第161話 魔王城攻略開始
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魔王城までの道のりは挑戦者を歓迎しているかのようだ。
一本道で道は開けている。
その先に大きく禍々しい魔王城が佇む。
「あれが・・・。」
いつもは騒がしい上野も言葉を飲む。
先へ進むための足取りは重い。
「あれって魔物でしょうか。」
挑戦者を試すように道の真ん中に配置されている魔物。
あれを倒すことで認められるとでも言うのだろうか。
四足歩行で爪が鋭く光っている。
見た目で言えばクマに近いか。
色は白で黒々としている背景も相まって目立つ。
全身白のクマは可愛いなんて思うかもしれないが、目の傷がいかついし爪の長さも尋常ではない。
少なくとも動物園にいたら、子供は泣くレベル。
俺達を見つけたと同時に全力の咆哮をかましてくる。
確かに耳を擘くような音だが、今までの敵に比べれば並だ。
だからこそ確信する。
コイツは敵にすらならないレベルの相手なのだということ。
「誰が相手しますか?準備運動にもならないと思いますけど。」
「俺が行く。昨日は、醜態を晒したみたいだからな。」
そうやら昨日のことを憂いているみたいだ。
失態なんて誰にでもあることなので気にする必要などないが律儀な性格をしている。
「悪いが俺の為に勝たせて貰うぞ。【幻想の豪雪】」
いきなりトップギアだということが分かるスキル。
襲いかかる吹雪は触れてしまえば万物を氷へと変えてしまう。
クマはそんなこと恐れもせずにこちらへと向かってくる。
知能がないのでそうなってしまうのは仕方ない。
しかし、この道を任されているのだとすれば警戒の1つくらいして欲しいものだ。
当然、氷漬けにされてしまったクマ。
こうなればトドメを刺されるだけ。
銃を構えた大城が無慈悲にも頭を撃ち抜く。
「獣の相手をしている暇はないからな。」
「なんでこんな弱い魔物を置いておくんでしょね。」
「選別のつもりなんだろ。近くの街の住民が躍起になって反乱を起こしても大抵はあのクマで躓くように。」
狙いはそれだろうな。
いちいち誰でも入れるようにしていたら、弱い敵とまで戦う必要がある。
ある程度の戦力は篩に掛けるのがベストなのだろう。
「次も魔物来ないですかね。退屈してしまいそうですよ。」
物騒なことを言う上野。
戦闘というのはあまりない方が好ましい。
が、彼のいう退屈も分からなくはない自分がいる。
敵はあのクマだけで彼此20分は経過した。
あれだけ近くにあるように見えた魔王城はまだ遠い。
幻術の1つにでも掛かっているのではないかと思うレベルだ。
「あとどれくらいで着くのよ。アタシもう疲れたわ。」
「我慢してくださいよ。他の人も文句言ってないんですから。」
「無理よーそんなの。だってどれだけ時間経ったのよ。」
不平不満が増えれば全体の指揮も低下する。
これ以上、宮武に喋らせない為にもと小休憩を挟む。
敵の領土の真ん中で行う休みほど心の休まらないものはないだろう。
常に気を張っている状態で水分補給だけ済ませる。
そして、10分と満たない内にまた歩きだした。
たった、数分の出来事だったが効果は顕著に表れる。
足が軽くなっている気がする。
疲労感もほとんど取れているようだ。
この飲み物を作った清水に直接話を聞いてみることに。
「あれには回復効果のある茶葉を混ぜてあるんです。結構前にいつか役に立つかもと思って購入しておいて正解でした。」
「それって結構な値段するんじゃないのか?」
「シーーッ!それは内緒ですよ。効果が出ればそれで十分じゃないですか。」
毎回思うが、清水の献身的な動きには頭が上がらない。
生活において疎かになりがちな部分の補助を欠かさずにしてくれるからな。
その後は今までの進行度が嘘だったかのように順調に進む。あれ程遠く見えた魔王城もすぐ目の前にある。
ここまで来れば静かだった俺達も活気を取り戻す。
「おぉー!入り口はすぐそこですよ!」
やっと辿りついた興奮で思わず声を漏らす。
上野が興奮しているのは、ガーデハからの距離が長かったからだけではない。
魔王城に至るまでの全ての経験を振り返り、慈しむ心がそうさせるのだ。
長い道のりだった。
命を落とす危険には数え切れないほど遭遇して来た。
それどころか命を落としたことさえあったしな。
7人を代表して俺が扉を開けることになる。
特別なことではないはずなのに大役を任された気分だ。
重く錆びついた扉が嫌な音を立てながら開く。
「これはまさに魔王城ですね。」
紫と赤を基調とした色合いに気味が悪い石像の置き物が数個。
広々としたエントランスの奥には上に繋がる階段と血で描かれた異様な魔族の絵が飾られている。
「ようこそ。私は魔王守護第七等級・イズチ。以後お見知り置きを。」
「その以後ってのが来ればの話ですけどね。」
階段から登場するイズチ。
肩書きや感じるオーラからも平賀が言っていた7人の内の1人かもしれない。
そうなると早速戦闘が始まることを告げている。
今までもすぐさま戦うことは少なくなかったが今回は訳が違う。
相手の実力は間違いなくトップクラスだろう。
風貌はキリッとした服装にメガネを掛けている。
知的な戦略で追い詰めるタイプだろうか。
「本当であれば私が直接お相手するのがよろしいかと思われますが、まずは小手調べ。【禁術】”スカルテッドアーミー”」
ありえない数の骸骨が場内を埋め尽くす勢いで襲いかかってくる。
このままでは圧迫死は避けらない。
全力で前線を押し上げて戦うスペースを確保しなければならない。
「まじかよ。こいつら1体1体が強すぎるだろ。」
こちらの攻撃にしっかりと反応して致命傷になるのを防ぐ。
結局は倒すことが出来るが、時間を稼げば稼ぐほど自分達が有利になるのを理解しているようだ。
「キリがないですよ!人数がそもそも足りてないです!」
「後ろも全力でサポートしてるけど間に合わない。」
杖で体重を支えてこちらを見つめるイズチ。
こちらの戦力を全く見落とすことのないように鋭く観察をしている。
そこに一撃だけでも良いので攻撃を当てたいがあまりにも遠い。
「失礼ながらこのレベルで魔王様を討伐されようとしていたとは。」
これ以上は見る必要もないと後ろを振り返り階段を上がろうとしている。
そこに1つの鳴き声が上がる。
聞き慣れた可愛いらしい鳴き声によって、次元の裂け目が生まれる。
ヴァイスの正体はまだ謎に包まれているが、これは何なのだろうか。
「う、うわぁーーーーー!!!!」
現れたのは尋常じゃない数の人々。
中には知っている者も数名。
「いてててぇー!こんにちは皆さんお困りならば助け立ちしますよ。なんたって僕はサポーターのルメールですから。」
情けない登場とは裏腹に頼りになる一言だ。
「俺達が叶えることの出来ていない魔王討伐に近付いているのに、情けない奴らだ。ここからは俺達の力を黙って見ておけ。」
悪態をつきながらも骸骨を薙ぎ払っているところを見るとやはり”雷の奏”の実力は本物だろう。
他のアロットの冒険者も道を斬り開いてくれる。
「不本意だが道は開けた。自分達のやるべきことをやって来い。」
一筋の道を辿るようにイズチを追いかける。
すると彼は振り返る。
「人脈もまた力。良いでしょう。僅かばかり相手をさせていただきます。」
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