第152話 跳躍のために
誤字脱字や文章の下手さについてはご了承下さい。投稿予定時間になるべく投稿できるようにします。
よければ、評価とブクマ等していただければ幸いです。
厳格派の魔族は名前まで覚えていないが顔は分かる。
能力が分からないのは戦闘で不利になるが、正気を失っている彼らがどれほど戦えるのは懐疑的である。
ましてや、革命派は指導まで付いたのだから手の内は知っている。
考えるべきはどうやって勝つのかではなく、この洗脳を解けるか。
正気に戻れば、リーダーの敵討としてアイアンを倒すことに協力してくれる可能性がある。
「アイアン様に近付く不届者め。我々が排除する。」
アイアンの代わりに色を取るのはロクスケ。
実力的には幹部の中でもトップクラスなのだろうか。
アイアンがどうこうとほざいているが、元々はアイツから仕掛けてきたことだろと内心で反論する。
言葉に出しても聞く耳を持たないのは分かりきっていることだからな。
「特にあの進化刀を持った男には気を付けろとのご命令だ。」
「やったわね一ノ瀬。アンタ名指しで喧嘩売られてるじゃない。」
「馬鹿なこと言ってないで援護してくれ。俺1人で5人も相手することになりそうなっているんだぞ。」
目の前には武器を持った魔族が5人。
上野と大城も他の魔族からの攻撃に遭っているので、援護ができる人間は限られてくる。
「もちろん、援護するけどアンタの援護はアタシじゃなくて井村よ。」
秘宝の1つを取られてしまったことを深く反省している井村は、深い集中に入っている。
「一刻も早くこの戦いを終わらせよう一ノ瀬君。」
「手加減なしってことか。まぁ、アイアンを自由にさせると何をするか分からないしな。」
鼓動の音が聞こえる。
この世界にあるのは、自然から生み出される音だけ。
それ以外はノイズとして排除される。
「【一心化】+【風装】」「【悪心】」
魔族達の連携は寸分の狂いがないほど揃っていて厄介だ。
しかし、それを上回る連携で5人の魔族を圧倒する。
「まずは黒色をその世界から奪う。【消失した色彩】」
最も多く存在する色は黒。
それを奪われれば多少の混乱が生じる。
彼らは言葉さえあげなかったものの狙い通りに動揺していた。
意識が少しでも戦闘と別の場所に向けられたのなら、俺の神速の一撃が牙を剥く。
「まずは1人。」
「舐められた物だ。雑魚を1人倒したぐらいで調子に乗られてもな。【土魔法】”ガイアブルメテオ”」
所々地面が抉られて1つの塊として形を形成する。
天高く舞う土塊は、熱を帯びて降下中だ。
「あれは隕石か何かか?」
「余所見とは余裕だな。進化刀を持った男。」
俺をその場から逃さない様にと接近戦を仕掛けてくる。
このままでは仲間の魔族諸共殺してしまうというのに躊躇はないようだ。
「俺も死にたくはないが、お前も死にたくはないだろ?」
「アイアン様の為に命運尽きるのなら本望だ。」
「それは気持ち悪い本望だ。土被って冷静になった方が良いだろうな【土魔法】”マッドトラップ”」
右足を狙って抜かるんだ箇所を生成。
一歩でも後ろに下がらせれば、体勢を崩して俺も離脱することに成功する。
隕石のような土の塊が落ちてくるまで時間はそうない。
力が拮抗していて後1歩下がらせることが難しい。
まともな攻撃系のスキルが少ないのが、ここで痛手になるとは。
自ら死ぬことも厭わない対面している魔族は的確に心臓を狙って来る。
「この状況でワシのことを忘れているのは悲しいな!【迅雷投擲】!」
ダガーを投げ込む井村。
これを避ければ作戦通りことが進む。
そう思ったが、ダガーに気付いているが避ける気配がない。
このまま多少のダメージを負ってでも仕留めるつもりか。
俺は咄嗟の判断で井村が投げたダガーを腕で受ける。
今は多少の痛みがあるが、後で治してもらえば関係ない。
「貴様、何をやっている。」
「悪いが【反撃】の条件は整った。」
【反撃】が発動したことによって衝撃波が飛ばされる。
足が泥に嵌り動けなくなったのを確認して、この場から逃げるようとした。
しかし、あまりにも時間を掛け過ぎたのか土魔法は寸前まで落ちてきている。
「【反転】!」
何かと俺の位置が入れ替わる。
死ぬのではないかと本気で考えたが、どうやら今日の俺は幸運らしい。
それよりもあの威力の魔法が落ちたら被害は相当な物になるのではないかと心配になる。
「あれはどうにかしないとな。」
「大丈夫だよ。特別な魔導具を送っておいたから。」
宮武でなく井村も自分のスキルを最大限有効活用できるように魔導具を買っていたようだ。
「魔力減力の壺って言って、周辺の魔力を出来る限り吸い込むことによって魔法の威力を軽減する効果があるんだよ。まぁ、魔法スキルを無効化するとかではないから安くで売ってたけどここに役に立つとは。」
「小賢しい真似をして来る奴らだ。ここまで使い物にならなくったのは7人か。それで1人も殺せないとはな。」
戦った仲間に掛ける言葉ではないな。
洗脳状態に入ると気性は荒くなるのかもしれない。
これ以上続けても無駄に戦力を消費するだけと考えたのか攻め手が緩む。
命令である以上、俺達を始末する以外の選択肢はあり得ないはずだが、論理的な思考も持ち合わせているらしい。
状況が変わらないままの時だけが過ぎていく。
そこへ1つの連絡が入った。
俺達には聞こえないように遠くで言伝を預かった魔族の話を聞いている。
話を聞き終えると何も言わずに倒れている魔族を抱える。
「待てよ。勝手に帰ったら主人に怒られるんじゃないか?」
「見て分からないのか。撤退の指示が出されたんだ。お前らそのせいでアイアン様は不機嫌になっているらしい。」
「僕達に言われても困りますよ。抵抗しなければ殺されていた訳ですから。」
俺達の言い分には興味を示さない。
ただ、指示に無駄なく従うために立ち去ろうとしている。
「1つだけアイアン様からの伝言だ。寝首を搔くような真似はしない。それどころかお前達から挑戦しに来るのを革命派拠点でいつでも待っている。」
この場で追いかけることはしなかった。
歓迎されているなら焦る必要がないからな。
とはいえ、秘宝を1つ失ったという事実がある以上はガーデハの滞在が求められる。
「ごめんみんな。ワシが秘宝を取られてしまったばかりに。」
「何言ってるんですか!命があっただけ良かったじゃないですか!」
「そうですね。取り返せば良いだけの話ですので気にするほどのことじゃないですよ。」
優しさに触れた井村はオヨオヨと泣いている演技をする。
少しでも戯けた様子を見せないと小っ恥ずかしいのだろうと伝わってしまう。
「慰め合うのは良いことだが、少し現実的な話合いをする必要がある。」
厳しい言葉に聞こえるが、冷静に現実と向き合うことが出来る。
起きてしまった事象は変えられない。
そうなれば、修正方法を考えておくべきだ。
「強さは普通じゃないな。それに周りの洗脳された魔族も邪魔だ。」
「近付けば必ずあの魔族達が来るでしょうからね。」
「どれだけ悩もうとも時間が経過するばかりで得られるものはないので、早めに乗り込む方が良いと思いますよ。」
「明日、指定された場所まで行こう。」
まさか、ここまでの事件に発展するとはな。
相手がアクションを起こしてきたのに、逃げれなくなっているのは不服だが従うしかない状況。
魔王討伐前の肩慣らしだと思うようにするか。
今日は夜の食事の時間まで自由時間となる。
それぞれが明日に備えて準備をすることだろう。
ご覧いただきありがとうございました!
宜しければブックマーク、いいねお願いいたします。
毎日22時から23時半投稿予定!