。【光魔法】”ライトニングバースト”」
光の砲撃が攻撃の為にエネルギーの吸収を始める。
10秒あれば完璧に準備が整う。
相手の技が発動してしまう前に放つ。
攻撃は侵入禁止エリアを簡単にすり抜けていったが焦る様子がない。
「私は、前もって準備をしておくタイプなの。」
水槽のガラスが割れて水が僕の魔法を止める。
「【水魔法】+【罠師】”設置型水撃”。私は時間を稼ぐの得意だって、良い加減学習した方が良いわ。」
「ご忠告感謝します。ついでになんですけど、その詠唱やめてもらっても良いですか?」
「えぇ、良いわ。だって、もう終わっているもの。」
今度は俺が距離を取る。
近すぎると少しでも反応が遅れると死んでしまう。
「【禁術】”破滅の前奏曲”」
2度目は禁術スキル。
幸いに1度経験している攻撃だ。
この場全体を覆う津波で相手を押し殺す。
威力も範囲も絶大だけど、僕の前では通用しない。
「その水すらも簡単に燃やし尽くしてあげますよ。【思い出の燈】」
消えない火が襲いくる津波を蒸発させていく。
霧立ちこめる部屋の中、睨み合う2人。
決着はより高度なスキルを使った者が勝ちというシンプルなものになる。
まずは、詠唱をさせないために詠唱の速いレベル1で覚えられるプチファイアを連発してみる。
「正々堂々とした戦いは好まないの?」
「まさか魔族からそんなこと言われるとは思ってもいなかったですよ。」
効果は絶大でスキルが使えなくなっている。
タフな魔族とはいえ、この調子でダメージを与えて行けばこちらのペースのまま勝ちを掴み取れる。
「それを続けられても面倒ですね。【魔族解放】」
ここに来てギアを1つ上げて来た。
もちろん、【魔族解放】があるのは念頭にあった。
だが、使わない可能性があるのではないかとありもしない可能性に懸けていたのだ。
「ここからお遊びでは無くなるわ。後悔しないように。」
最上級レベルの魔法を最も容易く連発してくる。
弱点であったはずの詠唱すらも克服されてしまったら、勝ち目はほんの僅かだ。
どうやって勝つか必死に模索しながらも、攻撃を避ける。
こういう連撃をまともに相手をする必要性は皆無。
ただ、避けようにも全弾ご丁寧に追尾性能が備わっているため気を抜けば即死。
「脳をフル回転させて戦わないといけないとは。やっぱり、魔王を守る魔族というだけある。」
「急に褒めてくるのね。もっと早ければ生きている可能性だってあったのに。」
「でも、貴方は最強ではない。精々魔王という存在に縋り付くオマケですよ。そんなのに負けるはずがない。」
力強い宣言。
相手の感情揺さぶるのには成功しているかもしれないが、その分相手の力が増すというデメリットもある。
これが吉と出るか凶と出るか。
「口だけは達者ね。相手を苛立たせるのは愚策と思わないの。」
「愚策も立派な策の内ですよ。冷静さを失えば勝ち目が生まれるんでね。」
馬鹿正直に答える必要もないのに、聞かれてしまったら喋る性分なのか。
そのおかげで、ルミルは急激に怒りの表情が薄れる。
「結構ユニークね、貴方。私の護衛部隊に入らない?」
「僕より面白い人は多いですよ。それに魔族みたいに質の低い族のような悪は嫌ですからね。」
「それじゃあ、貴方はどれくらい高貴な悪なのかしら。」
「知りたいならその目に焼き付けてください。これが天才の戦い方です。」
近距離の攻撃は仕掛けられないはずなのに、距離を詰める。
ルミルが連発している魔法が止まっていないので、反射神経を余計に求められるだけ。
しかし、彼には未来が見えているのかもしれない。
必要最低限の身動きだけで避けて見せる。
「まずはその禁止区域壊しますね。【光魔法】”フラッシュ”」
目眩し程度にしかならないフラッシュの強い光。
目的は恐らく他にあるだろう。
強い光は収まる瞬間、その場には無い物の影が映る。
そこへ目掛けて一気にダガーを。
焦りを覚えたルミルは、何の変哲もないダガーに全力の攻撃を止める。
あれが不思議な禁止区域を作り上げている元凶だと思ってまず間違いない。
「やっぱり弱点はそれで間違い無いですね。止められてしまいましたが、そのダガーちょっとだけ細工してあるので。」
地面を指差した上野。
遠くから見ている俺達にも分かるようにジェスチャーをしているのだろう。
はっきりとは分からないが、技を連発しすぎたせいで床が濡れている。
それをギミックとして利用しているなら恐らくは。
勢いを失って落ちているダガーには、印が刻まれている。
電撃が流れ見えない何かにヒットする。
「クソ!護衛部隊も使い物にならないし!イライラさせないで、肌に悪いんだから!」
感情剥き出しになり始めたルミル。
攻撃も粗が目立つ。
避けなくとも上野の横を通り過ぎるので、歩いてでも近付けてしまう。
「これで絶望しなさい!【禁術】”絶海の誘致”」
合わられる水の壁に飲み込まれる。
どうやら水中に囚われてしまったようだ。
ルミルは平然と水の中を動いていることから有利なのははっきりとしている。
「可愛いペットに食い千切られて死ぬのよ。って、人間は水中で喋れないんだったわ。」
見た目からして凶暴そうな魔物にも物怖じはしていない様子。
ここから勝つ未来が見えているからかもしれない。
牙を向けて突進してくる魔物。
上野の全身が赤く光り出す。
それと同時に水がブクブクと泡が見える。
瞬く間に水は蒸発して無くなっていく。
水を失った魚型の魔物達は無力だった。
ただ跳ねることしか出来ない。
「名付けるなら、【悪心】”イフリートモード”ですかね?」
「ふざけてるわ!そんなことが許されて良い訳ない!」
ずっとヒステリックな状況が続いている。
全てにおいて上野の戦力が上回っているのだから仕方ない。
この勝敗は見るまでも無い。
近付かれたルミルはあまりにも無防備だった。
上野が言うにはイフリートと呼ばれる状態のまま目の前に立っただけで、気絶したようだ。
「どうやら感情がキャパオーバーしたようですね。起きても動けないようにキツく縛っておきましょう。」
「その格好強そうだな。」
「強そうじゃなくて強いですよ。お披露目する場面は無かったですけど。」
「魔王との直接対決の楽しみにとっておこう。」
「任せてくださいよ。」
実力を見せて満足らしい。
残る魔王の守護者は5人。
上野にはどんどん活躍して欲しいものだ。
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