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第146話 光り輝くもの

誤字脱字や文章の下手さについてはご了承下さい。投稿予定時間になるべく投稿できるようにします。

よければ、評価とブクマ等していただければ幸いです。

「何が聞きたいんだ?」


冷静さを取り戻した1人の男が尋ねてきた。

こちらとしては聞きたいことなど山ほどあるが、長時間付き合わせる訳にもいかないので質問は絞る必要がある。


1番最初に聞きたいのは、あの魔族についてだ。

俺達が出会ったのは3人だが、この街にいるのがそれだけの人数とは考え辛い。


「街で厳つい大男の魔族と変なカップルの魔族にあったが、アイツら以外にもこの街には魔族が存在するのか?」


「ハラマイとワネーブルの変人カップルとキャイトと呼ばれた厳格派のリーダーか。アイツらはここを支配している魔族の中でも頭1つ抜けた実力者だ。」


「厳格派ということは他にもいるんだな。」


「厳格派はキャイトと幹部3人、その他構成員5人から少数チームだ。魔族に伝わる昔ながらのルールを重んじて、それに従わない者を激しく嫌うチーム。もう1つは、革命派でリーダーはスロベティーネという女、そして幹部は変人カップルを含めた5人、その他構成員8人。保守的な考えが嫌いで常に新たな風を求める集団だ。」


そしてその抗争に巻き込まれてしまったのがこの街だったということか。

話を聞く限り魔族は23人。

中でも注意したいのはリーダーと幹部の奴らか。


「そいつらには歯向かった結果、お前らはここにいることになったのか?」


「そうだったら少しばかりは美談として語れただろうな。しかし、実際はそんなことはない。反乱しようと他の奴らに持ちかけただけで、この有様さ。笑っちまうぜ。」


そう語る彼の顔は言葉と違って暗い影が宿している。

過去を思い出して悔やみ、悲しくなる。

愛していた街は魔族の支配によって変わり果てているのだから。


聞けそうなことはその後も絶えず聞いていくが、まともな情報は前半で出尽くしたようだ。

どれだけの規模の魔族が存在して、何が起こっているか知れただけでも価値としては大きい。

これ以上はここにいても無意味だと判断したので切り上げることに。


「ま、待ってくれ!」


慌てて呼び止める声。

それも不思議ではない。


いきなり現れて、街の事情に首を突っ込もうとする人間。

彼らにとっては不審に見えるがそれと同時1つの光にも見える。

彼らの胸は思いがけない存在によって高鳴っているということだ。


思いを託したいはずだ。この街を救って欲しいはずだ。


「お前らがこの街を救ってくれると思って良いのか?」


なんとも身勝手で真っ直ぐな願いだろう。

そんなことをする義理もなければ温情もない。

ただ自分達の為だけに利のある行動を取るのみ。

それが例えだれかの救いになったとしても俺らの知ったことではない。


返事は7人全員が返さなかった。

中途半端な希望は時として残酷な結末を与えることにもなる。


振り返り帰る後ろ姿をただ見つめる住民達。

静かな路地裏と賑やかな街路が混じり合う直前に声が聞こえる。


「ご飯美味しかったです!」


今の彼らには礼を言うので精一杯だったのだろう。

それで良い。

俺達は味方でないと思ってくれた方が背負う物がなくて何倍も心穏やかである。


「で、今後はどうしますか。肝心な魔王城のことは魔族に接近しないといけないと思いますけど。」


現実に引き戻されるような現実的な話し合いを投げかけてくる上野。

間接的に聞いてはいるが、直訳すれば魔族と戦うことになるが策はあるのかという意味だ。

誰もその答えを持っていない。

今回は、計23名の魔族が存在する。

片方のグループで見ても俺達より人数が多いのは確か。

そう考えるとあまりにも厳しい戦いが待っている。


「ここで足踏みする訳にもいかないだろうな。」


「なら、簡単に済む話じゃないですか。直接話に行きましょうか。」


どうやら上野はついに気が狂ったようだ。

いや、元から可笑しいとは思っていたが、まさかここまで頭のネジが飛んでいたとは思いもしなかった。

相手が話を聞くような相手ならどれほど楽だったことか。

魔族は人を見下している生き物だ。

俺達が直接会いに行ったとしてもまともに相手もされないのがオチに決まっている。


てか、そもそも居場所を知らないだろ居場所を。

どうやってそこまでいくつもりなのかが不鮮明である。


上野はまだ誰も許可していないのにも関わらず実行に移し始めた。

それも褒めらるような緻密な作戦などではない。


「魔族の皆さーーん!ボスに合わせて欲しいんですけど!」


ただ大きな声で騒ぎ立てる。

先程までは笑顔で雑談していた街の人々も嫌悪感で満ち溢れた顔で上野を見ている。

当然、その周囲にいる俺達も同罪と思われれいるはずだ。

これで成功しなかった時は全員で上野を責めることになるだろう。


その杞憂も不必要に終わる。

狙い通りに魔族の方から姿を表したのだ。

大方、馬鹿な人間が身の程知らずの挑戦をしているぐらいにしか思っていないはず。


「キャイトさんに会いたいって叫んでるのは、どこの命知らずだ?」


「僕ですよ僕。まさか、聞こえてなかったですか?」


挑発を挑発で返すくらい上野は肝が座っている様子。

相手がもしカッとなりやすいタイプだったのであれば、この場が戦場に変わっていたに違いない。

しかし、見下した相手には手を出さない主義なのか憐れんだ目で上野を見ていた。


「キャイトさんの方から呼び出して来たのに不親切な人ですね。客人に恥をかかせるなんて杜撰な教育をされているんですね。」


「俺を挑発するのは良いがあの方を侮辱するのは許せないな。」


「だったら、僕を死体にして持っていきますか?随分と手荒な歓迎ですけど僕は受け入れますよ。」


握り込まれた手を伸ばす魔族の男。

これ以上はまずいと思い介入しようをするが、思いも寄らない結果が待っていた。

伸ばした手は上野の目の前でゆっくりと開かれる。


『ガッハハハ!!!お前さん達は昼間のモンだろ?えらい面白いことするんやなぁー!俺に会うために魔族相手にハッタリかます相手はお前が初めてだな。案内してやれロクスケ、たった今からそいつらぁ客人だ。』


何もかも見られていた上で泳がされていた訳か。

こちらとしても目的が果たせるので文句を言う筋合いはない。

問題点を挙げるとするなら敵の本陣に乗り込むのは得策ではないが、ここまで上野の案に乗った以上後のことも任せることにしよう。


ロクスケは俺達に深くは語らないまま歩き始めた。

無言の中でも付いて来いという意味があるのは理解できる。


「あれは演技でもあり本心でもある。もしも、キャイトさんに失礼な真似をしてみろ。首を掻き切るだけじゃ済まない。」


忠誠を誓う相手に対する無礼な行為に内心では腹を立てていたらしい。

首を掻き切るというのも言葉の綾ではないだろうな。

何せ敵がいる場所にわざわざ出向くことになるのだから、1歩間違えれば誰が死体になっても不思議ではない。


魔族は暗い場所を好むのだと思っていたが、到着した建物の外装はお世辞にも趣味が良いとは言えないほど光り輝いていた。


「どうだ人間供、これが俺のアジトだ!肝抜かれないように有りとあらゆる穴引き締めておくことを勧めるぜぇ。」


昼間会った時よりも陽気になっているキャイトは腕を大きく広げて歓迎する。

楽しそうな彼と裏腹に俺達は手に汗握る思いで立ち尽くしてた。


ご覧いただきありがとうございました!

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毎日22時から23時半投稿予定!

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