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犯罪者から勇者にジョブチェンジしました〜異世界を救う7人の犯罪者〜  作者: 風野唄
六章 竜に支配された村 アルキフナル
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第140話 終盤を駆ける

誤字脱字や文章の下手さについてはご了承下さい。投稿予定時間になるべく投稿できるようにします。

よければ、評価とブクマ等していただければ幸いです。

「おかえり!」


内心では帰ってくるか不安だったはずのライムが俺達を見て笑顔で駆け寄ってくる。


「無事に帰ってきた。そして、全て終わったぞ。何もかもだ。」


賢竜を倒す事には成功した。

また、新たな支配者が近づいてこない限りは平穏が約束されている。


村の住民にもその事を伝えて周ると1人も例に漏れることなく涙を流して喜んだ。

失った者が戻ってくる訳でも、そのことで負った傷が癒える訳でもないがこれ以上増えることはない。

村は一気にお祭りモードになっている。

食材を至る所からかき集めて、まだ日が落ち切っていないのにも関わらず酒を飲み始めるだった。


クルートは村の英雄として扱われていたので、この宴にも参加するはずだった。

けれども、家で娘が待っているとだけ村の人々に言い残して帰る。


家に変えると外の騒ぎが聞こえていたのか不思議そうにライムが迎える。


「お父さん早かったね。村の人達とお酒でも飲んでくるのかと思った。」


「今は家族との時間を優先したい気分だったんだ。それよりもこれって夢じゃないんだよな。」


未来の見えない暗闇に一筋の光が差し込むなど思ってもいなかったか。

それも数日でここまで変わったのだから、現実味がないのも仕方ない話。


「頬をつねってあげるわよ。」


まだ返事もないうちにやってしまう宮武。

せめてクルートが返事をしてからにしてあげろよ。

流石に幸せ真っ最中のクルートも怒り出すのではないか。


どうなのだろうと顔を覗き込んだが泣いていた。

それも1滴、2滴の話ではない。

頬を伝う涙は止まる事を知らず、このままでは身体中の全ての水分が流れ出てしまうぐらいだ。


吊られてライムも泣き出した。

我慢して来たが自分が死ぬかもしれない恐怖とずっと戦って来たのだから何も可笑しくない。

むしろ、今まで良く涙の1つも見せずに耐えて来たものだと感心すら出来る。


2人は泣いてこそいるが笑顔でもあった。


「ご飯出来たので食べてください。」


清水が気を遣って食事の用意をしてくれる。

ライムは心配であまり食事が喉を通らなかったのか元気は少ない。

クルートや俺だってあれだけの戦闘を行った後なので腹が減っている。


ガツガツと食事にありつく様は飢えた獣の様だが、それでも箸が止まらないほど美味しい。

何か特別な調味料でも入っているのかと清水に尋ねたが何も入っていないようだ。

つまり、味に関係しているのは気持ち的な要因が大きい。


「1人で食べてる時はご飯の味なんて全くしなかったのにみんなで食べると美味しいね!」


黙って頷くクルート。

もはや、感情が揺れ動きすぎてまともな会話すらも困難になっている。


「そうだ!俺としたことが忘れるところだったぜ。」


何かを取りに奥へと行く。

戻って来た時には長い棒状の物が包みに入った状態で持ってこられた。

忘れていたが本来の目的はこれだったな。

もしも、クルート自身が気づかずにいたら、少なくとも俺はそのまま別の街へ移動した自信がある。


「こんな物しか渡せないけど、本当に良かったのか。」


「こんな物って言うが家宝だったんだろ。赤の他人にそんな重要な物を渡していいのか?」


「俺には必要のある物じゃないしな。剣だって、使われずに燻っているよりは日の目を浴びる方がよっぽど健康的だろうしな。」


後悔など一切ないようなので素直に受け取る。

俺は受け取った直後に気付いたことが1つあった。


「これは誰が使うか決めてなかったな。俺は進化刀をもっているから二刀流の練習でもしない限り使うのは難しい。」


「私だってうまく使えないわよ。それよりも、近接戦闘の機会が多い上野か大城が持ちなさい。」


「僕は持ってもいいですけどね。炎を纏う剣とか絶対にカッコいいですよ!」


「俺も持っていいが、武器は所持しているから使う場面が限られるな。上野も良いと言っているが、ワンドを持っているなら使い分けが相当上手で器用でもない限り持ち腐れるだろう。」


そうなると該当するのは1人に絞られる。

どれだけ使い熟せるのかは後からでも鍛え上げる事ができるので、暫定で条件の合う者に渡した。


「ワシが適任ということか。【反転】があるから必要になればいつでも渡せるしね。」


そこまでは考慮していなかったが、賢い考え方ではある。

もちろん、秘宝のための荷物持ちにしたい訳ではないので剣の扱いには慣れてもらうことになるけどな。

戦力的には大幅な強化に繋がっていて、いよいよ魔王討伐も現実味を帯びて来た。

残る懸念点は、俺と小原が記憶を取り戻していないことと魔王の実力が計り知れないことだ。


この村で小原が記憶を取り戻すのではないかと予測していたが、毎回毎回行く場所で記憶を取り戻す訳ではないよな。


魔王の実力は言うまでもなく強力で、他の魔族を統べているのがその証拠である。

倒す為に必要な3つの秘宝が揃っているので後は単順な能力を突き詰めるのみだ。

その点に関しては不思議と心配していない。

根拠のない自信を人は慢心と呼ぶが、これに関してはその限りでないのだから。


むしろ、最後の秘宝が日本に関連していることの方が気がかりである。

洞窟内にあった竜魂も持って帰ることは出来たが、結局は洞窟内にもヒントになりそうな物は落ちていなかった。

日本人転生者である3人から話を聞いておくべきだったか。


「この後はどうすんだ?このまま直接魔王の城に向かうか?」


「それは危険過ぎる気もするけど。だって、死んだら簡単には生き返れないんだよ?」


「ヴァイスがいるからなんとかなるだろ?」


「何言ってんのよ。犬が死んだら蘇らせてくれる訳ないでしょ。」


あ、そう言えば俺がエルフの森の戦いの時に死んでいることは伝えてなかったような。

隠したいほど疾しい訳ではないが、なんとなく悪いことをしたような気持ちになり目を逸らす。

やってから気付いたが、目を逸らしてしまった方が詰められる可能性は上がらないか?


案の定、宮武に問いただされる時間が発生する。

何故かヴァイスも呼ばれて一緒に座らされている。

状況は一切理解していないヴァイスも宮武の剣幕に震えながらお座りを披露せざるを得ない。


俺も未だに全貌を把握できないヴァイスの能力を説明していると半信半疑ながらも納得してくれたようだ。

実際に上野と大城の傷を癒したことがあるのも短時間で理解してもらった要因の1つだと考えられる。


「とはいえ、2度も3度も同じ事が出来るか分からない不確定要素で進めるほど甘くないだろ。」


「そうだとするなら近辺の村で情報を収集するか。」


「僕もそれが良いと思います。恐らく近辺の村は、魔族の息がかかっていると思われるので情報収集には打って付けですからね。もちろん、聞き出す難易度も高いでしょうけど。」


地図を用意して目的地を確認すると候補が1つ浮かび上がる。

土地の名はガーデハ。


名前は有名なのかクルートとライムは聞いただけで嫌悪感を見せる。


「ガーデハに行くのか?お前ら、あそこだけはやめとけ。どれだけ危険だと思ってる。」


「危険なことぐらい今までたくさんあった。今更やめる訳にはいかないだろ。」


後少しの所まで来たのに引き返す訳には行かない。

心配そうに見送る2人を背中で感じながらも歩き始めた。

ご覧いただきありがとうございました!

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毎日22時から23時半投稿予定!

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