第163話 水界の女帝
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階層を上がると室内の雰囲気もがらりと変わる。
辺りは自分が海の中に迷い込んだかのように幻想的な水槽で覆われていた。
見たことのない魔物がうようよと漂う。
そして、当たり前に俺達を出迎える1人の魔族。
白色の髪は腰まで伸びていて、褐色の肌が水槽から出るライトに照らされて映える。
「綺麗でしょ?この世界は。」
俺達は誰もその問いに答えない。
会話を楽しみにここへ来た訳ではないので、答える必要はどこにもないからだ。
しかし、その態度に苛立ったのか同じ質問を投げかけてくる。
「なんで誰も答えくれないの良い景色でしょ?」
「談笑しに来たんじゃないことくらい分かっているはずだ。それにここへ来たということは下の階のイズチを倒してきたということだ。焦りは感じないのか。」
「イズチ・・・イズチ・・・。あぁー、あの子ね。最近入ってきた子だから名前覚えてないわ。」
眼中になかった様子だ。
それに焦りも感じられない。
自分が勝つことが当たり前のようだ。
ここに長居したくない俺達は攻撃のタイミングを観察する。
上野が1人でやると言っていたので直接的な援護は出来ないが、弱点を見つけることぐらいは良いだろう。
「で、いつになったら攻撃してくるの?私からじゃないといけない訳?」
「こっちにもタイミングってのがあるのでね。下手に攻撃でもして隙が生まれたら大変だ。何しろ、貴方の相手をするのは僕1人ですから。」
「冗談は要らないわ。だって、貴方弱そうだもの。どれだけ天地がひっくり返ろうとも勝ち目はないわね。」
挑発をしてくる魔族の女。
ここで攻撃をしてしまえばカウンターでやられてしまう可能性が高い。
しかし、いつまで経っても膠着状態が続くのも好ましくない。
欲を言えば、痺れを切らした相手から動いてほしいものだ。
「その真剣に勝ちに来ている目。冗談じゃないのかもしれない。まぁ、仕方がないから相手してあげる。私はこの階層を守る魔王守護第六等級・ルミル。貴方の最後を彩る美しい戦いにしましょ?」
名乗りを上げたルミルが攻撃の準備に入る。
長い詠唱を始めたが、あまりも無防備すぎて攻撃してくれと言っているようなものだ。
上野も待ちに待った好機を逃さないようにと動き出す。
視界では上野の攻撃を確認しているはずなのに、詠唱をやめる気配はないルミル。
あと少しで攻撃が通るというところで邪魔が入る。
「お嬢様の邪魔はさせません。我々、ルミル護衛部隊が相手です。」
10人の魔族が邪魔に入る。
強敵が7人いるとは言っていたが、全体はもっと数がいるのは当たり前か。
ここでルミルの詠唱を妨害出来なかったのは手痛い。
「【禁術】”破滅の前奏曲”」
避けるのは難しいほどの大きい渦を巻いている水の弾が完成する。
そして、津波に姿を変えて俺達全てを飲み込もうとしている。
あれだけ広範囲の技を防ぐ手段を持ち合わせていない。
頼みの綱は1つだけ。
タイミング良く開かれるゲート。
本当にヴァイスが優秀で頭が上がらないな。
「久しぶりだなノセ。俺達のこと忘れたとは言わせないぜ。」
「ちょっと状況が理解できないけど、ピンチそうじゃん!!!」
「ティキア騎士団ウィリル、マルス、アイリ。計3名、僭越ながら助太刀させていただく。」
「「「【連携防衛壁】”英雄の盾”」」」
息のあったスキルが発動する。
1人では守れなくても他の人の力を借りれば守れる。
実にティキア騎士団らしい考え方だ。
災害レベルの津波からきちんと守りきって見せた。
会っていない期間は短いながらも成長のレベルは目を見張るものがある。
「俺達は問題無かったが上野が完全に飲み込まれていたぞ。大丈夫なのか?」
「大丈夫な訳ありませんよ!」
どうやら生きているらしい。
それだけ確認出来れば大丈夫だ。
「これは一体どうなっているの?私の自慢の技は失敗に終わったということ?ありえない。」
「落ち着いてくださいお嬢様。今すぐにでもアイツらの首を持ってきますので。」
情緒がおかしくなり始めたルミルを宥めるように護衛部隊が動き出す。
上野にはルミルとの戦いに集中してもらいたいので、護衛部隊の相手は俺達が受けよう。
状況を何も知らないはずのウィリル達も肌で空気を感じ取って護衛部隊の対処を受け持つ。
「お前はルミルのことに集中しろ。道は作っておく。」
「感謝します。ここまで援護があれば心強い限りです。」
真ん中に作られた一筋の道を走り抜ける上野。
どういった戦いが繰り広げられるのか興味はあるが、今は自分の心配をするべきだ。
数だけで大した戦力ではないと思っていたが、魔王城にいる魔族はレベルが高いらしい。
「見ない内に腕が鈍ったみたいねノセ。」
「実力の半分以下だ。いきなり飛ばされて来て知らないと思うが、まだまだこの先が控えているからな。疲れないようにしないといけない。」
「ま、まじ〜!?ウチ、もう限界かもー!!!」
「こんな時にふざけるなよって言いたいところだけど、俺も限界が近いぜ。ノセやウィリルだけじゃない。この魔族達と平然と戦っている他の人達も一体。」
この3人は会ったことが無かったから驚くのも同然だ。
ティキア騎士団の訓練も相当ハードだったかもしれないが、俺達も命を掛けた戦いをして来た。
其れ相応の経験値があると思ってもらいたい。
「仲間に恵まれたみたいだな。」
「お陰様でな。騙していたことはすまない。なんなら恨みに思ってくれても良い。」
「私には私の生きたい道があるようにお前にはお前の生きる道がある。それを恨む道理は存在しないでしょ?ただ、後悔があるとするなら一緒に背中を預け合う世界線も見たかった。」
「今だけもその夢叶えてやれるぞ。」
「私についてこれるの?」
「愚問だな。」
息を合わせて走り出す。
長い期間顔を合わせていた訳でもないのに、何故だけ連携が洗礼されている。
「どっちが多く倒せるか勝負ね。【魔法剣術】”フォースエレメント”」
見たことのない技で軽々と魔族を1人倒す。
俺も負けないようにと進化刀を取り出して、【風装】を発動させる。
「これで同点だな。」
数を合わせる為に俺も魔族を倒す。
この勢いは護衛部隊ぐらいでは止めることは出来ない。
他の魔族も奪い合いをしながら倒す。
そして、気付いた時には全て倒し切っている。
「まだ動き足りないな。後、もう10人くらいは出て来てもらっても良いけどな。」
「5対5。引き分けね。この決着はいずれ着けることにしましょう。」
「待てよウィリル。まだ、魔族が残っているだろ!ノセの為にも倒して行かなくて良いのか?」
「2人の良い空気を邪魔しない。ウチらの役目は終わったから帰るの!」
疲れてその場に倒れ込んだマルスの襟を掴んで引っ張るアイリ。
ウィリルを置いて先にゲートで戻る。
「楽しかったわ。これであそこの男が基地を燃やしたこともチャラにしてあげる。」
「気付いてたのか。というか、それでチャラになるのかよ。」
「絶対勝ちなさいよ。」
俺の胸元に拳を当ててエールを送ってくれる。
それ以上の言葉を掛けることなくゲートで帰っていく。
俺達は思っている以上に素晴らしい人の巡り合わせがあったらしい。
こちらは全て片付いたので上野の勝利を待つか。
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