第135話 竜を喰らうもの
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「ちょこまかと動くところは羽虫も人間も所詮同格。私の足元にも及ばない相手ということだ。挨拶も程々にしてと、【竜の呼息】」
ドラゴンのブレス系はかなりの威力があることを学んでいる。
相手が火を使うならグローブで受け止めることも可能だったかもしれないが、風系統のスキルを使うようだ。
俺には幸い【吸収】というスキルがあるので受け止めることは出来るが、他の人は自分で身を守らないといけない。
対処できるのか、信じて良いのかと不安になるが、1人の男によって全員守られる。
「【幻想の豪雪】は攻めだけじゃなくて守りにも活用できる。出し惜しみ出来る相手じゃないから、序盤でも使わせてもらうぞ。」
「いや、完璧な判断だ。俺も全員は見てられないからな。」
「悪いがお喋りをしている暇はない。この氷もいずれ突破されるから避ける準備をしておけ。」
その言葉の直後には音を立てながら崩壊する氷壁。
攻撃した瞬間よりも威力は収まっているので各自で対処が可能だろう。
しかしながら問題は刻一刻と移り変わるようで、次は賢竜の姿が見当たらない。
透明になるスキルまで使えるのかと周りを探っていると、人化した賢竜が低い体勢で襲いかかっているのが見えた。
大きくなったり、小さくなったり忙しい奴だ、と文句を言いたくなるぐらいには効果的だ。
これだけの時間敵を見失ってしまえば安易に接近を許してしまえば、こちらの取れる選択肢は被弾覚悟で避けるか正面からぶつかるかぐらい。
加えて狙われているのは俺ではなく清水である。
回復手段から潰しておくのが定石だと知っているのだろう。
「危ない!【神通力】!」
近くにいた井村が進化したスキルで賢竜を止めようとする。
相手が人間の姿であることもあって進行を遅らせることには成功しているが、着実に距離は縮まっている。
「ナイスです井村さん!間に合いました!」
上野が間に割って入りスキルを発動させる。
自らこちらに近づいていたので回避するのは不可能だろう。
風がチリチリと音を立てて発火する。
その光は色鮮やかで、戦いの場で無ければ見惚れてしまうそうなほどだ。
「【火魔法】”蛍火返し”」
あれは恐らく自分で編み出したオリジナルの技だろう。
何せ技名が明らかに魔法とは程遠い和風だからな。
オリジナルと聞くと効果の程が心配になるが問題はない様子。
むしろ、あの賢竜が警戒して人化を解き、距離を空け、安易に近寄れなくなるくらいには強い。
「残念ですよ。近づけば腕の1つくらい捥いであげたのに。これから苦しくなるより今楽になった方が良いですよ?」
言っている事と顔の表情が合っていなさすぎて味方である俺まで引いてしまう。
賢竜も初めて見る人種なのか動揺が見て取れる。
この世には計り知れない狂気を持って生まれた人間がいることを知らないからだ。
ただ、送られて来た怯えて無抵抗で圧倒的な弱者を甚振る側から、今日初めて狩られるかもしれないという恐怖を覚えただろう。
時間経過で光はより一層の輝きを強め最後には爆発する。
爆風だけで威力がインフェルノと同等であることが分かるな。
賢竜もインフェルノの1つや2つで恐怖することはないが、数が100を超えていて1つ1つがかなり小さい。
もしもあのまま突っ込んで入れば、灰になっていたかもな。
「人間は弱者であるべきだ。常に私の下である必要があるのだ。争うな、受け入れろ。限界を越えし暴風【テンペスト】」
あのブレスなど比較にならないほどの威力。
立っているのがやっとで気を抜けば体を持っていかれそうだ。
そうなったら最後。天井付近から落とされて死を受け止めるしかない。
だが、踏ん張っているだけでも吹き荒れる風によって無数に斬りつけられる。
ここまで大きく地形に影響を与えるスキルが使えるのは流石ドラゴンの成体と言ったところ。
俺達の狼狽える姿を見て自尊心を取り戻したのかニヤニヤと満面な笑みを浮かべている。
黙って死にゆくしかないのかと思わせるほどの大技だが、こちらにもまだまだ出していないスキルが存在する。
「進化刀に秘められた新スキル、ここで使ってみるしかないだろ。【逆鱗】」
神がここで使えと呼びかけてきた。
使い方も知らないのに一か八かで使用する。
まだ何も起こらない。
それでも何も言わずに攻撃の構えで待機する。
起こるはずの何かを待っている間は騒がしく他の仲間が突破口を探しているが、集中しているせいか俺の耳まで届かない。
聞こえるのは自分のゆっくりと鼓動する心臓の音だけ。
傷が数えきれないほど増えていく。
するとその分、自分の体の奥底から力が漲ってくる。
しかし、まだ足りない。この邪気を喰らった竜の如き食欲を持つ進化刀は、力をまだまだ欲しているようだ。
「テンペストはただ暴風に閉じ込めるだけの技じゃない。さぁ、この技の真の効果を知って震えろ。」
視線は常に賢竜を捉えていたために気づかなかったが、風は1箇所に集まって黒い塊へと変化している。
バチバチと小さな音と光が見える。
「今更気付いてもどうしようもないね。【雷剛】」」
どれだけ丈夫な人間でも感電死は確定だ。
本当であれば、ここから立ち去って避けなければならないが不思議となんとかなるような気がする。
進化刀は今まで様々な窮地を脱し俺を強くしてきた。
もしも、ここで死ぬ様なことがあれば、進化刀の実力も俺の運もそこまでだったという事。
「全員俺の後ろに待機してくれ!この一撃は俺がどうにかする。」
策がある訳ではないが、それは他の人も同じだろう。
黙って俺の指示に従ってくれる。
「アンタ、命任せるからには失敗なんてするんじゃないわよ。」
全員の気持ちを代表して宮武が活を入れる。
命を背負うのは重たいが不思議と悪くないと思えた。
短い人生の中で物語の主人公でいられる時間はそう長くないからな。
電気を纏った黒雲が進化刀とぶつかり合う。
斬り裂くでもなく、正面で受け止めて徐々に刃先が力を吸っている。
その間は俺にダメージが来ているが耐えるしかない。
痛みで進化刀を離してしまいそうになるが、グッと握る力を込めて絶対に手放さないと誓う。
それと意識を保っていられるのもそう長くないはずだから、早く喰らいつくしてくれ。
「無駄に足掻くね人間ってのは。どれだけ足掻いても結果は変わらないっていうのに。愚かで可愛いね。」
「賢竜ってのも無知らしいな。確かにこの世にはな、弱者でありながら強者に立ち向かおうとする馬鹿も多い。けど、たまに想像もしていなかった逆転劇を見せる奴らも存在するんだぜ。」
まだ雷剛は残っているが進化刀の準備が終わったのを感じる。
これだけ俺を待たせたんだから、それに見合うものを見せてくれよ。
一度荒ぶる力を鎮めるように進化刀を鞘に収める。
俺の制止が無くなった雷剛がこちらへ再び襲いかかる。
どこで習得したか自分でも分からないぐらい、目にも止まらぬ速さの抜刀を繰り広げる。
同時に賢竜以上の迫力を感じるドラゴンと見紛うほどの斬撃が発生した。
あれだけ苦戦した黒い雲は静かに消えてなくなり、斬撃はその奥にいる賢竜にまで襲いかかる。
図体だけは立派にでかい賢竜は避けられないと判断したのか正面で受け止める。
そうなると後は純粋な力勝負。
拮抗する力と力のぶつかり合いを制したのは、【逆鱗】だった。
初めて流れた顔の血に怒り狂い雄叫びを上げる賢竜。
それだけで騒いでるようではまだまだだな。
本番はこれからだって言うのに。
相手は神でなくただのドラゴンであると知った俺達は反撃の狼煙をあげる。
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