第142話 飢えた住民
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まずは情報収集よりも腹ごしらえから始まった。
街としては規模が大きいようでアロットに負けず劣らずの栄え振りである。
今は時間にしたら丁度ご飯時なので、道には人がギュウギュウに敷き詰められていた。
歩けば必ず誰かと当たってしまいそうになるので、途中から嫌気が差すな。
一旦大通りを外れて路地裏に避難することに。
先程までの人の多さが嘘だったかのようにこちらは静かだ。
あまりマナーは良くないと分かっていながらも体が勝手にその場へ座りこんでしまう。
「この調子だと仮に飲食店にたどり着いたとしても混み合っていそうですね。」
上野の予想は恐らく当たっている。
そうなれば、心身を削る思いで到着したのにまだお預けを喰らう拷問の完成だ。
かと言ってこの街に来たのは初めてで、抜け道や空いている道を知っているはずもなく飲食店へ向かうならあの大通りを通るしかない。
もし仮に食事にありつけても、過程の苦労を考えるとマイナスしかないのでやはり諦めるか。
こういう時に限ってグゥーッというお腹が鳴る音が聞こえてくる。
もはや、誰が鳴らした音でも可笑しくないので犯人探しような真似はしない。
そんなことしている暇があったら解決策の1つぐらい考えろ。
「あの〜。一応食事はアイテムバッグで保存しているのがあるので、料理が出来る場所があればご飯食べれますよ。」
なんだか女神が舞い降りて来たのでないか錯覚してしまう。
清水によって出された天才的な提案に誰も賛同する。
店でありつけないのであれば、自分で作ってしまえばいいのか。
そうと決まれば時間との勝負だ。
空腹では捻り切れそうになっている腹を満たすため、最後の活力で料理ができそうなスペースを見つけるために路地の奥へと進む。
「この先とかにありそうですけどね。」
「そういうなら上野が走って見つて来なさいよ。アタシ待ってるから。」
「ちょっとそんなこと言わないでくださいよ。あっ!ほらほら空間が見えて来ましたよ。」
そこには高いビル群に囲まれた小さな集落とでも言うべき場所についた。
広さで言えば大きめの公園ぐらいのスペースしかなく、所々に住居と思われるテントやプレハブ小屋が見受けられる。
なにより印象に残るのは、周りのビル群のせいで昼間であっても影が辺りを覆いどんよりとした空気が充満していることだ。
俺達がその場に立ち惚けていると先住民が住居から顔だして様子を窺っている。
歓迎されているようにはあまりにも見えない。
むしろ、明らかな嫌悪感が表情から汲み取ることができる。
「この場で料理するのはやめてた方が良いんじゃないか。」
流石の大城も清水に忠告しておく。
いくら場所が見当たらなかったとはいえ、人が住んでいる場所で料理を始めるのは抵抗がある。
それでもお構いなしに料理の準備を始める肝の据わっている清水。
魔王討伐の旅をしているうちに彼女のブレーキは壊れてしまったのかもな。
鼻歌まじり鍋の中に入れられた食材を混ぜている。
どうやら、簡単に料理ができるようにカットしてある野菜を煮込むだけ完成するようだ。
あれだけ否定していた俺達もこの匂いを嗅いでしまえば流石に抵抗も出来まい。
「本当に良いのか?こんなところで食事しても。人ん家で勝手にご飯を食べる気持ちになるな。」
「まぁ、なんか言われた時は食事のお裾分けでもしてあげましょうよ。」
多分だけど、空腹だから怒りに来る訳じゃないぞと内心で思いつつも諦めて腰を下ろす。
料理だって作り始めているので今更止める方が難しい。
風に乗せられてくる匂いから察するにメニューは具材たっぷりのポトフだな。
体の芯から温まるのにはもってこいの料理だ。
清水の手際が良いからか完成するのあっと言う間であった。
しかし、やっと食事に在りつけるこのタイミングで住民がやってくる。
今までは知らぬ存ぜぬを貫いてきたのいうのに近付いてくるのは、明らかに食事が目的だと言っているようなものではないか。
まぁ、それを見越していた清水は多めの量を作っていたので器に注いで分けるて上げていた。
慈悲深いと言えばそうだが、俺は愚かだと思うのは心が腐っている証拠だな。
ゆっくりと近付いて奪い取るように皿を受け取って距離を取る住民を見て、怒りが抑えられない宮武。
それを俺と上野が全力で防ぐ構図は、もはや定番になりつつあるな。
普段通りの展開なら宮武の暴走としか思えないが、今回のことに限って相手の行動に問題があるので本来であるなら止める必要はない。
けれど、1番怒る権利のある清水が何も言わないから仕方ない。
ここを借りる必要経費だったと思って食事を始めよう。
空腹に染み渡るスープとホロホロに溶けた具材達。
配られたパンをスープにつけるとこれもまた格別だ。
匂いに吊られて人がどんどんよってくる。
これがただ食事をくれとねだるなら平和的な解決もあっただろうけれど、刃物を持って強引に奪い取ろうとするとはとんだ悪党だ。
こうなれば、先ほどまでとは状況が変わる。
人は口ではハンムラビ法典の考え方を悪とするが、結局のところ当事者になれば良しとする心が芽生える。
何が言いたいかというと今から俺はこの一般人を殴ります。
それも全力で1発づつ。
あれだけ問題を起こすなよと忠告を受けた3時間後にこんなことになってしまうとは。
刃物とか絶対正当防衛の証拠として残しておこう。
いや、その前に指紋とかを検出するものはあるのだろか。
後始末のことを考えているボーッとしている間にも刃物を持った男が迫って来ている。
「あんまりふざけるな。こっちには食事が置いてあるんだから暴れられたら困る。」
「これだから人間は嫌いなんだ!俺達のことを最底辺だと嘲笑っているんだろ!」
「何が言いたいのかはこっちに来たばかりで分からないが、礼儀を恥じで返すとは罰当たりな奴だ。」
神経が俺を刺すことだけに集中しすぎて足下が疎かになっている。
刃物に怯える相手だったなら効果的だったかもしれないが、今では刃物を向けられることに恐怖心はない。
軽く足を払っただけで転んでしまう。
その勢いでナイフが飛び、そのまま落下すると怪我をする恐れがあるので蹴り飛ばしておく。
「くそくそくそ!魔族が来てからこの街は可笑しくなって俺達はこんな迫害を受けているのに、まだ惨めな思いをするのかよ。」
多少なりとも同情の余地がありそうな身の上話を始めたが、結局は全く関係のない恨みで怪我を負いそうになったのだからこれくらいの仕打ちは自業自得だ。
気になる話が聞けそうだが、これ以上相手に惨めな思いをさせないためにも中途半端ではあるが食事を切り上げて宿でも探すことにしよう。
そうして来た路地裏を戻るとあの人混みは嘘だったように消えている。
人は転々といるようだが、それでもあの量が一気に減ったのは不可解でしかない。
調べないといけないことが増える一方だなとため息が溢れる。
宿へ向かう途中も何の苦戦を強いられずに辿りついたので、直様宿を取り休憩に入る。
あの時、襲って来た男は魔族が来たと言っていたがまだ遭遇していない。
この後の調査では、そのことから詳しく調べる必要がありそうだ。
意外にも魔族の悪質な妨害を受けることなく過ごせていることに疑問を感じながらも、ベッドで少しばかりの時間寝転がっていた。
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