第113話 極限勝負
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「使うしかないねこれは。【神通力】!」
念力よりも威力の増した進化スキル。
これが井村の隠していた策なのか。
宮武は、井村が覚醒者になったのだと思ったが見当違いだった様子。
「戦力強化に繋がったのは事実ね。魔導具とも相性はいいし。」
今は前向きに捉えるしかない。
「相談は終わりでいいか?」
待ったを掛けても止まるはずがないのに、形式上の質問が問いかけられた。
拳はもう目の前にある。
「止まってくれぇーーーー!!!」
あと少しで顔面に拳が当たるところだったがなんとか井村の進化スキルによって、直撃を免れる。
それでも当たっていないはずが、宮武は数メートル後ろまで吹き飛ばされた。
何もスキルを使っていないのか疑わしくなるレベルだが、使った痕跡は一切見られない。
「動けないってのは厄介だな。」
魔導具による多彩な攻撃が危険だと思い集中的に宮武のことを攻撃していたワンズだったが、全ての攻撃を成り立たせているのは井村だということに気付く。
標的を変えると決めた瞬間にはワンズは動き出していた。
「く、【神通力】!」
必死になってスキルを使う井村だが、抵抗する力の方が徐々に強くなり拘束を解かれてしまう。
「未熟だな。自分の非力さを恨め。」
大きく振りかぶった拳から繰り広げられる会心の一撃。
「年寄りに未熟という説教をするのは厳しい若者だね。でも、1つだけアドバイス。君もまだまだ未熟だね。【反転】!」
入れ替わる物は近くに落ちていなかったはずだった。
それでもスキルが成功したのは物と位置を入れ替えたからではない。
「便利よね魔導具って。こんなにか弱いアタシでも強敵に勝てる可能性があるんだから。」
拳を受け止めるたのは魔導具の風船だった。
ワンズの威力のある拳がかなりめり込んでいて、最終的に大きな破裂音を立てて割れる。
「バルーンカウンター。一定の衝撃を吸収したら破裂する仕組みになってるの。衝撃は、自分の攻撃がそのままにね。」
「自分の攻撃を喰らってみるのを悪くないな。」
余裕そうな表情を浮かべているワンズ。
最初の時とは比べ物にならないほどの笑顔を浮かべている。
戦いによって快楽を得るタイプのようだ。
「どこまでも人離れした男ね。」
「楽しくなってきた。遊びも十分だな。そろそろ本気を出させてもらおう。」
今までのが限界では無かったと知らせる。
ダメージをもらったことによる強がりではない。
危機を察知した頃には、宮武は地面に倒れ込んでいた。
回復を使えないようにアイテムバッグを拾いあげ、力一杯に投げ捨てる。
「ア・・ンタねぇ・・・。人の物は・・、勝手に捨てちゃダメでしょ。」
「確実に直撃したはず。それなのに立っているのは数少ない事象だ。」
確実に攻撃を与えたはずの宮武が立ち上がったことに素直に驚いている。
それは本人も同じこと。どうして立ち上がれるのかは理解していない。
気付いた時には体が戦う準備をしていたのだ。
「出し惜しみは無しにする。ここから先はアタシも未知数の領域ね。【悪心】」
見た目からは変化を感じ取ることはでできない。
宮武はスキルの失敗を疑ったが、効果が発動していることは遅れて知ることになる。
先ほどまで素早かったはずのワンズの動きが、一般的な男性と変わらないほどに落ちていることに気付いた。
「どうなっている!?」
この効果には流石に動揺した様子を隠せなくなる。
デバフ系のスキルは今まで何度も使われたことがあるが、そのどれもがここまでの効果を発揮していなかった。
「運だけに身を任せる勝負。その勝負の障害になり得る物は要らないわ。」
「ここで自分の弱点が仇になるとはな。いいだろう、お前のフィールドで戦ってやる。」
身体能力が一時的に衰えたとはいえ、戦闘の技術が無くなった訳ではない。
的確に人間の弱点を狙うワンズの攻撃は、長年の経験から培ったもの。
【悪心】を使ってここまで苦戦するとは思っていなかった宮武に焦りが見える。
「これ以上好き勝手やらせてたらアタシ達の身が持たないわね。そろそろクライマックスにでも移ろうかしら。」
戦況は依然ワンズに分がある状況で進んでいるが、宮武は高らかに勝利宣言をする。
ワンズは笑うしかなかった。
今まで戦いの中でここまで強い意志を持った者にあったことは無かった。
いずれ他の奴らと同じように力の差に絶望し、勝負の途中で気力を失うと思っていた。
「面白い。最後というのであれば、その前に1つだけ質問をして良いだろうか。」
「いいわよ。答えるかは別の問題だけど。」
「お前らはどこの世界の人間だ。」
ワンズの質問に、2人は肝を冷やした。
誰かに日本のことを話すなと言われたわけではないが、言い当てられるとドキリとしてしまう。
数秒だけどうやって答えるか悩んだ。
「どうだと思う?」
「無責任は返答だ。答えると思っていなかったがな。」
質問を終えると戦闘を再開する。
宮武の懐へ入り込む低い体勢からの攻撃。
ガードが余裕で間に合うと思ったが、急激な方向転換によって横腹に強烈なフックが入る。
胃酸が逆流しそうなのをグッと堪えて腕を掴む。
「レディーから腕掴まれるなんて良い経験ね。」
皮肉を投げかけるがレスポンスはない。
ワンズには横から攻撃の準備を整えている井村の姿が見えていたからだ。
激しく抵抗しようにも力が制限されている今、簡単には振り解けない。
「これで終わりにしようか。【神通力】+【迅雷投擲】!」
どこからか取り出したいくつものダガーが一斉に飛び出してワンズを襲う。
命中は免れない。
そう確信した2人だったが、ワンズは咄嗟に掴まれた腕を解くのやめて宮武との位置を入れ替えて盾にする。
こうなれば井村は攻撃を止めるしかなかった。
スキルを解除することによって勢いを失ったダガーが金属音を奏でながら落ちていく。
「惜しかったな。勝ちは俺がいただいていく。」
「勝負が終わる前に勝ち負けを語るなんて馬鹿のすることよ。【運命天論】」
何が起こるか本人でさえ把握できないスキルが発動した。
やはり瞬時は何が起こるか判断ができない。
ワンズはそれでも油断しなかった。
スキルの源になっている宮武へ瞬時に近寄り、腹部へ見惚れるほど綺麗な蹴りを喰らわせる。
こうなれば、効果は回復するため何かに作用する。
いくら回復されようとも攻撃が続く限りワンズの方が勝機があるだろう。
狙いは完璧で後は弱った獲物を狩るのと同じぐらい簡単だと思っていた。
「馬鹿ね。今のアタシにとって最善なのはアンタを倒すこと。回復なんていらないのよ!」
「【反転】!天気は晴れのち刃。頭上の刃物にご注意を。」
宮武に夢中になっている間に井村の攻撃が仕掛ける。
急激に位置が変わり、上から降り注ぐダガー。
何事かと思ったが最初の1本を喰らっただけで、後は全て避けられてしまう。
「良いコンビネーションだが、勝ちには1歩及ばなかっ・・た・・・な。」
糸が切れたようにその場に倒れ込むワンズ。
気絶するように眠っているようだ。
「さっき腕を掴んだところに強力な睡眠薬を仕込んでおいたのよ。まさか、1本だけで傷を付けて体内に入り込むとは思わなかったけど。」
「この人がスキル使えたら勝ち目なかったですね。」
「もしもの話なんていらないわ。勝ったという事実だけあれば良いもの。」
ギリギリで手に入れた勝利の余韻に浸る2人。
疲れ果てたのか、今はまだこの場から動けそうには無かった。
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