第119話 道中の危険はお手のもの
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アルキフナルという目的地まで徒歩での移動になった。
地図があるので迷うことはないが、距離で考えるとまぁまぁ離れている。
それもそのはず、アルキフナルの隣にはドラゴンの住み着いた洞窟があり、本当であれば近隣に人里を作るのは難しい。
「こういう時って誰か歌を歌って盛り上げるもんじゃないですか?」
もう飽きたらしい。
歌を歌えと俺の方を見て催促して来たがそういうのは俺の役目ではないだろ。
「だとよ、大城。何か得意な歌でも歌ってやったらどうだ?」
あえて1番歌に興味がなさそうな大城に話題を振ってみる。
これで返事がなければ微妙な空気になって話題も流れるだろう。
「演歌でいいなら歌ってやるぞ。」
「え、演歌って。まぁ、J-popって言われるよりは納得できるけど。」
「冗談だ。歌いたいなら勝手に歌ってくれ。別に止めはしない。」
強要はするなという忠告をいただいたので、狙いとは違った形だが話題を流すことには成功した。
・・・!?
今、大城が冗談を言ったのか?あの真面目が取り柄の人間が?
これは相当やばい。
不吉なことが起こる予感がしてならない。
「顔に出ているぞ一ノ瀬。失礼な奴だ全く。良かったな俺の拳が届く範囲にいなくて。」
手をポキポキと鳴らしながら俺の方を見ずに話掛けて来た。
これも冗談のうちの1つだよなと内心で思っているが余計なことを言うのはやめておこう。
「暇なお前らに朗報だ。前方に魔物を確認したから軽く相手をしてくればいい。」
朗報に見せかけた悲報だった。
誰が嬉々として魔物の相手という重労働をしなければならないのだ。
いや、訂正。
宮武と上野は狩りを楽しむ準備をしている。
一方魔物の方はというとこちらに気付いた気配はない。
その辺ののんびりと散歩しながら生い茂った草を食べているだけ。
草食の魔物であれば人間への被害も少ないだろうからわざわざ倒す必要もないが、もう動きだしている2人を止めるのは不可能だ。
「あの鹿みたいな魔物をどっちが倒せるか勝負よ!」
「意外と子供みたいところあるんですね!でも、火力で言えば僕に勝てるとは思えませんけど。」
「こういうのは容量よ容量!アンタ終わった時には泣いて謝ることになるわよ。」
群れでいたはずの魔物も1分も持たずに殲滅される。
それでいて、2人とも顔に返り血を浴びたまま笑顔でいるのが狂気的過ぎる。
魔物で暇を発散するとこうも残酷な描写が生まれるのか。
「もう十分だろ。その辺にして先に進むぞ。」
「あれ?もしかして一ノ瀬さんも参加したかったんですか?」
「そんなわけないだろ。周り見ろ、ドン引きじゃねーか。特に小原が怯えてるぞ。」
井村と清水は呆れているという感情が強いかも知れないが、小原は苦手な血を浴びて笑顔を振り撒く2人に恐怖の感情しか湧いてこないようだ。
怯えなくていいのよと近付く宮武を全力で清水が止めるというなんとも平和?な時間が過ぎている。
大城がそんな様子を尻目に目的を目指しているので、俺も後の奴らを放って置いて先へ進む。
「どれくらいで着くと思う?」
「距離だけで見れば最速で1日も掛からなかっただろうが、諦めて明日までに着くように変更だな。」
地図を見ながら仕方がないとため息をこぼす大城を見て、いつも頼りにしているのが申し訳ないと思う。
今度、大きな街に行く機会があれば普段の苦労を労ってやるしかないな。
平原が終わると定番の森へと続いている。
エルフの森のような特殊な環境ではなく、日本にあってもおかしくはないくらい普通の場所だ。
危険性もそこまでないのか今までにあった森と違って綺麗舗装された一本道がある。
それにまだ新しいであろう2本の轍が残っている。
頻繁に人が行き交うということなのだろうか。
「この先は目的地のアルキフナルしかないんだよな?それなのに道が綺麗だ。そんな村に何の用事があるんだ?」
「恐らく目的は村じゃないな。洞窟のドラゴンを討伐するために人が寄るんだろう。現に俺達がその1つだからな。」
「でも、有名じゃないんだろ?だから、街では名前すら出てこなかった。」
大城の意見は納得できる部分も多いが、そこが唯一引っかかる。
アルキフナルはドラゴンのいる洞窟しして有名な村ではない。
そもそも知名度もお世辞でも高いとは言えないし。
「確かに気になるが、俺達の目的とは関係ないだろう。考えても無駄だからやめておけ。」
何も情報がないところから真実に辿り着くのは難しいからな。
それならいっそ考えないという大城の選択肢の方が楽か。
「何の話をしてたんですか?」
後ろでの騒ぎを終えて暇になったの上野が先頭を歩く俺達と合流する。
こいつに1つでも謎を与えると興味を持ってしまうので、さっきの会話の内容な伝えないことにした。
とは言え無視をするわけにもいかないので、適当に返事をする・
「まぁ、後どんくらいかなぁって。」
「中身のない会話ですねぇー。僕はてっきり好きな女子とかいんの?みたいな会話をしているかと。」
「そんなフレッシュな学生みたいなノリを俺達がしていると思ったなら感覚がおかしいから清水に治してもらえ。」
「大城さんがさっき冗談言ってたので僕も冗談を言っただけじゃないですか。」
可哀想なことに周りの人間は冗談が下手なやつが多いらしい。
俺もそうなのではないかと思うと恐怖で震えるな。
それこそ血に怯えてた小原みたいに。
「アルキフナルって結局どんな場所なんでしょうね。ドラゴンの住む洞窟が近いってことくらいしか情報がないですけど。」
結局、謎多き村の話に戻ってしまう。
せっかく考えないようにしていたのに。
途中から参加して来た人に合わせて終わった話題をもう1度話すとかあるあるだよな。
「おい、コラー!!!待っててぇーー!」
話を遮るように聞こえて来た怒号。
俺達に向けられたものかと思ったがどうやら違うようだ。
怒鳴り声を上げる男の前には、裸足で道を走る少女。
どちらの味方をすればいいか分からないが事件性を帯びているのは確かだ。
清水達もこのことに気付いたらしく走る少女を捕まえて宥める。
かなりの距離を走っていたのか息の乱れが中々治らない。
「ありがとう助かった!本当に困っていたところだったよ。」
状況もろくに説明しないまま少女を連れ去ろうとしているので、腕を掴んで止める。
「ちょっとばかり説明が足りていないんじゃないか?」
「な、なんだよいきなり!」
多少荒くなってしまったからか、動揺している。
しかし、名前くらい名乗ってもらわないと困る。
「落ち着いてください。この子ももう逃げる様子はないのでなぜ彼女を追いかけていたのか説明してください。」
はぁーっとため息をつく男。
仕方がないと言わんばかりに状況の説明に入った。
「俺の名前はヘルメイト・クルート。んで、そこにいるのが娘のヘルメイト・ライム。親子喧嘩で外へ逃げ出すのは今月で10回目だぞ。」
月10回ってことは、1週間に2回も家出している計算になる。
それはあんな剣幕でこの子を追いかけるわけだ。
悪い奴かとも思ったが、どちらかと言えば何度も家出する娘をその度に連れ戻す良い父親じゃないか。
「ライムちゃん。私達も付いててあげるからお父さんとちゃんと話をしましょう?」
小さくうなづいた娘を見て、父親は安堵の表情を浮かべる。
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