第130話 抗えない敗北
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当たり前のように鱗は硬く刃が通らない。
いや、それだけならまだいい。
近付いたら問答無用で自身の鱗を揺らした摩擦によって爆発を起こす。
そんなことを永遠と思えるほど繰り返されるので埒が明かない。
「何度も何度もめんどくせぇー。」
本音がポロリと口から溢れる。
それの意味が伝わった訳ではないだろうが、炎のブレスが目の前に吐き出された。
広範囲の攻撃ではあるが、俺には火が効かない。
「使い所が2度とないと思っていたが、まさかこんな所で使うことになるとはな。」
ギリギリまで広がった炎を防ぐように手を前に出す。
俺とその後だけは攻撃が全く通っていない。
前に作っておいたグローブがここで役に立つと思っても見なかったな。
それに少しばかり戦って分かったことは、個体の身体能力や生命力は強化されているが肝心な攻撃手段に工夫が見られない。
過去に戦闘経験のある敵を作り上げているのは恐らく賢竜だろうが、そうだとしたら爪が甘すぎる。
この世界に生まれた奴であるなら新種であってもいちいち攻撃がどうだったとか覚えていないかもしれない。
が、俺達にとってはこの世界で起こるすべてのことが新鮮に感じる。記憶に残っているに決まっているだろ。
「俺は必要ないようだから他の魔物の対処に移るぞ。」
待てと呼び止めたいところだが、それは出来ない。
後ろを振り返ると魔物はゴブリンだけでなくなっていた。
ここは比較的広い空間ではあるが、それでも所狭しと何かしらの存在が確認できる。
「文句は後から言うから他の奴全部倒してきてくれ。」
「それだと俺の負担が大きすぎるだろ。ドラゴンを1人で担当できるのなんて一ノ瀬くらいだから、任せるしかない。」
それ以上は俺の返事を聞く前に走り出していた。
一刻も早く対処しなければいけない状況ではあるので俺もそうして貰えると戦闘に集中が出来る。
俺が会話を終えるまで律儀に待っていた火竜。
いや、本当は攻めてこようにも進化刀とグローブの脅威に怯えて迂闊には攻められないというのが事実だろう。
もはや、目が合った瞬間に取って付けたように雄叫びを上げるのも可愛いものに見えてくる。
このドラゴンは本能で勝てないと知っているのかもしれない。
右へ左へ鋭利な爪を用いた近接攻撃を仕掛けてくる。
あんなちんけなブレスでは通用しないことを理解してのことに違いない。
しかし、近付いて爪や爆発を連発しても今の俺だったら簡単に対処できる。
「まずは、動きを止めるところから始めるか。【影操作】」
身動きの取り辛い空間であるからこそ動きは少ない。
体長は大きいのに動きが鈍ければただの的だ。
案の定避けることも出来なかったファイアードラゴンは、自分の背後から伸びた黒い影に捕まってしまう。
必死に暴れて影を解こうとするが、そうすればするほど縛り付けを厳しくしていく。
「じっとしてくれないと影の耐久力が持たなそうだな。」
焦ることもなく状況の分析が進んでいく。
力を出すのを躊躇っていてはいつまで経っても倒せずに時間だけが過ぎていくので、仕方なく進化刀に力を込める。
もうだいぶ扱いにも慣れてきたので力の加減は完璧に行える。
「これで30%ぐらいか。これでお前の自慢の鱗も通用しなくなる。【風装】」
洞窟内にわずかに吹いていた風が俺の全身に集まりだす。
まるで自分の体ではないかのように軽くなるのを感じる。
まずは挨拶代わりに翼を断ち切る。
進化刀の刃が届くまでの時間は1秒にも満たない。
ついに俺も人間を辞めてしまったのかとしみじみしていると、地面を無様に這いながら喰い千切ろうと試みてくる。
人間であるなら戦意喪失しているだろうに、逃げるという選択肢がない生き物というのは難儀なものだ。
「【分身】、これで最後にするか。」
ドラゴンは囲うようにして現れた分身に動揺し始めた。
いくら肉質まで硬く刃が通るか分からないからと言ってこれだけの数から攻撃を貰えば一溜まりもない。
次々と来る進化刀の攻撃をどうにかして防ごうとするが、どうすることも出来ず傷だけが増えていく。
ダメージをかなり喰らっているからか動きも鈍くなり始めた。
これ以上時間を掛けてしまうと可哀想になるのでここで終わらせよう。
もはや結果は言うまでもなく俺の圧勝。
至る所から出血していたドラゴンの首をスッパリと斬ることで勝敗が決まった。
最後に無抵抗だったのは、自分の死を悟ったからなのか、それとも動く余力もなかったのか。
今はそんなことを考えている暇もないくらい周りが騒がしい。
「こっちは終わったぞ。援護欲しい所はあるか?」
「アタシの方に敵が多いわ!」
「こっちに援護を!」
どこもかしこも援護を求める声ばかり。
まずは最初に声を上げた宮武の援護に行き、その後は近い所を順々に巡る。
全部終わる頃には額から頬につたる汗が生まれていた。
とりあえず、敵がいなくなった安堵感からその場に座り込んでしまうクルート。
何もしていないだろお前はと言いたくなる所だが、この張り詰めた空気の中にいるだけで疲れが出るのは当たり前か。
俺も真似して地面に倒れ込む。
これが意外とひんやりとした地面で気持ち良い。
自分のアイテムボックスから水を取り出した1口飲んだ。
少量飲んだだけで体力は3割ぐらい戻ってきたのを感じる。
「なんか一気に騒がしくなりましたね。それに敵は僕達が戦ったことのある魔物ばかり。」
「賢竜の仕業だとすると、居場所に近付いて来てるんじゃないか?入り口前はそこまでの仕掛けが無かったが、奥に進むに連れて脅威が増しているからな。」
「歩いた距離で考えても後半に差し掛かっていて不思議じゃないわね。というか、そうで合ってもらわないとキツくて倒れるもの。」
やはり地形が分からないというのは最大の弱点になる。
ゴールの見えない冒険を強いられるのは精神的に来るな。
今日これ以上の探索は無理と判断し、キャンプ地を形成する。
冒険の暦も長くなってきたからか全員の手付きは慣れを感じさた。
テントに入ってご飯を待つ間、各々がしたいことをしている。
上野は、ずっと俺に喋り掛けてくる。大城は、筋トレで井村が読書。
本当に今まで戦っていたことを感じさせないぐらいこの光景が自然と馴染んでいた。
「聞いてるんですか?一ノ瀬さん。」
「あぁ、なんだっけ?」
「全く聞いてないじゃないですか!酷いですよ!」
聞き流してだけあって聞いてない訳ではないと屁理屈を頭の中だけで並べ、会話がなんだったかを探る。
「で、話を戻しますけど、賢竜の実力ことですがどう思いますか?」
「どうも何も今までの洞窟内の現象が賢竜の仕業だと考えるとかなり強力な力を持っているだろうな。あとは、名前の由来にもなっているぐらい知能は高い。」
「うーーん、魔物がこれだけのことが出来るでしょうか。あの時、後ろでクルートさんが話していた賢竜以外の脅威。これが気になるんですよ。」
確かにあの言葉を無視するこは出来ない。
現世に未練を残すほど、伝えたかった言葉なのだから。
頭を悩ませながらも夕食はしっかりと食べて元気を取り戻す。
そして、監視を変わりながら睡眠へ。
1番最初が当たり前に俺が監視をする役なのはどうにかしてくれと思いながら、情報を整理して時間を潰した。
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