第141話 洗脳された街ガーデハ
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地図があったので到着までには3日と掛からなかった。
道中もなんら危なげなく進むことが出来たのは、俺達の実力が向上したからか。
ただ問題がないとはいえ、魔物の強さも魔王城に近づくにつれて厄介になってきたな。
「ここがガーデハみたいですよ。」
かなり発展している街がそこにはあった。
立派な門が建てられていて、通過するには面倒臭そうな関所の横を歩くことになりそうだ。
俺達の見た目は完全に武装しているので観光というよりも冒険者だと言われた方が納得する。
ましてや、ここは魔族が支配しているであろう街。
武器を持つ人間を警戒しないはずがないだろう。
「何止まってるのよ。そっちの方が怪しく見えて仕方ないわ。」
宮武のごもっともな意見で全員歩きだした。
これだけの人数が門の前で立ち往生していれば、少なからず注意して見てくるはず。
それならいっそ堂々としておこうという作戦だ。
意外にも声を掛けられることなく門を潜り抜けられそうになる。
しかし、そんなに甘くはなかった。
「おい、検問させてもう。止まれ。」
随分と高圧的な声で呼び止めらてしまう。
別に怒られている訳ではないが、内心で少しばかりの緊張感が走る。
俺は感情が出やすいタイプらしいので今は特に表情に気を付けていよう。
やましいことをしていると思われたら、何時間もこの場に缶詰だ。
そうして、結局は入れませんでしたでは時間の無駄でしかない。
まずは持ち物検査から始まる。
アイテムバッグは面倒だけど全て中身を出さないといけないらしい。
今まで何度か検問は受けたことがあるがここまで徹底しているのは無かったな。
何方かと言えば、ここが厳しいということでは無く他が緩すぎたと思うがな。
こちらには聞こえない声で何度も会話をするのはできればやめていただきたい。
何かあったのかと思ってしまい心穏やかではない。
結局ここまでに掛かった時間が10分。
しかも、あれだけ入念に調べて何もなかったようだ。
何か見つけてこちらにいちゃもんでも付けるつもりだったのだろうか。
「よし。次に質疑に入らせてもらう。虚偽の報告があった場合、滞在権利を即刻取り消しにするので注意するように。」
虚偽報告の代償はあまりにも軽い物だな。
これでは嘘をつくデメリットがあまりにもなさすぎる。
警備の厳重さと不釣り合いな欠陥に疑問が残るが、あの人が検問の長さに耐え切れなくなって苛立ちを覚えている。
「分かってるわよ。さっさとしなさいよさっさと。」
こうなった宮武は、触れない方が被害は少なくて済む。
殴り掛かってこないとはいえ、機嫌を損ねるのは得策ではないからな。
それに宮武の我儘とも思えるこの発言だが、全員が早くして欲しいと思っていた。
2人1組のペアでこちらを調べてくるのだが、事あるごとに2人で話合いをしてから次へ進む。
相手もそれが仕事だろうから噛みつくような真似はしないが、もう少しくらい効率的に行えないものだろうか。
「まずは、ここへ来た目的を。」
「観光です。今まで6箇所巡って来てここが7箇所目ですね。」
「観光に来た理由も含めて答えてくれ。それだとここじゃなくても候補はあっただろ。」
「見ての通り冒険者もやっておりまして、ここの周辺の魔物が強いとお聞きしてついでに腕試しをと思いまして。」
武器を持っている理由を付け加えることで、相手の疑念を解いていく。
例えそれが間違った解き方であったも、相手も簡単には気付けないないだろうと高を括っている。
「滞在期間と冒険者として証明できる物の提示を。」
全員が持っていたギルドカードを見せ、滞在期間を1〜2週間と伝えておく。
本当は決まってなどいなかったが、この場をやり過ごすには目算で割り出した答えを教えるしかなかった。
厳重な警備を見る限り、中で魔王城のことを嗅ぎまわれば怪しまれて最悪の結末を迎えることも考えられる。
特にまたこんな奴らに捕まって仕舞えば、2日、3日の拘束で済むかどうか。
今だって宮武だけでなくこの場にいる全員が嫌気がさしてだらけきっている。
受け答えをまともにしているのも俺と大城の2人くらいだ。
「これで以上とするが、決して街での問題行動がないように。特に真面目に受け答えをしていた2人を除く5人と1匹は要注意だ。街は警備兵だけでなく、市民からの監視もあると思った方が良い。」
含みのある言葉と笑みが不気味に感じる。
裏に隠された意味が俺らの行動を縛ろうとしているのは理解できた。
直接的な情報はないが、少なくとも好意的な関係を築こうとしないのは見て取れる。
そうなってくると1人の人物が黙っていない。
拘束や規則から最も離れた存在が牙を見せながら問いかける。
「それって脅しと捉えて良いのかしら?こんなに健気な旅人にそんなことするなんて酷い人達ね。」
宮武が健気かどうかさておき、関節的な表現を用いての挑発はだいぶ効いているようだ。
普段の宮武だったら子供には聞かせられないほどの罵倒を浴びせていてもおかしくないが、踏み止まったのは英断だな。
これには少しムッとする警備兵だったが、何か暴力的に解決するようなことのなかった。
解放されたので、一刻も早くこの場から立ち去りたくなり会話をするでもなく、街中へと入っていく。
去り際に視界の端で捉えてたのは、無線で誰かに連絡をしている姿であった。
相手が誰なのかは分からないが、話の内容が俺達についてであることは考えなくとも分かる。
そして、これはあくまでも予測の範疇を出ないが俺達を警戒するようにと連絡しているのかもな。
「あーあ、宮武さんが余計なこというから動き辛くなったじゃないですか。」
どうやら上野もそのことには気付いていたようで、完全に警備兵から距離を取った後で文句を垂れる。
情報収集ぐらいしか来た目的がないのに、それがまともに行えないとなると上野の感想が出るのも当たり前か。
だけどな上野、相手が悪いよ相手が。
ただでさえ、不機嫌な宮武の顔をますます血相を変えている。
この距離だと被害がこちらまで来るかもしれないので逃げておこう。
「上野、アタシはさっき我慢してたの。でもね、アンタにだったら殴りかかれるわよー。」
ニコニコと近付いてくる宮武。
最初はじわりじわりと追い詰めるように距離を縮めていたが、上野が逃げ出したことによって宮武も走り出した。
追いかけっこをするのは構わないが何故だかこちらに近付いてくるように思える。
嘘だろ!俺を巻き込むなよ!!!
「いいからそこを動かないでね一ノ瀬。アンタもろとも上野を貫くから。」
そんな超人パワーがあるなら普段から発揮してくれと思うが、これ以上火に油を注いではいけまいと口を塞ぐ。
「「あっ」」
上野と宮武が2人揃って間抜けな声を出す。
俺が避けるとでも思って腹目掛けて殴りかかってのだろうが、諦めてしまっているので動かない。
動けるようになるまでは数分掛かる。
その間も無駄に【回復魔法】を使う羽目になっているのだから被害は俺だけに留まらなかったな。
「悪いな清水、もう十分だ。」
「痛みは取れましたか。」
「身体的にはな。心の痛みは【回復魔法】でも癒せないらしい。」
苦笑いで治療を終え、先を歩いている小原と合流するため走って前へ移動していく。
渾身の冗談だったのでせめて笑って欲しかった。
何をしても上手にいかないので、今日はもう黙っておこう。
この後、謝罪に来た上野と宮武がふざけ合っているのを見せられて余計にテンションが下がったのは言うまでもない。
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