第157話 感情の移り変わり
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笑いと悲しみの機械人形が俺の前へ来る。
ただでさえ、アイアン1人で押さえ込むのに苦労した。
個体差が大きくはないとするならば、数が増えれば単純に戦力も強化されているのと同意義。
「なんで私がこんなことしないといけないの。研究施設でゆっくりと過ごしたいだけなのに。」
「ケラケラッ!シルバがまた発作起こしてる!」
うるさい奴らだが、それに惑わされてはいけない。
「俺の事を無視しているが、戦うことを命令されているんじゃないのか?」
「そうなのよ。だから困っているんじゃない。こんなにもか弱い症状なのに悲しいわ。」
「か弱いと自称しているところ悪いが、その中身が人間じゃないことは知っている。正体を見せたらどうだ。【迅雷投擲】」
ダガーを飛ばすと反応できなかったのか腕を掠める。
アイアンのようなインファイター系の反射速度ではない。
もしかすると、シルバと呼ばれていた方は魔法スキル主体なのか。
「痛い。痛いよ。なんでこんな目に遭わないといけないの。」
「アハハ!それは弱いからだよシルバ!戦う時はこうやって。」
男の方が攻撃を始めた。
動きはそれほど速くないが、動きが的を絞らせないように縦横無尽に駆け巡る。
俺の動体視力が追いついてしまうので、その苦労も意味をなさいないがな。
方向を転換させる一瞬の隙を狙って攻撃を放つ。
確実に目標を捉えていたはずが、攻撃が当たった感触はない。
無を斬り裂いたとすぐに分かる。
「ざんねーん!それは不正解!ぷぷぷー!」
いちいち変なオノマトペの笑い声を入れてくるのが腹が立つ。
幻影系のスキルを使われれば、どこに敵がいるか索敵する必要がある。
いや、もう1つだけ解決策が。
「俺の攻撃範囲を誤ったら死ぬから気を付けろよ。【風装】」
風を纏った一撃が前方をまとめて吹き飛ばす。
逃げ場は完全に無くした。
もし、笑いの機械人形が攻撃を避ける事があるとしてもシルバは不可能だろう。
「やめて!もうこれ以上傷付きたくない!」
声を荒げて叫ぶシルバ。
それと同時に謎の防御壁が作り出される。
スキルを発動させる為には、スキル名を詠唱しないといけない仕様が存在する。
その素振りを見せなかったシルバが発動したとは思えない。
思えはしないのだが、この状況を整理すれば彼女が発動させている。
「いつも勝手にスキル出ちゃうよなー。クスクス。」
「またそうやって馬鹿にされるんだ。失敗作って言われるんだ。」
どうやらスキルの暴走が起こるらしい。
感情の起伏がトリガーになっている可能性が高い。
しかし、不確定に絡んでくることまで考慮するのは難しい。
「【幻術】”模倣分身”」
攻略法を考える暇すら与えないように攻撃を仕掛けてくる。
「私が死なないように頑張って!ラピス!」
その声と共に動きが数段良くなる笑いの機械人形。
こういう状況を想定して予め連携を仕込まれていたのか。
アイアンと同じぐらいの身体能力に強化されてしまい、余計に厄介だ。
本体からの攻撃だと思い防ごうとすると幻影のフェイクで、他の箇所から不意を突く本体から攻撃が飛んでくる。
幻影なので実際に当たってもダメージがある訳ではないのだが、体が反射的に反応してしまう。
「無理無理!分かっていても対応できないのが、俺の幻術の強いところだから。」
「俺は天邪鬼だから無理と言われるほどに燃えるタイプだ。」
まずは、【分身】で相手の分身を相殺する。
あっちは攻撃が幻術なので攻撃が出来ないが、こちらは魔力を分け与えているので攻撃可能。
その仕様の差が突破口に繋がると信じたい。
ある程度数が減らせればまとめて【影操作】で捕まえる。
「ケラケラ!なにこれー!体がまーたく動かない!」
俺も【影操作】に力を注ぎすぎて他のスキルは発動できないが、武器が持てれば問題はない。
シルバかラピス。
どちらから狙うべきか迷うところではあるが、補助を担当しているシルバを倒さなければ勝ち目は薄い。
「やめて、来ないで。どうしていつも私がこんな目に遭わないといけないの?不幸よ!」
徐々に感情の昂りを感じる。
このままではいつ強力なスキルが発動するか分からない。
早い内に倒し切らないと。
刀を振り下ろそうとした瞬間に叫び声を上げる。
しかし、意外にも呆気なく気絶してしまう。
斬り裂いてもどれがコアの部分になっているのか分からないだろうからと、峰打ちで強い衝撃を与えただけ。
なので、死んではいないと思う。
本人がスキルを任意で扱えていたらもっと苦戦していた可能性もあっただろう。
2人から1人人数が減っただけで戦いやすさもだいぶ変わる。
後は、援護される恐れのない実力勝負が望める。
「あはは!あはっ。・・・はぁー。流石の俺でもこの状況だけは笑えないな。」
「おやおや、これは興味深い研究データだ。与えていないはずの感情が色濃く現れているな。」
状況の変化をいち早く嗅ぎつけて平賀が登場する。
このままあいつ自身へ攻撃してやりたいところだが、全く隙を感じさせなくなったラピスを越えていくのは不可能に近い。
大人しくラピスと戦うことに集中。
2本のダガーを持った超攻撃型のスタイルに変わった。
真っ直ぐに距離を詰めてくる。
その表情に笑顔は感じられない。
幻影によってタイミングをずらされた攻撃が次々と襲いかかって来て厄介だ。
今日だけで2度目となる【神格化】を発動させる。
体力の消耗が激しくなるので意識的に連続の使用は避けていた。
けれど、状況が変わってしまえばそうも言ってられない。
突飛な攻撃が持ち味のラピスだが、冷静さを失って粗の多い攻撃が増える。
単純な身体能力の勝負になってしまえば勝ちは確実だ。
「いつも通りの俺じゃないのは分かってる。しかも、調子を崩した結果トドメを刺されそうなんて笑い話だ。」
戦闘のスタイルを変えてからは徐々に力の差が浮き彫りになる。
最終的にラピスも追い詰めらている状況。
自分の最後を悟った彼が苦し紛れに語り始めていた。
「不思議な感情だ。俺には記録されていないはずの感情がいくつも湧き上がってくる。」
「それが生きるということだからな。文句があるならあの変態野郎に言っておけ。」
「アハハハ!それは良い提案だ。」
シルバ同様に一思いに気絶させる。
一部始終を見ていたはずの平賀からは感情の変化が見られない。
ただの研究のデータとして淡々と記録している。
最初からそのつもりで作りあげたはずだが、そのせいで彼らは自分の感情に悩んでいる。
いくらそれが機械で作られた偽りだったとしてもだ。
「君の方は終わったようだね。言いたいことは分かっているが、もう少し待ってくれるかな。」
残り2体の研究結果も残したいのだろう。
あれほど敵役として立ち回りをしているが、彼の基準に善悪は存在しない。
あるのは、彼自身の歪な狂気を含む探究心だけ。
だからこそ分かる。
秘宝を返さなかったのはこの状況を作り出す為。
事が終われば、あっさりと返すつもりだったのだろう。
ならば、焦って取り返す必要もない。
黙って2人の魔族の成長を観察することにした。
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