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犯罪者から勇者にジョブチェンジしました〜異世界を救う7人の犯罪者〜  作者: 風野唄
六章 竜に支配された村 アルキフナル
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閑話 僕らはひとでなし

誤字脱字や文章の下手さについてはご了承下さい。投稿予定時間になるべく投稿できるようにします。

よければ、評価とブクマ等していただければ幸いです。

僕の人生はあまりにも普通過ぎた人生だった。

生まれた家は、年収400万のサラリーマンと専業主婦の親で特に家庭環境に問題がある訳ではない。

小学校から中学校までは、公立に通っていて知っている顔が何年も同じ黒板を眺めていた。


何も不満はない。

それどころか、これが人間に与えられた幸せの形の1つなのだと理解している。

平凡に生きて何の苦難や障害とぶつかることなく、完璧な日常を送れているという証拠なのだから。


でも、もう1つの人間の性である強欲の精神が時より自身に語りかけるのだった。

この生活で満足しているのか?と。

1度や2度なら我慢も出来ていたかもしれないが、僕の人生において数えきれないほどの誘惑があったと記憶している。


例えば、夕暮れが綺麗に映える帰り道に車通りの少ない道路を横断するとか。

例えば、学校のテスト中に怖気付きながらもカンニング行為に勤しむとか。


例を挙げればきりはないが、ちょっとした刺激のつもりで行った罪深い行為だった。

もちろん後に後悔に苛まれることも多少あり、その都度次はないと心に誓う。

簡潔に話をまとめれば、どうしようもなくくだらない人間だったということだ。


「おーい、板倉〜!今日、どっか遊びいかね?」


板倉というのは、僕の名前でフルネームは板倉 寛太(かんた)という。

そして、僕のことを呼ぶのは先にもいった同じ顔ぶれの1人である伊藤 才二(さいじ)

どんな人間かを一言で表すなら思春期の健全な男子高校生である。


通りすがる女性の顔を気にしてない振りしながら目の奥で追っているのが良く分かる。

それだけでない。放課後にふらっとよったファーストフードの店員が可愛ければ、聞いてもいないのに後でこそっと教えてくる始末。

恋愛に興味を示すなとは言わないし、そこまで熱中出来るのが羨ましいとさえ思ってしまう。


僕は、普通の高校生に比べるとその感情が薄い傾向にある。

人並みに可愛いとか綺麗とかそういう感想は浮かんでくるし、結婚願望だってない訳ではない。

けれど、どうしてもそれまでの過程に興味が持てず、中途半端になってはいけないと自ら進んで恋愛をしなかった。


「彼女はいいのかい?最近、3人目の彼女が出来たって言ってけど。」


「そうそう、良い彼女が出来たから紹介してやるって!まぁ、今日は友達とデパートで買い物するって言ってたような気がするな。」


「つまり、彼女のプライベートな時間を邪魔したくないけど会いたくてなっている。けど、理由もなく会うんじゃ束縛が厳しいと思われてしまうので、僕をカモフラージュにして偶然を醸し出すという作戦だね。」


「長文でされると心の中は透視されているようで恥ずかしいが、まぁそういうことだ!」


ここまで隠す様子もなく正直に答えられると拒否できないな。

それに今日だって特別重要な用事がある訳でもないので、暇つぶしくらいにはなるだろう。

才二が彼女の前で見せ間抜けな顔でも見て笑ってやるか。


僕は教科書を押し込んで帰宅準備の整った鞄を重そうに担いで、才二の後を追う。

1人で行ってしまうといけないという話だったのも忘れてどんどん先へ進む姿を見て呆れていたのはここだけの話。


この時間のデパートはいつも学生で賑わっている。

近所にはいくつかの高校があって溜まり場にされているからに他ならない。

ゲーセンに、カラオケ、文具や家電、映画だってなんでもここに揃っているからな。

遊び盛りの学生にとっては夢のような楽園である。


しかし、学生というのは何をするのか分からない生き物で、度々問題を起こしては近隣の高校にまで注意喚起がいったものだ。

それでも学生服のまま行っても怒られないのは多くの学生が売り上げに貢献しているからだろうな。

立地条件が良い訳ではなく、近くの住宅街までは車で30分掛かる。

その代わり商業施設や工場、学校が近くに建てられいた。

そうなると休日はかなりの人数が集まるが、平日は学生しか見当たらないというカラクリだ。


「んで、文具店に来たけど本当にいるの?かれこれ、30分くらい経つけど。」


「確かノートが切れたから買い足したいとか言っていたような気がするんだよな。」


情報源があまりに乏しく確実性がないな。

それでも粘ろうとするので、仕方なく店内をウロウロと散策してみる。

出会いとは偶然なので、これがきっかけで運命の出会いがあるかもしれない。

文具か女性のどちらかは分からないが。


何分か歩いてみるとやけに監視カメラが少ないことに気づいた。

何故そんなのことに気付いたのかと聞かれれば答えようがないのだが、内心ではまた何か発作が起こっていただろう。

頭の中でだけ何度も商品を盗むイメージをする。

決して実行する訳ではないと内心で誤魔化しながら、実際の手はじっくりと品定めをしている。


「なんか来なそうだし帰ろうぜ。」


明らかにテンションの低い才二の声を掛けられて咄嗟にカッターを鞄に仕舞う。

別に欲しかった訳でもないが、そういえば家でカッターを無くして不便だったという母の言葉を思い出して手に取っただけだった。

この時にまた棚に戻せば良かったのだが、どうしても挑戦したいという欲に溺れてしまう。

店員にも才二にも悟らせまいと平然な顔をしてやってのけた。


結果は成功したというより、してしまったというのが的確か。

今更盗みましたと返しに行く間抜けな真似は出来ないので帰宅することに。


「あれ?あれって鹿波ちゃんじゃん!」


才二の彼女と思われる人物を発見してテンション上がっている様子。

それも一瞬だったけど。

近くには予定通り友達と思われる制服に身を包んだ地味目な女子生徒とヤンチャをしているのが自慢だと言わんばかりの男子生徒に2名がいる。


「おっ、才二じゃーん!何、これお前の彼女とか?めっちゃ可愛いじゃーん。」


「音無先輩じゃないですか。き、奇遇ですねー。」


才二は明らかに音無という男と面識があるようだけど、好意的な関係でないのは僕でも分かる。


「ちょっとさぁー、貸してくんね?1日で良いからさぁー。」


「先輩、冗談はきついすっよ〜!」


嘘ですよね?と軽い感じで問いかけてみるが、その態度が気に入らなかったの髪を掴んで顔面を殴られる。

僕が殴られた訳でもないのに鼻が痛いという錯覚に陥るのは人体の不思議だ。


「なぁ?お前はさっさと帰れ?」


最初の明るい感じではなく、人を脅す時に使う低いトーンだった。

無言で頷く才二は、彼女だけでなく僕すらも置いていって走り去る。

この場に取り残された僕はどうすきか。

悩んでいるとこちらにガンを飛ばしてきたので、帰ることにする。


何もなく帰れたら良かったのだが、今日は人生において稀な短時間における2度も発作だった。

格好よくナンパから救い出す物語。

描いていまったシナリオは結末を迎えるまで止まることなく進行していく。


丁度持っていた刃物で音無を刺す。

1度ではまだまだ元気そうだったので、何度も何度も刺した。

すると反応が一切返ってこない死体が1つ出来上がってしまう。

冷静になってみると人を殺してしまった事実とそんな凶暴性を秘めていたことに多少驚きはしたものの、心のどこかではこうなる未来もあったのかもしれないと落ち着いている自分もいる。


何が起こったのか分からない様子だったが、血塗れの制服姿の僕を見て状況が理解できたのかもう1人の男子生徒と才二の彼女が逃げ去っていく。


地味目な女の子は、地面に座って動けなくなっているようで近づいて立たせる為に手を差しのべる。

こうでもすれば、手を取らずとも恐怖で逃げ出すだろうと思ったが、奇妙な反応を見せる。


昂揚とした表情で差し出した手を触り、付いていた返り血をペロリと舐めてこう言った。


「やっと見つけた、・・・私の王子様。」


その瞬間に広がる真っ白な閃光が。

咄嗟に目を開けると2人で知らない場所に立っていた。

ご覧いただきありがとうございました!

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毎日22時から23時半投稿予定!

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