第115話 食事はいつでも盛り上がる
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エルフの森に戻ると全員の姿が見える。
どうやら1番最後なのは俺だったようだ。
「遅いじゃない。まさか、逃げてきたんじゃないでしょうね。」
「馬鹿なことを言うな。勝ってここに戻って来たに決まってるだろ。なんなら、俺の戦いを語り尽くしたいくらいだ。」
「興味ないから遠慮しておくわ。」
口ではいつも通りの悪態をつく宮武だったが、体はボロボロなのが一目見れば伝わってくる。
他のメンバーだってそうだ。
上野と大城に関しては俺が来た時からずっと回復魔法を受けているので、かなりの重症だったことが分かる。
「これは全員勝ったという解釈でいいんだよな。」
見方によっては、俺達が敗北して逃げて来たと思うだろう。
「当たり前じゃない。逃げてくるような奴はここにいないわよ。」
冗談ではなく真面目な顔付きで返事を返された。
何が起こったのかはいつの日にかゆっくりと聞くことにしよう。
「皆様、本当に何から何までありがとうございました。」
エルフに長が代表して礼を述べている。
「俺達がしたいと思ってしたことだ。礼を言われる覚えはない。」
「何格好つけてんのよ。ありがたく受け取るものよこういう時は。」
勝てるかどうかは置いておくと、エルフ達は自分達だけで戦おうという意志を見せていた。
それをわざわざ俺達が代わると申し出たのだから礼を言いわれる筋合いはないのだが、ここは素直に受け取っておこう。
「そのせいでお仲間様がかなりの重症を負ったようで。」
「気にすることはない。あいつらはすぐにでも元気になりますよ。」
「ワンッ!」
ヴァイスも大丈夫だと言いたそうに鳴き声を出した。
そして、重症の上野と大城の近くまで行くと傷のある場所をペロペロと舐め出した。
傷口に細菌が入ると悪化してしまう恐れがあるので引き離そうと近付く。
「・・・あれ?皆さんもう終わったんですか。」
「俺の傷が治っている。誰が治してくれたんだ。」
あれほど回復スキル持ちが苦戦していた重症の手当を舐めただけで完全に回復させるヴァイス。
忘れていたが、俺が一度死んだ時も治してくれたのはヴァイスだった。
「お前らの命の恩人はヴァイスだ。しっかり感謝をしておくように。」
2人とも俺が冗談を言ったのかと思っているのか次の言葉がない。
「本当にその犬が治したのよ。ペロペロって舐めてね。信じられないなら全員に聞いて回ったら?」
宮武の証言もあってようやく真実だと気付いたようだ。
まじまじとヴァイスを見たあとに感謝の意を込めて撫で回す上野。
大城は柄でもないと思ったのか撫でることはしなかったがお礼は述べている。
「皆様が生きれおられて本当に良かった。」
正確に言えば俺は死んでいたが、茶化すような発言をするわけにはいかないので黙っている。
俺達の方へ近付いてくる小さな影が1つ。
影の正体は宮武の足下にきゅっと抱きつく。
エルフの子供が飛び出してきたようだ。
子供の身長なので見上げる時にどうしても上目遣いになっている。
「ありがとう!勇者のお姉ちゃん、お兄ちゃん!」
大抵の場合、子供が近寄っていくのは清水の方だったので宮武は反応に困っている様子。
表情は緩んでいるので嫌ではなさそうだけど。
「一ノ瀬。前アンタに子供が嫌いって言ったかもしれないけど、あれ嘘だったかもしれない。」
誰でもこんなことをされれば好きになってしまうのも頷ける。
「そうだ!みんな村でご飯食べて行ってよ!私ね、料理得意なんだよ!」
「そうですね。礼として返せるものは少ないけど、宴ならいくらでも出来るので存分に楽しんでください。」
どうやら美味しい食事を用意してもてなしてくれることになったらしい。
俺達が勝手に行ったことなので礼はいらないと思っていたが、食事ならばと心が揺れ動く。
所詮人は食欲の前では抗えないのだ。
「行くわよ。アタシちょうどお腹空いてたところなの。」
我先にと歩き始めた宮武。
普段は食い意地を張るようなキャラではないのだけど。
「僕達も早く移動した方が良いですね。じゃないと、家宝どころか村まで差し出して来そうな勢いですし。」
上野の補足説明で合点がいく。
宮武が他の人にも聞こえる声で話してきたのは彼女なりエルフへの気遣いだったのか。
全員の意見が一致したので、先頭を歩くエルフ達の後を追う。
女性陣は俺達の前を楽しそうに雑談しながら歩いている。
俺も手ぶらで移動できれば楽だったが、完全に回復したが安静にしなければならない上野と大城を井村と分担して肩を貸しながら運んだ。
俺も一度死んでるので軽傷ではないのだが、ここでそれを言っても冷ややかな目で見られるだけなので黙っておく。
「ご飯何が出ると思いますか。僕はカレーが好きなんですけど、出てくると思いますか。」
喋る元気があるのなら自分の力だけで歩いてくれと言いたかったが、俺もそこまで非道になれなかった。
「お前の食事まで介護するつもりはないからな。・・・あと、俺はカレーよりシチュー派だ。」
「ワシもシチューの方が好きだな。ご飯とかに掛けると年甲斐もないおかわりしてしまうよ。」
ご飯の話というのはいつの時代も人気のトークテーマらしく井村が食い付いてきた。
それよりもシチューにご飯を掛けるとは何事だと言ってやりたいが、人の食を否定するのはやめておこう。
人それぞれに食の好みがあって良いじゃないか。
「シチューとご飯を合わせて食べるのは人を選ぶぞ。パンが主流だからな。」
珍しく大城も雑談の中へ入ってくる。
というか、真っ先に否定しやがった。
こっちがあえて言わなかったことを堂々と、あくまでも自分の食文化を貫くスタイルか。
あと、日本では夜にパンをメインに食べる人は少ないから主流ではないと思うぞ。
「パンって後でお腹減らないですか?もっちりとしたナンだったらそれも解決。」
「アンタらカレーかシチューか論争はそこまでよ。」
「宮武さんも混じりますか?」
「違うわよ!着いたからやめなさいって言ってんの。」
無限に続くのではないかと思われた食の話も目的地到着という形で終止符が打たれる。
内容自体はないと言ってもいいほどの会話だったが、話題としては悪くなかったな。
エルフの村は魔道具によって外部から見えないようになっている。
初めて見た時は急に村が現れるので驚いたが、2回目にして慣れが生じてしまった。
「それでは食事の準備をして来ますので、皆様はごゆっくりとしてください。」
エルフ族の大人達は慌ただしく宴の準備を始める。
力作業である机や椅子などの準備もエルフの魔法にかかれば、数秒で終わる。
食事の準備はスキルを使っても時間が必要なので完成を待つばかりだ。
料理班の中には食事の提案をした子も参加しており、俺達の方へ手を振りながらアピールをしている。
包丁を持っていたので母親らしきエルフに怒られてしまっているのも微笑ましい光景だ。
「守れてよかったですね。」
清水が誰に問うでもなく言葉にした。
返事はしなかったが全員同じ気持ちであることは言うまでもない。
これから先はギルドを敵に回して魔王討伐をすることになるかもな。
それが怖いかと言われれば嘘になる。
どうやら俺は敵を作るのが怖くないと細胞レベルで染み付いているようだ。
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