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第160話 酔い覚まし

誤字脱字や文章の下手さについてはご了承下さい。投稿予定時間になるべく投稿できるようにします。

よければ、評価とブクマ等していただければ幸いです。

夜道というのは危険が沢山ある。

特にこの世界では魔物という生き物が常に人を殺そうと意気込んでいる。

その魔物が活発に行動を始めるのが夜なのだ。


俺達は自らその危険な夜に平原を歩いている。

これでは襲ってくださいと言っているようなものだ。


それも理解はしているが、目的地は夜の方が映えるので仕方ない。


「街の人の話が本当であればそろそろ着きそうですね。」


「多分、この木々を超えた辺りよ。」


森の少し進んだ所にそれはあるらしい。

木によって遮られていた月明かりが徐々に目の前に現れ始める。


「・・・綺麗。」


小原が口からこぼれ落とした感想。

彼女だけではない。

この場にいる誰もが同じ感想を抱いている。


小さな池の真ん中に少しばかりの土地と鮮やかな桜の木がある。

時期的に咲いているか心配だったが、満開の花を咲かせているではないか。


何もない空間にぽつりと咲いている清麗さがより一層心に残る。


「さぁ、桜をただ眺めるのも良いけどご飯を食べましょう。」


「僕も流石にお腹が空いて来ました!」


全員が座れるようにシートを引き、中央を囲むように座り込む。

テーブルや椅子も用意は出来るが花見はこのスタイルだと相場が決まっているからな。


次々と並べられる料理はとても短時間では作れると思えないほど豪勢だ。

飾りつけや彩りなども細かく考えられている。

一応、俺も作った物があるけれど隣に並べると多少見劣りするレベル。

味の方はスキルも使っているのでまずいことはないから安心して欲しい。


それぞれが興味のある料理を小皿に取り分けていく。

取り終わったのを確認してから飲み物が注がれたコップを持つ。

小原と上野はジュースだが、珍しくそれ以外はお酒が注がれている。


一瞬誰が乾杯の音頭を取るのかと目配せする時間が発生したが、やり取りを鬱陶しく感じた清水が立ち上げる。

どんな言葉を並べるのか気になっていたが、とても簡潔だった。


「かんぱ〜い!」


それに続いて掛け声と共にコップを当てる。

全員と乾杯した辺りでぐびっと一気に喉へ流し込む。

こんな豪快な酒の飲み方をしているのはいつぶりだろうか。


やはり、ちびちびと飲む酒よりも味も分からないほどに流し込むほうが美味しく感じる。

酔いすぎて味覚が馬鹿になる前に食事も楽しんでおこうと思う。


肉巻きおにぎりやサンドイッチなどのメインメニューからお浸し、卵焼きなどのサブまでレパートリーは豊富。

俺は自分で作った唐揚げと2人が作っていて気になっていた天ぷらを食べる。


唐揚げは味付けを濃くしてみたが揚げてみれば丁度良い。

噛めば噛むほど肉の油が広がって病みつきになりそうだ。


天ぷらの方も美味しい。

弁当に入れるので、サクサクなのかが心配だったが一口噛めば音がなるほど衣が綺麗だ。

もしかすると2人はアイテムバッグに入れることも考慮して料理していたのかも知れない。

塩でいただくと素材の味が楽しめて良い。


何度か料理を口にした後にまたお酒を流し込む。

これが非常に最高の瞬間だ。


「どれも美味しいですね。僕はこんなに上手に料理出来ないな。」


全員料理に夢中になっていて会話を忘れていたが、上野によって思い出す。


「良かったね2人で作って!大成功だよ!」


「花見の提案も小原だったな。」


「たまには良いこと言うじゃない。」


「宮武さんは余計なことしか言わないですもんね。」


「よし、上野立ち上がりなさい。思いっきりケツ蹴り上げるから。」


じわじわと距離を詰める宮武に恐怖しながら逃げる上野。

それを見て笑う俺達。

なんとも微笑ましい光景である。


ただこの関係も長くは続かない。

魔王討伐は異世界から元いた世界に帰る為に挑んでいる。

地球でどんな関係性を築いていたかは知らない。

むしろ何も無い他人である可能性が高い。

それだけではない。

忘れてはいけないのが、俺達は死ぬのを待つだけの罪人であること。


そう考えると何の為に戦っているのか分からなくなる。

決心が揺らぐようなことをあえてここで口することはないが、他の6人がどう考えているのか気になる。


魔王を討伐しても願いを叶える秘宝は手に入らないのが唯一の救いか。

自分達の意志でないとするなら神様も許してくれるかも知れない。


「飲んでないわよ一ノ瀬。」


開始して20分くらいが経過した辺りで既に酔っ払い始めている。

こうなったらしつこく絡まれるよりも要求を素直に受けた方が良い。

コップに注がれたお酒を一気に飲み干す。

それで満足したのか他のターゲットを探し始めた。


女子2人を見た時は大丈夫だろうかと思ったが、流石の宮武も絡む訳にはいかないと思ったのか大城の方へ。

大城は面倒そうな顔をしているが仕方なく相手をしている。


料理と酒、時々花見を楽しんでいると時間はあっという間に過ぎていく。


「楽しめていますか。」


少し酒が回り過ぎたので、池のギリギリで風に当たっていた。

そこへ話し掛けて来たのはこの提案をした小原だった。


「他の奴らと一緒に居なくて良いのか?」


徐々に冷めて来た酔い。

頭も正常に回り出した。


「気付いてますよね。」


「何がだ?俺は・・・・」


「私があの時の記憶があることですよ。」


「あぁ、そのことならなんとなくな。」


「うまく誤魔化せたと思ったのに。」


状況をうまく利用した嘘ではあった。

心配していた者は、そもそも嘘を付いているという論点に至らない。


俺は気絶するまでの状況を把握していたので、死ぬことはないと思っていた。

だから、心配を多少していたもののあの違和感に気付いてしまう。


「やっぱりあの頭痛はわざとらしいかったですかね?」


「ちょっとだけな。そうなってくると記憶がないのは俺だけってことか。」


「良いものじゃないですよ記憶があっても。今の記憶が消える訳じゃないから余計に。」


悲しい表情は散っていく桜と綺麗な月明かりによって映える。

俺は彼女がどんな思いを持っているかは分からない。

記憶を取り戻せば俺もあんな顔になってしまうのだろうか。


「まだ隠しておくのか。別に誰も何も言わないと思うけど。」


「みんな犯罪をしたと言いながらも生き物を殺すのは躊躇う。どこか正義の部分を隠し持っている。私はただの悪ですからちょっと皆さんとは違うと思うんです。」


「深くは聞かない。聞いたって簡単には理解してやれないだろうからな。でも、辛くなったら吐き出せよ。」


少しだけアドバイスを残して俺はみんなの元に戻る。

彼女はまだ桜を近くで眺めていたいだろうからな。


宴会の終わりがやって来た。

あれだけ用意した食事も綺麗さっぱり無くなっていた。

酒の方は多少残っているもののもう誰も飲めないだろう。


「おい、宮武、井村起きろ。って大城まで酔い潰れているのか。」


「後半宮武さんがグビグビ飲ませてましたから。上手く断れて良かったですよ。」


「回復魔法でなんとかならないのか?」


「状態異常じゃないのでどうにも。」


「僕も成人してたらあんな酷い目にあってたとは。」


怯える動きをする上野。

こんな酔っ払いは放っておいて片付けを始めよう。


明日からきっと魔王城への挑戦が始まる。

無惨に散っていく運命にならないことを祈る。


ご覧いただきありがとうございました!

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毎日22時から23時半投稿予定!

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