閑話 幸福の追求
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私は生まれた時から臆病だったのだと思う。
母からは小さな音でもビクビクしていて、大きな音を聞いた日には泣いてしまうような子だったと良く聞かされていた。
保育園でもそれが理由で周りの子からは距離を置かれていたし、私も距離を置いていた。
とにかく全ての事象がネガティブな感情へと置き換わってしまう。
それがどれだけ不幸なことか分かっていた。
限りある人生の中で不確定なことを嘆くことしか出来ない私はどうやってこの先で生きていけば良いのだろう。
周りからはコミュニケーションが上手くない子供として認識されていた。
それ以外は害も無く興味を持たれる対象にもならない。
ただ、それも小学生までの話だった。
幼児心残る小学生と違って中学での立ち位置は非常に重要。
取り残された人が生き残れる余地は残されていなかった。
最初のいじめは軽い無視。
それもカーストの上位にいる一部の人間からだった。
たまに授業の時に話すぐらいだったので何も問題はない。
辛くなんてない。大丈夫。
とある日の放課後
私は交友関係で担任が心配したのか呼び出しをされてしまった。
今となっては顔も思い出すことが出来ないけど、親身になってくれる先生だったのかも知れない。
色々と質問攻めを受けたがあまり上手くは答えることが出来なかった。
時間だけが無駄に過ぎていく。
先生もこれ以上は問い詰めても可哀想だと判断したのか解放してくれた。
一刻も早く帰ろうと思ったが、忘れ物をした私は教室へ向かう。
もう誰も残っていないと思った教室に電気が付いていてドキッとする。
まさか誰かいるのか不安になる。
もしそうであるなわざわざ入っていくなんて度胸はない。
壁に沿って中の様子を伺う。
話をしていたカーストトップの男女だった。
「てかさ、なんでお前小原のこと嫌いなの?」
「えっ?普通にやばくない?だって、あんなに地味だし何考えてるか分からないもん。」
「確かに。でも、顔は可愛いよな。まじでもたいねぇー。」
「はぁ?あんなのが好きなの?」
「顔だけだって顔だけ。」
私は本当にやめてほしかった。
あの時、名前を出されて容姿なんか褒められてしまったらどうなるか想像に容易い。
次の日からいじめは酷くなっていった。
上履きを隠されるのは当たり前。
トイレにいけば水を掛けられる。
椅子は隠され、机には落書きだらけ。
不幸中の幸いというのも存在した。
何故だか傷が出来るようないじめはなかった。
傷が出来ることによって逃げ場が出来なくなるのは恐れてだろうか。
そんなことをしなくても私は恐怖で支配されている。
誰かに話そうなどと言う発想には至らなかった。
時間が経過していくうちに学校には運ばなくなった。
いや、運べなくなったというのが正しい。
朝起きるとまず学校のことを考える。
そうなると自然に吐き気を催すのだ。
それだけじゃない自然に手が震えて足が動かなくなる。
「大丈夫!?」
家族のいる、味方のいる場所でさえこうなってしまうのだから学校では息すら困難になるだろう。
私は全てを親に話した。
いじめた生徒に怒りたいであろう感情を抑えて私の前では優しい言葉を掛けてくれるのだった。
この日から学校に行かない生活は始まった。
最初のうちは勉強する教科書すらも学校を連想させてしまうので、参考書などで勉強をする日々。
もちろん毎日自分のペースで生活出来るので暇な時間もある。
私はその時間が嫌いだった。
何か形容し難い不の感情が迫り来る。
鼓動が早くなるのを感じる。
やめて、消えてと何度願っても早々に消えることはない。
何分も何分も格闘してようやくいなくなるのだ。
母もそれを察してくれたのかパソコンを買い与えてくれた。
これなら退屈になることはないだろうと。
狙い通り私もインターネットの海にハマっていく。
勉強ももちろん疎かにしてはいないが、それ以外の時間はほとんど画面に齧り付いていた。
「私みたいな人沢山いるんだ。」
最近ハマっている掲示板での交流。
そこでは私ような人間が沢山いた。
結局は誰かと交流したいという気持ちがあったのかもしれない。
対面で話すより何倍も自分の言葉を伝えらることが出来た。
ある日も同じように掲示板を漁っていた。
すると死による救いという題名の掲示板が目に入る。
書かれているのは自殺を仄めかす内容ばかりだった。
私は特に死生観を持ち合わせてはいなかったがこの日から深く考え始めた。
死後の世界に希望を見出す人達の書き込みを見て、洗脳されたかのように私も希望を持った。
誰かの幸せのために私は自殺を助けるサイトを立ち上げた。
この時の私はこれが正解なのだと思っていた。
人を集い、計画を進めて場所まで用意する。
これで誰かが喜んでくれるのだと信じて疑わない。
「ようこそ。ここは救いを求めた人の集まり。最後の時に相応しい一時を。」
仮面で顔を隠した私が、参加者全員に料理を配膳していく。
スケジュールでは、食事を楽しんだ後に全員で薬を飲む予定だった。
しかし、私はサプライズを用意している。
料理に薬を混ぜていたのだ。
食事をしている最中に1人、また1人と倒れていく。
彼らは救われた。これ以上にない幸せによって。
この時の私の胸は異様に高まっていた。
自分でも人を導けるという興奮と目の前で人が死ぬ儚さ。
2つの事象が相まって初めて私は笑顔を見せた。
その後もこの活動を続けた。
募集があれば人種は問わなかった。
誰もこれ知るものはいない。
本人が絶対に誰にも知られないように隠しているからだ。
しかし、長くは続かない。
通信制の高校に通い始めてからのこと。
『次にニュースです。近年問題視されている自殺サイトの存在。その実態に迫ります。』
「怖いわね。若葉はこんなとしないでよ。」
「分かってるよ。絶対にしない。」
口ではそう言うが焦っていた。
警察は実態の掴めないこの問題に本気で取り組むようだ。
そうなれば世界でも最大級のサイトになっている私が目をつけられる。
私はただの高校生。
捜査が始まればどうやっても逃げられない。
「私の運命もここで終わりにしよう。」
いつでもあの世に行けるように隠し持っていた薬を取り出した。
そして、一気に飲み込もうとした瞬間、
「何してるの!」
母が私の部屋を開けた止める。
後ろには警察の姿が何人も。
まさか、こんなにも早く調査が進んでいるとは思わなかった。
判決は自殺幇助でコロムズ刑務所という所に送られるらしい。
世界の自殺率の大幅に上げた原因として凶悪犯として認定されたようだ。
この世は不公平だ。
勝手に人の気持ちを決めつける。
今まで死んでいった人々は果たして不幸だったのだろうか。
しかし、これは水掛け論である。
私もいずれそっちへ行く。
その時はみんなで話がしたい。
どれだけ辛い人生だったのか。
そして、死がどれだけ救われたことか。
どうして私は生かされているのだろうと思いながら生活は続く。
早く寿命が来てくれないかと願っている。
生まれ変わったなら人と上手く関わりたい。
もっとポジティブな思考を持ちたい。
本心がポロリと溢れながらゆっくりと目を閉じた。
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