第134話 人の姿をした何か
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人の形をしているのは何故なのか。
それは聞くまでもなく語り出された。
「人って生き物は実に興味深いよね。私も生まれ変われるなら人が良かったよ。どうして神は不平等なんだろう。」
「人に興味あるなら、何故生贄を取って殺すんだ。生かして観察でもしてみればいい。」
賢竜はわざと大きな驚いたリアクションを見せる。
まるでそれは気付かなかったと言わんばかりだが、明らかにその選択肢はないと分かる。
人の死は、玩具が壊れるのと同等くらいにしか思っていないのだろう。
「君は人間の中でも特に興味深いね。」
ゆらゆらと近付いて来る。
まだ人間の体に慣れていないということは、その体を最近手に入れたことか。
この隙に致命傷を与えてやりたいところだが、誰も近寄ることはできない。
賢竜の周りには人が近付いたら死を感じるような負のオーラが溢れている。
だが、これ以上の接近を許せば被害が発生するのは避けられない。
1歩後ずさろうとするがそれを阻む様に腕を掴まれる。
「随分と荒々しい歓迎だな。」
掴まれた握力で表情が歪んでしまう。
それでも俺の言葉には耳を傾けないで手を離そうとしない。
この段階で腕にヒビが入っているのは確実だ。
苦しむ表情が見れて満足なのか不気味な笑いを出す。
やられっぱなしでは腹が立つので死ぬことも覚悟で蹴りを決める。
その瞬間、派手に吹き飛ばされる賢竜。
俺が超人になったようにも思えるがそうじゃない。
他の仲間を油断させる為の演技なのかと思ったが、弱いフリをするなら最初から人間のフリを貫き通すはずだ。
てか、蹴った俺の方が足を痛めるとかどれだけ硬いんだよこいつ。
距離を取ることに成功した俺はとりあえず清水に【回復魔法】を使ってもらう。
痛みなどまるで最初から無かったように回復するということはスキルレベルもかなり上がっているな。
「んで、全員今の流れ見て気合いは入ったか?言わなくても分かるよな。ボーっしている奴から死ぬぞ。」
気合いを入れるのは俺の役目ではないが、不服ながら文句を込めて意志の確認をする。
戦える戦えないを考えないでいうと、その場に俺以外7人もいた。
援護に入らないのはあり得ないということだ。
もちろん、それが一瞬の出来事であることと相手の計り知れない恐ろしさがあってのことだと理解している。
まだ、始まったばかり。長い長い戦いになることが予測される。
これから後はビビってる時間はないだろ。
「何言ってんのよ。痛がってるアンタを見ていたかっただけ。あえてよ、あえて!」
宮武が前に踏み出す。
彼女なりの返答は素直じゃないがいつもの調子を取り戻してることだけ分かる。
「回復してもらったけど思い出すだけ痛そうですね。でも、死んでないだけマシと考えましょう。」
上野もそれに続く。
普通の会話をしながらも脳のリソースは攻略法を見つけ出すことに割かれているだろう。
「後ろで休んでいろ。何も出来なかった分は己で取り返して来る。」
大城が反省を述べる。
人を欺き、取り繕う人間でありながら、その根底には真面目な部分が眠っていることを強く印象付ける。
「朝は珍しく起きて来たと思ったら、こんなことになるなんて。やっぱり不吉なことの前兆だったんですね。」
清水が思い出したように語る。
そう言われるとそんな気がしてくるので言わないでほしかった。
「あ、あぁ。ってことは、わ、私にも不幸が?」
小原がそれを聞いて怯え出す。
けれど、この場から立ち去らないということは彼女の中で決意は出来ているはずだ。
「いやぁー、こういう1人1人の意気込みを聞いてチームがまとまり出すのは、映画の主人公たちみたいで良いね。」
井村がマイペースにこの状況を楽しんでいる。
彼自身も物語の主人公であり、この場に必要なピースだ。活躍してくれることを願いたい。
「俺も戦う。俺だって村を守りたちからここへ来たんだ。」
クルートが戦う意志を示す。
例え、戦力にならなくても戦わなければならない時があるのだ。
しかし、それを邪魔するように敵が起き上がる。
それだけで広がるプレッシャーは、今決めたばかりの決意を揺さぶりそうだ。
これ以上、決意が揺らぐ前にこちらから攻撃を仕掛ける。
「【火魔法】”インフェルノ”!」 「【狙撃】!」
2つに遠距離攻撃が賢竜に襲う。
どうやら避けるどころか正面からぶつかりに行くつもりらしい。
激しく燃える炎は確かに竜の体を燃やし、放たれた弾丸は寸分の狂いもない精度によって額を貫く。
「やっぱり人間の体やめた。使いにくいし弱いからね。この姿が1番だ。」
体は何倍にも大きくなり、白銀に輝く翼を広げながら咆哮を放って来る。
翼によって発生した翼によって吹き飛ばされてしまいそうになる。
それに、咆哮によって耳を破壊されしまいそうだが、その場に踏みとどまるのが精一杯なので耳を塞げない。
「第二形態に入ったということか。まずは、相手が仕掛ける前にこっちから。」
俺の気持ちに反応したのか鞘に収めている進化刀が輝き始めた。
ここで使えと語りかけて来る様だ。
鞘から抜き出した進化刀はいつも以上の禍々しさを放っている。
名前:進化刀 六式 【黒殲龍】
説明:進化刀の六段階目の姿。賢竜の邪気を吸ったことにより覚醒した。成体のドラゴンと互角に渡る会えるほどの力が込められている。
スキル:【進化】Lv6 【頑丈】Lv8 【攻撃力上昇】Lv9 【吸収】Lv6 【一心化】Lv3 【風装】Lv2 【逆鱗】Lv1 ???
今の状況にピッタリな進化を遂げた。
これだと神が俺達も見ていて試しているようにしか思えない。
「【一心化】+【風装】。これで翼生えたトカゲのお前は追いつけないぞ。」
瞬間移動系のスキルを使っていないのにも関わらず、俺の刀は既に賢竜の首を捉えている。
まさか、人間如きに追い詰められると思っていなかったのか賢竜の反応が遅れた。
刃先が首の鱗に届いた瞬間、柔軟にしなる尻尾が俺を襲う。
このまま攻撃を続けて首を斬り落としたいところだが、あの攻撃を喰らえば相打ちで終わってしまう。
いや、むしろ俺の攻撃が中途半端に終わることも。
「危ないよ一ノ瀬くん!【反転】」
井村の機転により死に至ることは免れた。
それどころか入れ替えたのは宮武の魔導具だったようだ。
繊細なガラスが強烈な一撃によって破壊される。
飛び散る破片と共に飛び出す閃光が、ガラスに当たって乱反射しながら敵の視界を奪う。
合わせて前衛に駆け出す上野と大城。
2人は最初から全力を出しているようで【悪心】が発動している。
このままだと2人が功績を独占しそうなので俺も負けじと走り出した。
一方、賢竜はというと長時間怯んでいる相手でもなく、閃光の効果はもうなくなっている。
まぁ、この距離まで来れば関係のない話だけどな。
「侮っていたぞ人間。こうも可能性を秘めているとはな。1人くらい生け取りにしたかったが、血の海になるのは避けられないな。」
短い前足で殴る素振りを見せる賢竜。
おいおい、当たるはずのないだろと思ったが、空間が割れて生まれた隙間から放たれる衝撃波が俺達を襲う。
反応が良かったので誰もその攻撃に当たることは無かったが、後ろの壁は爪痕を残すように抉られている。
直撃で死という極限が、俺達の闘志へ更に火を付けるのだった。
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