第148話 変革の風
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対立しているからかスロベティーネのアジトを簡単に教えてくれたので、苦労して探し回る手間が省けた。
これは嬉しいことであるのは間違いないはずなのにどうも俺の気持ちは違うらしい。
保守派の魔族であるキャイトは、本当にそうなのか疑いたくなるほど話の通用する奴だった。
スロベティーネもそうであるならば話は早いが、そう上手くはいかないと読んでいる。
「こっちの建物は派手ですけど、白で統一されていて美しいさも感じますね。」
「いらないわよ、そんな品評は。それより、アンタが交渉の要なんだから頑張りなさいよ。」
「宮武さんも交渉が有利になるスキル持ってたじゃないですか。」
「いい上野。スキルはあてにならない時だってあるの。覚えておきなさい。」
門の前でコントを始める2人を横目にインターホンを押す大城。
このパーティの自由さを1コマにまとめるとこうなる。
3人からは緊張感というものが一切感じられないが、後ろを見ると敵地に踏み込む緊張を感じている人間がいて安心する。
1度押したインターホンには反応がない。
それも当たり前の話ではある。
予めアポを取っている訳ではないので中に誰もいない可能性は大いにある。
仮にそうでなかったとしても、急に現れた見ず知らずの冒険者を怪しむはずだ。
返事がないのにも関わらず、2度、3度とインターホンを押す大城。
そろそろ止めるべきかと声を掛けたが、
「俺の勘が、中に誰かいると言っている。」
と言うので黙って見届けるしかない。
こうなれば、気が済むまでやらせなければ後で何を言われることか。
最初は間隔を空けていたインターホンのとも次第に連続した音に変化していく。
普通の世界で考えればただの迷惑行為だが、相手が魔族であるという理由で1つ目を瞑ってほしい。
門が直接開かれて、1人の魔族が現れる。
水色の整えられたボブの髪に灰色の瞳。
印象的なのは、白いドレスに身を包んでいること。
結婚式でも無いのに白いドレスを着ると婚期が遅れると忠告してやった方が良いのだろうか。
そもそも魔族に婚約のシステムがあるのか知らないけど。
「あのー!うるさいんですけどー!居留守使っているの分からない訳?」
「用事があってきた。1番偉いを呼んできてもらって良いか?」
「・・・私がボスのスロベティーネよ。」
「冗談でしょ?あんなちっこいのがボスとかありえないでしょ。」
宮武がつぶやいた言葉の通り、彼女の身長はお世辞にも高いとは言えない。
見た目は幼子に近いので、スロベティーネが彼女であると理解するのにはいささか時間が掛かる。
「聞こえてるはわよ!聞こえて!失礼な奴らね。話なんてしてやる必要ないから、やってしまいなさい!」
スロベティーネを語る彼女の号令によって8人の魔族が集結する。
疑いはその時点で晴れたが、別の問題が発生している。
率直な疑問なのだが、この戦いの後にニコニコの話合いをしている姿が思い描けない。
こうやって思考中でも体はしっかり動いた。
数は確かに多いが、質があまりにも低すぎて俺と大城と上野の3人で事足りる。
「なにやってんのよ!そんなんだからキャイトにもボコボコにやられるんじゃないの!」
「それについて話があって来たんですけどー!」
遠くから指示を出していたスロベティーネに聞こえるように大きな声で呼びかける上野。
その下には、まだ息のある魔族が積み重なっている。
これではどちらが魔族なのか分からなくなる。
スロベティーネは腕組みをして悩む素振りを見せる。
あちらとしては信憑性の薄い話を受け入れるメリットは全くもって皆無。
このまま総力を尽くして戦うことも同様にメリットは存在しない。
「分かったわよ!仕方ないから付いてきなさい。」
血が飛び交う戦いにならなかったことだけは、両者手放しで喜べる結果だ。
何か情報として持ち帰るような情報がころがり落ちてはいないだろうかと忙しなく視点を動かしている。
その結果得られたのは、内装まで色が白く異常なまでにこだわりを感じることだけ。
「ハラマイ、ワネーブル。庭にゴミ落ちてるから拾っておきなさい。」
俺達を睨んで庭へ向かう2人。
最初に会った時から良い印象では無かったようなので、そこになんの疑問も感じなかったが。
「腹割って話をしましょうなんて馬鹿なことは言わないわ。どうせ、キャイトの馬鹿に何か吹き込まれてるんでしょ?」
「もちろん、それが情報を出してもらう条件だったので。確か、革命派の情報を集めて提供することと革命派が提示した条件には乗らないということですね。」
「それを簡単に教えるってのは敵ながらいかがなものかと思うけど。別に契約内容を教えてはいけないとは言われてないですから。」
「それでこっちの信頼を得ようとしているかもしれないけど、逆に信頼を失うってことが分からないのかしら?」
「これは手痛いお言葉ですが、交渉というのは方便を交えて行うものでしょ?」
まだ話が始まって間もないが互いの視線の間にバチバチと火花が散っているのが見える。
体格は小さいが頭脳は某国民的アニメのように普通の大人と遜色ないな。
だが、こちらから見ても致命的な弱点を革命派は持っている。
その証拠にバカップル魔族によって怪我人が運ばれてくる。
相手の情報を引き出せるとするならば、その穴を突くべきだろう。
「結構話の分かる方なので単刀直入に言わせてもらうと、情報が欲しいんですけど。」
「ふっ。馬鹿じゃないの?そっちから出せるものがないのに、こちらには出せって。」
「いやいや、こちらからも出せるものはありますよ。」
俺達も聞いていなかった話が繰り広げられる。
「キャイトさんとの約束はそちらから提示された条件を飲むなってだけであって、こちらから提示するなとは言われてませんから。」
誰が聞いたって屁理屈にしか聞こえない理論を平然とした顔で述べる。
「ぷくくく!アンタ、そこまで悪い奴だったとはね。ちょっとだけ気に入った。そっちが私を満足出来る条件を出してきたなら、良い情報を教えなくもないわ。」
「なら、あれならどうでしょう。」
上野は転がった怪我人を指差した。
「どういうこと?」
「あの弱い部下を鍛えるってのが提示できる条件ですよ。」
「雑魚を育てるねぇー。今までは駒としてしか見てなかったから面白い提案ね。」
情報を交換するよりも確実に利益として反映されるものが提示された。
戦力の強化はスロベティーネが今1番欲しがっているであろうもの。
考えるまでもなく交渉は成立する。
スロベティーネから出された情報も大方キャイトから集めた情報と酷似している。
つまりは、どちらが出している情報も正しいということ。
魔族なら嘘の1つくらい混ぜて来てもおかしくないと思ったが、契約や交渉には真面目な生き物のようだ。
「1つだけ聞かせてもらえる?」
「答えられる範囲であるならなんでもどうぞ。」
「魔王を討伐しようってことだと思うけど、アンタらは本当に正義の味方なの?どうしても、私にはそう見ない。」
「それはとても難しい質問ですね。善はくるりと回って悪になる。どちらであるかは、夜も眠れないほどの議論が必要ですね。」
「やっぱりアンタは曲者ね。キャイトの部下じゃなくて良かったと心底思うわ。」
また後日ここへ伺うと約束して帰宅する。
俺が交渉に参加した訳ではないのに疲労感が体全体を襲う。
宿に戻るとご飯を食べることもせずに速攻でベッドへ移動する。
今日だけで大きく進展した状況に喜びはあるが、今後巻き起こる魔族の抗争を憂いに思う。
明日はどうなるのか僅かな心配を胸に深い眠りについた。
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