第154話 ハイボルテージ
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アイアンのいるであろう室内に入ると魔族が誰もいないことが分かる。
外にはあれほど人数を配置しておいて、自分の近くには護衛がいないのは自信の表れだろうか。
魔族のボスを2人同時に倒せるのなら慢心してもおかしくないが、実力も分からない敵にここまでオープンでいられるのは愚かである。
いや、こちらの戦力は知られている可能性は高いか。
秘宝のことを探る為に情報を聞き出していたとするなら、目立った行動の多い俺達の話が耳に入るのは必然だからな。
「1番乗りはアンタか。あの中では確かに強そうだったしな。」
「他の奴らは遅刻らしい。ここでゆっくり談笑でもして時間を潰すのはどうだ?」
「アハハハ!面白い冗談言うなー。でも、時間は有限だから待ってあげられるほど優しくはないなぁー。」
「今ならティータイムのお菓子も着いてくるぞ。」
「それは良い提案だな。ちょうど腹が減ってたから殺した後にでも奪うことにするか。」
同じ魔王討伐を目標しているのに、敵対視されているのは不思議だ。
加えて、同郷でもあることを考えると尚更。
「俺が恨まれるようなことをしたのか?」
「いやいや、全くもって面識はないよ。存在を知ったのも勿論こっちの世界に来てからだ。」
「それなら今からでも手を取り合って魔王討伐といこう。」
「無理無理無理。だって、お前ら男女で冒険して来たんだろ?しかも、若い女2人もいたし。狡すぎるだろ、羨ましすぎるだろ。そんなリア充と一緒に旅するなんて出来るはずないし、したくもない。」
酷い嫌悪感を素直に見せる。
過去に何かあったのは予測できるが、俺達で発散されても困る。
ましてや、殺すとまで言われてしまっているのだから問題だ。
「長い会話も終わりにしようぜ。どれだけ話しても知能低いおっさんとじゃ話ならないし。」
おっさんと言われて後ろを振り返るが大城はいない。
つまり、俺に対して言っていたのか。
今までは老けて見られることは無かったが、こいつにとってはおっさんと変わらない年齢か。
「決して今の言葉に苛ついた訳ではないが、今すぐ戦おう。剣を持て殺さないまでもボコボコにしてやる。」
「本当に冗談が面白いねぇー。まるで、自分が勝てるみたいな言い方だ。」
冗談を言ったのはそこではないがウケたのならいいか。
戦うことは決まっているらしく、座っていたソファーから面倒くさそうに腰を上げる。
武器を持っていないことから戦闘スタイルはハクヤに似た拳術系だろうか。
素早さと攻撃を重視しているが、その分防御力は皆無だと思って良い。
人体で金属を受け止めるのはスキルがない限り不可能だからな。
「男にジロジロ見られても嬉しくないなぁー。本当に不公平だよ神様も。俺にだって可愛い女の子を付けてくれても良かったじゃないか。」
「真剣になったと思ったらそれか。俺も焦ってる訳じゃないからやり取りを長引かせてもらっていいぞ。」
「そうだったそうだった。じゃあ、時間稼ぎたいアンタから来いってのも可笑しな話だから俺から行くか。」
今までの敵と違い、一瞬を争うような張り詰めた空気を感じない。
自信の満ち溢れいて自分が負けると信じて止まない表情が出会った時から見受けられる。
歩いて近付いて来て小さな予備動作で攻撃を仕掛けてくる。
簡単に避けることが出来るので、焦ることなく後退を選ぶ。
これで魔族に勝ったというなら驚愕だが、本来の実力は隠しているのか。
「まぁ、避けられるよね。」
聞こえる声でそう呟いた。
その言葉からは当てる気など無かったことが伺える。
殴った勢いで地面に拳を当てる。
俺はこの場に立っていることすら危ないという予感がしてきた。
にやりと笑ったアイアンと目が合う。
建物全体が揺らぐ。
床には大掛かりな落とし穴レベルの穴がぽっかりと空いていた。
留まっていたら巻き込まれいたな。
「戦う間は1度も油断はしない方がいいぜ。あの世へ行きたくないならな。」
「【神格化】+【風装】」
最初から出せる力を出していこう。
「そうそう、それで良いんだよそれで。じゃあ、試しに1発。【拳術】”デッドオブライン”」
拳をまっすぐに突き出した。
別にそこに俺がいる訳でもないのに。
激しい空気の振動がうるさく俺に襲いかかる。
まさか遠距離攻撃も用意されているとはな。
これで距離を取って一方的に攻撃するだけで勝てるのは作戦は破綻した。
「何でも出来るのかよ。神に恵まれてるのはお前だろ。」
【受け流し】を発動させながらも会話する余裕を見せておく。
焦りを悟らせてしまえば、攻撃の手は強まるばかりだろう。
「そっちばかり近距離が得意な訳じゃない。この進化刀のおかげでな。」
言葉の返事はない。
立ち尽くし、攻撃を見せてみろと挑発されているようだ。
遠慮なく【身体強化】を全力で使った攻撃を放つ。
進化刀が目の前に来ても腕で防ぐ素振りを見せるだけ。
流石に人間の腕では止めることは不可能だと思う。
思いと裏腹に、アイアンの腕は甲高い音を鳴らして進化刀を受け止める。
この時点で察しはつくが、彼が人間でないことは確定したと言える。
「想定よりも攻撃力が高いな。」
進化刀の【神格化】までは計算外だったのか、後退を選択するアイアン。
よく見ると腕には深い傷が入っている。
そして、その中には配線や鉄で出来たパーツなどが入っている。
機械人形
1度戦ったことはあるが、あれはもっとロボット感のある奴らだった。
それに転生者のように立ち振る舞っているのも気がかりだ。
「あーあ、バレちゃった。せっかくこの世界で1番硬い鉱石オリファルコンで作ったのに。」
「人間じゃないということは転戦者じゃないのか。」
「半分正解で、半分不正解。全身を作り替えたのさ。転生した時に貰ったチートスキルで。」
「狂気だな。どういう発想になればそうなるのか聞きたいくらいだ。」
「子供ってロボットに憧れるだろ?将来、ロボットなるとか言うぐらいだし。それを叶えたまでだって。」
理由を説明されてもまだ理解には及ばない。
ただ、その間にも俺の攻撃が忍び寄る。
「ん?なんか、いきなり動けないな。」
「俺がスキルで捕縛した。大人しく負けを認めて秘宝を返してくれ。」
「こんなことで勝ったと思ってるなら、とてもめでたい脳みそだ。」
【影操作】というスキルは知らない様子だが、力だけでどうにかしようとしている。
相手が抵抗しようとするればする程、俺の負担が大きくなる仕組みなので今すぐ大人しくし欲しい。
【身体強化】と【神格化】が無ければ互角に戦えていたかも怪しいな。
「はぁー、人前で本気を出さないといけないことになるなんて。これは俺の汚点として一生残り続けるだろうよ。」
「まだ力を残しているのかよ。勘弁してほしい。」
これ以上は無駄に体力を消費するだけと判断して、相手がスキルをタイミングで【影操作】を解く。
「簡単には死なないように足掻いてよ?【禁術】”リミットオーバー”」
今まで全く聞こえなかったエンジン音がこの距離からでもうるさく聞こえる。
そして、限界まで力を高めている影響なのか身体の色が全身真っ赤に変化した。
「どっちが強いか楽しみだ。」
【神格化】と【風装】を使った俺と同じ速さで攻撃を仕掛ける。
当たれば押し負けてしまいそうなので、正面から受け止めるのは避けたい。
自分の出来る限りの反射神経を使い避ける。
しかし、攻撃は微かに俺の頬を掠めた。
早く援護が来てくれと願いながら、頬から出た血を拭う。
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